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人間不信に陥る可能性も!? “脅し育児”が子どもに悪影響を与えるワケ

  • 2016.6.23
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【ママからのご相談】

こんにちは。20代のママです。先日の七飯町の行方不明事件、ハラハラしていましたが、見つかって本当に良かったです。

あの子のお父さんがしたことは「虐待」だとか「脅し育児」だとか批判されていますが、私も(実際に置き去りにしたことはないけれど)「置いていくからね! バイバイ!」とか言ってしまうことがあります。

それから私は東北在住なんですが、こちらには小さいころからナマハゲの存在があり、みんな日常の中で“脅し”的なものは使っている気がします。悪いことをしたら鬼が来るとか。

子どもを叱るときにちょっとした脅しを使ってしまうことって、そんなにダメなことなんでしょうか?

●A. 「脅し育児」が良くないワケをご説明します。

こんにちは! 批判を恐れず申し上げますが「ナマハゲ」「節分」「泣き相撲」大っ嫌い、「ハロウィン」大好きなライターの月極姫です。

たしかに、日本の古くからの風習の中には、小さい子をあえて脅したり泣かせたりして喜ぶような行事が多いですよね。

かといって諸外国にも虐待など育児の問題は山積みなわけで、そうした風習が諸悪の根源、というつもりはありません。

個人的には、子どもを脅かしたり、泣かせてクスクス笑うような大人は下品で自信がなさそうな感じがするし、子どもに“お化け役”“脅し役”を任せてオーバーに驚いてあげる大人の方が、余裕がありスマートな印象を受けます。

児童心理学者には「脅し育児」 に反対される立場の方が多いですが、その理由としては「脅しで従順になり、表面的に言動が改善されることはあるが、精神面ではショックが残り、後々弊害をもたらすことがあるから」というのが一般的です。

たとえば臨床発達心理士の秦野悦子先生は

『親の権力を振りかざし、ときに脅しや体罰を交えた育児スタイルは、力の強いものが弱い者をねじ伏せてよいという関係を学習してしまいます』

と述べられています。そうやって成長すると、自分が優位に立てるときだけ強い態度に出て、そうでないときは卑屈になってしまう、バランスの悪い大人になってしまうことがあるようです。

もちろん、「怖いから、悪いことはやめておこう」という動機で、一時的に不適切な行動が抑制されることはあります。

しかし、子どもが成長して“親による恐怖政治”が終わったときに、簡単に道を踏み外す可能性があると指摘する学者もいるのです。

困ったことに、人は親にされてきたように自分の子どもにもしてしまう傾向があります。極端な例ではありますが、虐待が世代間で連鎖するというデータも数多く存在するのです。

子育て世代のパパさん、ママさんで「そういえば、自分も子どものころ悪いことをすると脅されてたっけなあ」という人もいるかと思います。

どこかで「脅し育児」を見直さないと、良くない習慣が子孫の代まで続くことになりかねません。

●育児のあるある! 誰もがつい言ってしまう「脅し言葉集」3タイプ

ありがちな脅し言葉をまとめてみました。このような言葉を「一度も言ったことがない」という親御さんの方が少ないのではないでしょうか?

●(1)放置、縁切り、存在否定型

「言うこと聞かないなら置いていくね。じゃーねー」

「出ていけ」

「あなたなんかもう、うちの子じゃない」

「お前は拾われてきた子ども」

突き放すタイプの脅し です。

小さな子どもにしてみれば、誰よりも味方であるはずのパパ・ママが自分を見捨ててしまうというこの上ない悲劇。これを言われると、慌てて言動を正すお子さんも多いかもしれません。

この「言うことを聞かないと愛されない」という図式が心の傷になった場合、人間不信 、対人恐怖 などの形で子どもの内面に悪影響を及ぼす可能性があります。

●(2)押し付け、束縛、支配型

「こんなにあなたのこと思っているのに」

「あなたがパパ・ママの生きがいなんだから、しっかりして」

一見深く子どもを愛しているかのようですが、これも「自分がしっかりしなくちゃ、パパ、ママが幸せじゃなくなってしまう」という一種の脅しです。

根底にあるのは子どもへの依存心 と自分自身の人生の空虚さ です。

そもそも、いい年齢の大人が生身の人間を生きがいにするべきではありません。

“子ども=生きがい”にしてしまうと、子育てが落ち着いた時点であなたの人生は空っぽになってしまいます。

打ち込めるもの、楽しめるものはありますか? 育児と関係なく続いていきそうな友人はいますか? 子育てが落ち着いた後からでも、挑戦してみたいことはありますか?

精神的に自立している親からは、このようなセリフは出てきません。子どもの人生は子ども本人のものであり、それを見返りなくサポートしていくのが親の仕事です 。

子どもを単に「自分を癒し、慰めてくれるための存在」「老後の世話をしてくれる要員」だと思っている毒親ならいざ知らず、本当に子どもの幸せを願うなら、子どもが自立した後の自分の人生が楽しいものになるよう、今からプランニングしていきましょう。

将来は自分の時間を存分に生き、子どもが困ったときだけ助けになってあげる。子どもにすがりつくような人生よりも、よっぽど自由で楽しいと思いませんか?

