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【大人の没入型文化体験】「かげろひ虚空kokuu」冬の鎌倉・報国寺で「竹取物語」と「川端康成」の幽玄な世界にタイムトリップ

  • 2026.2.14

2025年の師走、12月13日に没入型文化体験「かげろひ」シリーズの第一弾「虚空 kokuu」が開催されました。その舞台は竹林がひときわ美しい鎌倉・報国寺。この土地にまつわる物語に入り込んでいく不思議な体験をします。川端康成にゆかりのある寺院で、「竹取物語」のストーリーにちなんだ海の幸、山の幸のごちそうが懐石コース様式でふるまわれます。そしてクライマックスにはチェロとフルートの調べに合わせた「能声楽」のライブを心ゆくまで。4時間にわたる「没入型文化体験記」をご紹介します。

行燈の灯りに誘われて竹林へ

午後4時、報国寺山門の閂が外されると、門扉がゆっくりと開きます。行燈の灯りに誘われて石畳を歩くと、どこからともなく着物姿の女性が立ち現れて「ようこそ、おいでくださいました。さあ、どうぞこちらへ」と、2000本以上の孟宗竹が天に向かって伸びる「竹の庭」へと案内されます。用意された椅子席に座ると、さわさわと葉がこすれ合う音が聴こえてきました。耳を澄ますとチェロの音がかすかに重なります。そうこうしていると、庭に設えた茶釜から湯気が立ち上り、一服の白湯がふるまわれました。寒空の下での温かな飲み物に心がほどけてゆくようです。

鈴(りん)の音が響くと、物語の世界へ

着物姿の女性は、まるで語りべのようにこの土地にまつわる物語を凛とした声で語り始めます。そして、チリーンと鈴(りん)を鳴らすたびに、時間が遡っていくかのようです。小道を進むと、崖に掘られた洞窟のようなお墓が見えてきました。「やぐら」と呼ばれる横穴式の墓は、足利家時らが祀られています。

一夜限りの懐石コースは竹取物語がモチーフ

今宵の料理を担当したのは、日本料理をベースにフレンチや中国料理の技法を取り入れた独自のスタイルを追求する内海 亮シェフ。「清游」(静岡市清水区)料理長で日本最大級の料理人コンペティション「RED U-35」でSILVEREGGを連続受賞した実力派。「かげろひ 虚空kokuu」のテーマは、「竹取物語」にストーリーにちなんだ食材を自由な発想で展開します。
写真は「帝」峯野牛のローストと海老芋の皿を盛りつけしているところ。

「竹取の翁」
鼈(すっぽん)白髪葱
竹藪の中で翁(年老いた男)がかぐや姫を見つけます。そのシーンを再現するように白髪の翁を見立てた鼈のスープ仕立てを青竹の器で。

「かぐや姫」鼈、菊芋、甘鯛、蕪
世にも美しきかぐや姫をイメージした料理は、帯のようなテキスタイルを敷いて。

「石作皇子」
柚子釜に雲子(鱈白子)を盛り込んで。かぐや姫に求婚する男たちの名をつけた料理が続きます。
「車持皇子」は香箱蟹と湯葉を、「安倍右大臣」は鰆、「石上中納言」は銀杏をそれぞれ料理しました。

「大伴大納言」をモチーフにした伊勢海老と松の実の一皿。

料理に合わせてシャンパーニュやノンアルコールドリンクが用意されます。

川端康成の文机がすぐそこに 鎌倉文士の息遣いにふれる

ほんのりと酔いがまわり、すっかりお腹が満たされたころ、着物姿の女性がやってきました。川端康成が鎌倉に引っ越してきたころ、報国寺のすぐ近くに居を構えていたことを、まるで昨日のことのように語り始めます。川端が愛用していたという文机が用意されていて、いっそう興味が深まってきました。そして、いよいよ「かげろひ 虚空」体験のクライマックスへ。

能声楽の生演奏会で異界へタイムトリップ

本堂に移動して畳の上に座ると、空気がふるえるようなチェロの音色とお能の謡が始まりました。その迫力たるや、心にずしんと響いたかと思えば、異界を彷徨うような不思議な浮遊感に包まれました。遡ること691年前にこの地に開かれた名刹報国寺。その本堂ゆえに、目には見えないものたちと共鳴するようにも感じます。14名のゲストだけのために奏でられる音楽、能声楽の贅沢さといったら、生涯忘れられぬ体験になることでしょう。
「かげろひ 虚空」で花とクリエイティブディレクターを担当したのは田中孝幸さん。ストーリーテラーで案内人を務めたのは俳優の大森亜瑠紗さん。能の「謡」を現代音楽に融合させた能声楽家の青木涼子さん、チェロ奏者の上村文乃さん、フルート奏者の上野由恵さんが、時空を超えた演奏会のキャストでした。

「かげろひ」とは? 立ちあらわれては消えゆく、儚き日本の美意識

夜が更けるとライトアップされた庭は、靄(もや)が立ち籠る。

没入型文化体験「かげろひ」は、2025年1月に企画が立ち上がり、7月15日に京都の両足院で試みた0回「乞雨 amagoi」を経て、第1回「虚空 kokuu」が鎌倉・報国寺で無事に幕を開けました。そもそも、この「かげろひ」とは、日本の建築界の巨匠、故磯崎新氏が「日本の文化と美意識に深く根づく『立ちあらわれても、消えてゆくもの』の美しさと儚さをとらえた言葉。それをテーマに、日本のそこかしこにある文化を掘り起こして、その「場」と「人」と「食」と「演出」を融合させて、少数のゲストとともに「一期一会」の体験を提供します。ゲストが物語に没入できる演出は、「かげろひ」ならでは。五感をフル稼働して、その地の文化、食、自然、アートピースなどを感じとれるとあって、興味を抱く人はたくさんいるでしょう。気になる料金は、鎌倉報国寺で実施された「虚空」は、1人14万4,000円。生涯記憶に残る唯一無二の体験と考えれば、妥当なのかもしれません。
本企画を担当するJTBイノベーション戦略推進チームの日高彬人さんが「40~50代のゲストが多く、みなさまカップルやご夫妻でご参加くださいました。外国人のゲストがいらっしゃるときは、ノンバーバルでも理解いただけるようにして、日本人ゲストには文化的な背景をきちんと伝えていきたいと考えています」と語ります。
報国寺からの帰り道、あの鈴(りん)の音がかすかに耳に残っていました。さて、第2回目はどこで、どんな文化と物語を掘り起こすのか?「次の開催地は準備中です。これからは全国展開していけたらと考えています」(日高さん)
日本のどこかであなたの心をゆさぶり、ふるわせる「かげろひ」に出逢えるかもしれません。

写真/JTB提供 取材・編集/田村幸子

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大人のおしゃれ手帖編集部

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