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介護したのはワタシ! “義父の遺産”は離婚時に財産分与してもらえるか

  • 2016.6.28
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【ママからのご相談】

30代女性です。夫と現在、離婚協議中です。3歳の息子の親権や養育費などはスムーズに決まったのですが、財産分与で現在もめています。

というのも、夫が1年前に義父の遺産を受け継いだからです。

義母は早くに亡くなっていて夫は一人っ子なので全て夫が相続します。義父は、晩年は足腰を痛めており、同居というのもあって子育てとともに介護も頑張っていました。

よく義父は「本当の娘だと思っている」と言ってくれていたし、半分とはいかなくても、一部ぐらいもらえる権利はないのでしょうか?

●A. 義父の遺言がない限り、遺産を分けてもらうのは難しいです。

ご相談ありがとうございます。アディーレ法律事務所弁護士の篠田恵里香です。

離婚し、小さなお子さんをひとりで育てていく場合、少しでも経済的な安定を確保したいですね。

しかしながら、遺言等が存在しない以上、義父の遺産を取得することは難しいのが現状です。

●財産分与とは?

財産分与とは、離婚の際に、「夫婦間で築いた財産を原則半分に分けよう」 という制度です。

“夫婦で協力して築いた財産”である以上、名義のいかんに関わらず、預金や不動産も全て2分の1に分けるというのが原則です。

専業主婦であっても、家事という仕事をし、夫婦生活を支えたわけですから、2分の1の割合を主張できるのが基本です。

夫が10年間会社勤めをしてたまった貯金も、たとえ夫名義であっても、これを妻が半分もらえるわけです。

例外として、芸能人や芸術家など、夫婦の一方の特殊な才能により財産が増えたという場合は、割合が修正されることがあります。

過去には、「宝くじの当選金」について、夫婦の一方の運によるところが大きいとして、割合を修正した裁判例があります。

●夫の父の遺産は、対象にならない?

このように、財産分与は、「夫婦の協力があっての財産だからこそ、離婚の際には半分に分けよう」という考え方によるものです。

逆にいえば、結婚前からためていた貯金や、夫婦の一方が純粋に単独で得た財産などは、“夫婦の協力”が観念(認識)できない以上、財産分与の対象とならない とされています。

このように財産分与の対象とならない財産を『特有財産』 と呼んでいます。

今回問題となる「義父の遺産」は、夫が相続によって取得する財産ですから、夫が単独で得る財産と考えられています。

したがって、財産分与の対象とならない以上、夫が取得する相続財産を分けてほしいという主張は通らないことになります。

同様に、夫が両親から単独でもらった土地・建物等の不動産なども財産分与の対象となりません。

●仕事も辞めて、義父の介護に尽くしたのに!

夫に代わって義父の介護に尽くした……という場合、妻としては、「1円ももらえないのはおかしい」と思われるかもしれません。

特に、「有料施設ではなく自宅で介護したため義父の遺産が維持された」という場合、妻としては、「それは私のおかげなのに」と言いたくなる気持ちはよく分かります。

しかし、「妻」は「義父」の法定相続人とはならない以上、原則として相続権がないというのが結論です。

法的には、「共同相続人のうちひとりが故人の財産形成・維持に努めた」場合は『寄与分』 といって、相続の割合を調整する制度が用意されています。

ただし、あくまで相続人間の調整の話なので、相続人とならない妻にはやはり何の分配もされないわけです。

しっくりこないこの事態を解決するには、義父から生前に、「養子縁組で養子にしてもらう」または「遺言で財産の一部をもらえるよう遺してもらう」方法しかありません。

このような方法をとれば妻には遺産の一部が渡されますが、そうでない以上、妻は義父の財産に対し、法的には何の権利もありません 。財産分与として夫に分与を請求することもできません。

「嫁が義両親の介護をする」という一般的な介護実態を考慮すれば、法改正がなされるべき分野かもしれませんね。

●まとめ

生前に相続の話をすることは、なかなかやりづらいことかもしれません。

しかし、故人の介護に尽くした妻が、泣き寝入りせざるを得ない事態を防ぐべく、生前に相続の話をしておくことも大切なことです。

介護に尽くした嫁に財産を残してあげたいと思うのは、義父にとっても本望なのではないかと思いますので、お互い心を開いて、話し合いを試みてはいかがでしょうか。

●ライター/篠田恵里香(アディーレ法律事務所:東京弁護士会所属)

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