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「台座」そのものが作品に?! 遠山記念館における台座のインスタレーション。(Makiko Yoshida)

  • 2016.7.13
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Photo: Shizune Shiigi 

【さらに写真を見る】「台座」そのものが作品に?! 遠山記念館における台座のインスタレーション。(Makiko Yoshida)

「台座」とは、なんでしょう? 彫刻を安置させ、よりよく見せるもの、としてしか認識していませんでしたが、それ自体が作品として展示されていたら... 正直、妙な気分になります。今回は、埼玉県川島町の遠山記念館に展示されている彫刻家、竹岡雄二さんによる「台座彫刻」をご紹介。実際に竹岡さんと遠山邸内を歩いてみて、感じたことなどを振り返ってみます。

「ルートヴィッヒ・ヴィトゲンシュタインの台座」(15)。

まず始めに、作家の竹岡雄二さんについて。竹岡さんは1946年に京都で生まれ、72年に渡独、以来デュッセルドルフを拠点に彫刻家として活動されています。その彼が、なぜ彫刻を支える「台座」に興味を持ったのか... そこには彫刻という作品を「主」、その下の台座を「従」としたときに、その主従を逆にしたらどうなるか、という考えがあったと言います。「考え方そのものに違った見方を与えることで、新しいものが生まれる」とは、まさにこのこと。

ウィーンにあるヴィトゲンシュタイン・ハウス(現ブルガリア文化研究所)からインスピレーションを受けた写真の作品は、遠山邸の囲炉裏を切った部屋に置かれているものです。縁のない坊主畳の上に、部屋とは全く連続性のない人工大理石の台座が「闖入(ちんにゅう)」している様子は実に異様としか表現しようがありません。

竹岡雄二 台座から空間へ

開催日時/〜2016年9月4 日(日)

開催時間/10:00~16:30(入館は16:00まで)

開催場所/遠山記念館 埼玉県比企郡川島町白井沼675

Tel./049-297-0007

料金/大人700円 学生500円 中学生以下は無料

http://www.e-kinenkan.com/

「展見」(88)。

「展見(てんみ)」と名付けられたこちらのタイトルは竹岡さんの造語で、「展示されたものを見る」という意味。アメリカを代表するミニマルアーティストのカール・アンドレの床置きの作品にアイディアを得たそうです。彼の作品では正方形のパネルを床に複数枚敷き詰め、その上を観客が歩くことが許されているそうですが、「展見」では、パネルをガラスケースで覆うことでそれ自体が作品化されています。

展示されているのは遠山邸東棟の内玄関。黒光りする床は、石を敷き詰めたように見えますが、実は左官の仕事による人研ぎ。台座という作品が置かれている床もまた台座になり得るのだなぁ、と最も考えさせられた作品でした。

「立っている彫刻 III」(08)。

遠山邸西棟にある12畳の部屋の床の間に屹立する「立っている彫刻 III」。施主遠山元一の母の居室としてデザインされたこちらの部屋は、他と比べて女性的で居心地の良い空間となっています。そこに突如として現れる垂直性を持った金属柱。遠くから見るとなんの変哲もない円柱に見えますが、上から三分の一程度の所に境界線のような区切りがあり、人体でいうところの上半身と下半身を表現しているかのようです。

ヨーロッパを舞台に活躍された竹岡さんにとって、美術館などのホワイトキューブが展示の場となり、遠山邸のような日本家屋に自らの作品をインストールするということは、大きな挑戦だったと言います。およそ80年前に建てられ、実際に人が住み、戦時中は疎開先として、そして終戦4日後には私の父が生まれた場所である、という個人的なエピソードをもってしても遠山邸は確かにリビングスペースです。しかし、今はもう誰も住んでいないこの邸宅は、即物的に展示された台座によって、リビングスペースという概念を超えた「空間」として認識されるのです。

台座について考えたくなったら、こちらの本をご参考に。

埼玉県立近代美術館、遠山記念館で同時開催中の竹岡雄二による国内初の回顧展を記念して「もうひとつの台座考」が7月9日(土)に刊行されました。台座の歴史的な役割と指定文化財・遠山邸における竹岡作品の在り方を論じた遠山公一(慶應義塾大学文学部教授)によるテキストに加え、ゲルハルト・マルクスハウスの学芸員イヴェット・ディーシヴによる、竹岡作品における言葉の役割の考察などが収録されています。

竹岡雄二 もうひとつの台座考

出版社/ワコウ・ワークス・オブ・アート

http://www.wako-art.jp

価格/¥1,620

http://tsubamebook.com

参照元:VOGUE JAPAN

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