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「どうなる? 無職のお父さん~後半~」 おかっぱちゃんの子育て奮闘日記 Vol.32 

  • 2016.7.1
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「東京おかっぱちゃんハウスで、カフェを始める」。そう決めた夫は、それからというものの、お料理のレシピ本を買ってきて、毎日のように料理に励むようになった。決して得意とは言えないことを、自らやり始めた事にわたしは驚きを隠せなかった。

包丁の研ぎ方も、人参の皮の剥き方もおぼつかない手つきだった人が、毎日作業に励む事でうまくなっていく。そして、仕上ったお料理はどれも美味しいではないか。

これならお客さまにお出ししても喜ばれそう。献立のバリエーションも増えていった。料理家の友人にアドバイスをもらいつつ、夫は確実に腕を上げていったのだ。

失礼な話だが、正直、わたしは人はなかなか変われないものだと思っていたし、夫はずっと会社員のまま、好きなことを仕事にできない人だと思っていた。

しかしながら、目の前で夫が変わっていく姿を見ていると、努力次第で人は変われるものなのだなぁ、と深く反省し、わたしはふと、自分のことを振り返った。

「あぁ、そうだ。わたしも師匠がいるわけでもないし、美術大学に通った訳でもない。ただただ絵を描く事が好きだから、仕事にしようと思ったんだ」。

これまでの私は、自己流でどうにかなった。がむしゃらに動き続けた結果、良い方向に進んだ。こうじゃなきゃいけないことなんて、そもそもないんだった。

夫の仕事がこれから先、どうなるかなんて誰にも分からない。不安だって大きい。こどもがいる状況で、30代から未経験の仕事を始めるなんて、世間的に言ったら信じられない事かもしれない。

だけど、やってみないことには結果なんて出ないのだから、ダメもとでなんでもトライしたらいいと思う。努力したのに、うまくいかなかったら仕方ない。また違う道を歩めば良い。

それは学生でなくても、親になったわたしたちにだって言える事。そういう挑戦する気持ちはいくつになっても持っていたいものだ。親になったからって諦める必要はないんだ。夫の夢が叶ったら、家族にとってもそれは喜ばしい事だ。

大人になると、どんどん、どんどん落ち着いてきてしまう。暮らしの安定を求めてしまう。本当はこうしたいのに、こどもがいるからわたしには出来ない。そんなことを思いがち。世間体が気になって、チャンスを逃してしまいがち。

お母さんになっても、お父さんになっても、本当はできることが沢山あるように思う。

わたしたちはその後、カフェを始める上で何度も意見交換をして、

ああでもない、こうでもないと、時に大げんかをしながら少しずつ準備を進めていった。

飲食業を始めるには色々と道具も必要だし、工事も必要。先行投資もある程度かかった。もうここまできたら、夫婦揃って走り抜けるしかない!

夜泣きで寝不足の状態に、息子を寝かしつけてから夜なべで作業をする日々。育児をしながらの準備は想像以上に大変だった。

オープンは2ヶ月後、新緑の季節。息子の誕生日と同じ月に設定した。カフェがオープンするころ、息子は1歳になる。

これも何かの縁なのか、わたしたちは仕事を共にし、育児も協力して行うようになった。息子の誕生がわたしたちの人生を大きく変えた。

息子がくれたお父さんへのプレゼント、それは人生の転機だったのかもしれない。

わたしも、夫もワクワクしていた。夫婦、手を取り合って、新しい道を切り開いていく。わたしは、息子の健やかな成長と共に、夫の仕事の成功を切に願うのだった。

「東京おかっぱちゃんハウス」

練馬区上石神井にある、Boojil主宰の古民家を利用したアトリエ、シェアオフィス、イベントスペース、カフェ、BAR、ショップを併設した文化交流複合施設。広々とした畳が広がり子連れで訪れる人もたくさん。

(Boojil(ブージル))

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