●(3)楽しい未来が描けない……不幸感覚いっぱいのネガティブ型

「ちゃんと勉強しないと○○みたいになるよ」

「そういうことしていると嫌われちゃうよ」

言われる方が、本当にこれでやる気が出るのかを想像してみましょう。

たしかに、こういう言われ方をされるとドキッとしますが、「よし、がんばるぞ」という意欲が果たして湧いてくるでしょうか?

この類の脅し言葉を使い過ぎると、子どもの人生観を暗くし、努力をつまらないものだと思わせてしまいます 。

「頑張れば○○みたいになれるかもね」

「そこに気を付ければ人気者のモテモテになるかもね」

などと言い方を変えるだけで、親子ともども前向きになれるはずです。

●脅さないで叱る方法ってあるの? NG例とOK例

たとえば、家族連れで混み合うショッピングセンターで、あなたのお子さんが縦横無尽に走り回って遊んでいたとします。

この場合、周囲の迷惑と本人がしっかり理解することを考え、“後から”ではなく“即刻”“その場で”注意すべきです 。さて、ではどのように注意するのがベストなのでしょうか?

【NG例A】

「騒いだりぶつかったりしたら、怒られちゃうでしょう」

これはお子さんに対する脅しであり、またあなたのお子さんによって迷惑をこうむるお相手を“怒る人、怖い人”とみなして脅しに利用している、非常に失礼な叱り方 です。

【NG例B】

「走り回るなら、○○買うのやめようか」

子どもの恐怖心こそ刺激しませんが、「私の言うことを聞かないと大損することになるけど、それでもいいの?」というジワジワ来る脅しですね。

損得勘定がわかってくる年齢になるとついつい使う親御さんも多いようですが、それこそ行動の基準が“金品”や“損得”に偏ってしまいかねません 。

【OK例】

「もし、赤ちゃんにぶつかってケガをさせたら、赤ちゃんはどうなる? おばあちゃんにぶつかって骨が折れて、歩けなくなったらどうする?」

想像させるべきは、“自分の損得”や“自分が親に捨てられる恐怖”ではなく、“ぶつかられる相手の痛み、恐怖、失望 ”です。

筆者は何度かショッピングセンター内の隅っこで親子3人しゃがみ込み、納得するまで延々と言い聞かせたことがありますが、はっきり言ってツラいです。

買い物の時間は無くなり、楽しくなくなり、人目は気になり、汗はダラダラ。

相手の痛みが想像できたらできたで、子どもは自分のしたことが間違っていることに気づき、泣き始めることもあります。

泣きじゃくったままの子どもを無理やり連れ歩くのもまた酷なので、泣き終わるまで待つことになります。とても効率が悪いです。

しかし、幼児期に面倒がらず、この効率の悪い叱り方をみっちりやっておくと、子どもなりに「なぜいけないのか」を理解する ようになり、結果的にその後の育児がかなりラクになることも事実です。

●先輩ママの叱り体験談

最後に筆者の先輩ママから聞いた、ちょっとほっこりするエピソードをご紹介します。

『小6の娘が反抗期真っ盛り。このあいだ口答えがあまりにひどく、思わず、「お前なんか出ていけ!」と叫びそうになった自分がいたから、とっさにこれはマズいと思い、いったん家を飛び出して近所の公園へ。

夜のベンチで深呼吸して、今なら落ち着いて話せそうと思い、家に戻る途中で主人と娘が迎えに来てくれた。娘は私がショックで出て行ったと思ったらしく、泣いていたが、そのあとは家族できちんと話し合いができた。でも、今思えばあれも一種の脅し(笑)?』(40代2児ママ)

たしかに、「ママが出て行ってしまったかも」という衝撃は、娘さんの心を一瞬脅かしたかもしれません。

でも、このママさんは逃げたわけではなく、娘に心無い暴言を吐かないがためにひと呼吸置いたのです。

母は娘を傷つけないように注意を払い、娘はママを傷つけてしまったかも、と心配になった。

こういう、お互いが相手を心から心配してのショック療法は、私は“アリ”だと思うのですが、皆さんはいかがでしょうか?

七飯町の行方不明事件に寄せて、松本人志さんが「どんな叱り方でも、親の方に信念があるか否かが大事」とコメントされていました。

その信念が大人都合のエゴイスティックなものでなければ、叱り方も自然と変わり良い方向に向かうのかもしれません 。

自分の子育てが正しかったかどうかなんて、答えが出るのは何十年後かもしれないですよね。ただ、必ず答えは出ると思うのです。

衝動的な怒りを吐き出す前にひと呼吸おくなんて、できそうでなかなかできないこと。しかし、この積み重ねが親子の間で本当の信頼関係を築いてくれる気がします。

私は今後も、この先輩ママさんに会うたびに「その後娘さんとうまくいってる?」と聞くつもりです。

【参考文献】

・『子どもの気になる性格はお母さん次第でみるみる変わる』秦野悦子・著

●ライター/月極姫(フリーライター)

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