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殺人と同じ? ダウン症や流産を防ぐ『着床前スクリーニング』への賛否

  • 2016.7.25
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皆さんは流産の確率を飛躍的に下げる『着床前スクリーニング』という検査をご存じですか?

あまり聞き慣れない方もいらっしゃると思いますが、着床前スクリーニングとは簡単に言うと体外受精の際に行われる検査の一つです。

日本でほぼ唯一着床前スクリーニングを実施している『大谷レディスクリニック』の報告によると、平均年齢40.4歳の女性に行った愛着床前スクリーニングでは、着床率が約2.2倍になったとのこと。また、流産率は通常の約4分の1にまで減少した といいます。

過去に流産経験を持つ人や高齢出産する女性にとっては大変興味深い数字ですよね。

今回は、着床前スクリーニングについてお話しします。

●着床前スクリーニングって何をするの?

日本で現状行われている体外受精の方法と、着床前スクリーニングの方法は少し異なります。

日本で行われている体外受精の方法は、女性から取り出した卵子を男性の精子に受精させていくつかの受精卵(胚)の中から医師が目視で健康状態にあると判断した胚を選んで子宮に戻すというもの。

一方、着床前スクリーニングでは胚の一部を摂取して検査をし、染色体に異常のないものを選んで子宮に戻します。

前者は目視による選別 のため、実際には異常を持つ胚を子宮に戻してしまうことも多いですが、後者ではきちんと染色体検査 をしているため、確実性が高いと言われています。

しかし、日本ではこの着床前スクリーニングは禁止されており、体外受精を行う際は前者の方法が取られます。

●着床前スクリーニングが日本で禁止されているワケ

なぜ日本では着床前スクリーニングが禁止されているのでしょうか。ひと言で言うと、「倫理上の問題があるから」 です。

日本の母子健康の増進を目指す『日本産科婦人科学会』という非常に影響力の大きい学会が、着床前スクリーニングは「命の選別になる恐れがある」という理由で禁止しているため、日本の病院では導入されていません。

着床前スクリーニングはダウン症などの染色体異常や性別の判定ができる精密さがあるため、命の選別につながりかねないという懸念があるのです。

とはいえ、前述した大谷レディスクリニックの研究結果を受け、日本産科婦人科学会は3年間かけて大規模な臨床実験を行うことを2015年に決めています。

結果次第では数年後には日本でも着床前スクリーニング検査を受けられる日が来るかもしれません。

●あなたはどっち? 着床前スクリーニング検査への賛否

●反対派の意見

『人が命の選別をするなんてあり得ない。たとえ受精卵だとしても、それはすでに命の卵みたいなもの。それを選別するということは、殺人をしているのと同じこと だと思います』(41歳女性/独身)

『子どもは親を選べません。逆に親が子どもを選ぶこともできないはずです。自然の摂理に反して選別をすることに強い違和感を覚えます』(32歳女性/2歳男児のママ)

『よく考えて欲しい。たしかに技術としては素晴らしいけど、これは今障害を持って生きている人たちを否定する行為に他なりません。彼らは失敗作なのですか? そんなわけないでしょう。どんな障害を持っていても、生きていく権利が人間にはあるはずです』(45歳女性/7歳女児のママ)

倫理的な側面から反発する人が多い印象を受けました。たしかに着床前スクリーニングを受けるということは、本来生まれてくるはずだった“異常のある受精卵”を選別して排除する ことにつながりかねません。

その行為に他意はなくとも、染色体異常を抱えながら生活している人にとっては自分が否定されているような気持ちになる可能性もあります。

物を整理整頓するかのような感覚で命を選別していいのか、そういう問いかけも反対派の人たちからは聞かれます。

●賛成派の意見

『子どもに健康な状態で無事に生まれてきてほしい 。それはどんな母親でも思うことです。着床前スクリーニングを受けて異常のない受精卵を選ぶことに何の問題があるのか分からない』(38歳女性/妊活3年目)

『着床前スクリーニングを反対している人は、自分が流産するツラさを知らない人たちだと思います。少しでも流産の確率を下げる方法があるならそれにすがる……一度流産を経験した女性は皆そうすると思います』(34歳女性/2歳男児のママ)

『正直私には障害を持つ子どもを育てていく自信がありません。もし障害のある子が生まれたら、子どもにも不幸な思いをさせるかもしれません。だから私はこの検査には賛成です』(27歳女性/独身)

賛成派の意見にはさまざまなものがありますが、「子どもを健康に産むためにはやむを得ない」という人が多く見受けられました。

とくに流産を一度経験してしまうと、二度と出産できない体になってしまうケースもあります。そのため、次に産まれてくる子どものために着床前スクリーニングを受けたいという人もいました。

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いかがでしたか?

いずれ日本でも認可されるかもしれない着床前スクリーニングですが、“命”に絡む問題であるため意見はさまざまなようです。

今後どのような動きになっていくのか、注目しておくようにしたいですね。

●文/パピマミ編集部

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