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恋人に「優しい嘘」を求めるのはどんなとき? 恋愛心理学の最新研究

  • 2026.2.11
恋人に「優しい嘘」を求めるのはどんなとき? 恋愛心理学の最新研究
恋人に「優しい嘘」を求めるのはどんなとき? 恋愛心理学の最新研究 / Credit:川勝康弘

ポーランドのSWPS大学(SWPS University)で行われた研究によって、恋人との関係に満足している人ほど、優しい嘘を欲しがりにくく、逆に満足度が低い人ほど「優しい嘘ください状態」になりやすい傾向が見えてきました。

もし恋人からの優しい嘘が増えてきたのなら、それは「関係の危機」なのかもしれません。

また研究では、その理由について、関係の満足度が低いほど真実が「追い打ち」に見えやすくなり、そんなときには優しい嘘が痛み止めみたいに機能する可能性があると述べられています。

あなたが本当に欲しいのは、胸に刺さる真実でしょうか、それともあなたを気遣う優しい嘘でしょうか?

研究内容の詳細は2026年1月10日に『The Journal of Social Psychology』にて発表されました。

目次

  • 『正直さ』と『やさしさ』を同じ箱につめ込んでしまう私たち
  • 優しい嘘が増えたら「仲良し」じゃなくて「限界サイン」かもしれない

『正直さ』と『やさしさ』を同じ箱につめ込んでしまう私たち

『正直さ』と『やさしさ』を同じ箱につめ込んでしまう私たち
『正直さ』と『やさしさ』を同じ箱につめ込んでしまう私たち / Credit:川勝康弘

「これ、似合ってる?」と聞かれて、答えに困った経験はありませんか?

あるいは、あなた自身が「正直に言って」と言いながら、心の中では“できれば優しく頼む”と祈っていた経験はないでしょうか?

恋愛の会話には、こういうややこしさが平気で混ざります。

とはいえ、正直さは恋人関係の土台でもあります。

嘘が増えれば信頼は削れ、長く付き合うほどダメージも大きくなります。

どんな服を着ても「似合っている」「ステキ」「最高」と肯定的な意見しか聞こえてこない相手に対して、人間は不信を募らせていくこともあります。

多くの研究でも、誠実さは相手選びや関係の満足度に深く関わるとされています。

けれど同時に、人は「正直がいつでも正解」とも思っていません。

相手を傷つけないための遠回りなら、嘘でも許される場面があり、それは「やさしい」と評価されることもあります。

たとえば、相手が緊張でガチガチになりながら発表を終えた恋人に、「今の、正直イマイチだったよ」と本音をぶつけるのが本当にベストかどうか。

多くの人は「今はとりあえず『よく頑張ったね!』でいいんじゃない?」と感じるはずです。

つまり人間は、恋愛になると急に「正しさ」と「やさしさ」を同じ箱に詰め込もうとして、箱ごと落としがちなのです。

そこで登場するのが、今回の研究の主役である“優しい嘘”です。

これは、自分の得のためではなく、相手の気持ちを守るための嘘です。

恋愛に関する研究でも、相手のためにつく“優しい嘘”は、自分を守るためだけの嘘よりもずっと許されやすく、ときには「厳しい本当のこと」よりも道徳的で信頼できるとさえ評価されることがあると報告されています。

たとえば恋人が誕生日やクリスマスの日に気合を込めて着込んでくれた服が壊滅的にダサくても「その服いいね」と言ってあげる──そういった嘘は、本人の評価を守り、関係の雰囲気を明るく保つ働きをします。

一方で、自分のイメージや得のためにつく「自分本位な嘘」は、基本的にはNGに近い扱いを受けます。

同じ「嘘」でも、誰を守るためについたのかで、受け止められ方がまったく変わってしまうのです。

また嘘とは違いますが、正確性を損なう要因として古くから言われているのが、「ポジティブな思い込み」です。

人は少しだけ自分や恋人をよく見積もっているほうが、短期的には幸福感が高まり、ストレスにも強くなりやすいとされています。

恋愛関係でも、「うちのパートナーは他の人よりちょっとイケてる」と信じている人ほど、満足度が高く、関係も長続きしやすいというデータがあります。

優しい嘘は、こうしたポジティブな思い込みを守るクッションのような役割を果たしている可能性があります。

真実をそのまま伝えると、自分や相手のセルフイメージがガクッと下がりそうなとき、ふわっと柔らかい言い方で包み直すことで、「現実」と「自尊心」のあいだの衝突をやわらげてくれるのです。

さらにもう一枚、話を深くするカードがあります。

それが「嫌なことがあっても立ち直る力」です。

立ち直りが得意な人は、つらい出来事があっても気持ちを整えたり、見方を切り替えたりして、ダメージを回復しやすい一方で、立ち直りが苦手な人は、同じ言葉でも刺さり方が強くなりやすい傾向があります。

正直さ、優しい嘘、思い込み、立ち直る力……これらの要素は、どれも絡み合っています。

そこで今回の研究者たちは、交際中の人たちを対象に、「恋人から真実を聞きたい気持ち」と「優しい嘘で包んでほしい気持ち」が、関係の満足度や立ち直りやすさとどう結びつくのかを確かめようとしました。

ここを調べることで、優しい嘘は、関係がうまくいっているからこそ必要な“思いやり”なのか、関係がしんどいときにだけ登場する“応急処置”なのかも見えてくるはずです。

またどんな性質を持つ人が、優しい嘘を好むのかという心理的な傾向もわかってくるでしょう。

優しい嘘が増えたら「仲良し」じゃなくて「限界サイン」かもしれない

優しい嘘が増えたら「仲良し」じゃなくて「限界サイン」かもしれない
優しい嘘が増えたら「仲良し」じゃなくて「限界サイン」かもしれない / Credit:Canva

どんな時に恋人の「優しい嘘」が欲しくなるのか?

答えを得るために研究者たちは恋人がいる672人に、恋人との日常で起こりそうな短いシーンを読んでもらい、「この場面では、恋人に嘘をついてほしい? それとも真実を言ってほしい?」を選ばせました。

研究では「相手を気づかう嘘(優しい嘘)」が出てくるシナリオが3つ、「自分だけ得をする嘘(自分本位な嘘)」が出てくるシナリオが3つ、合計6つの物語が用意され、各場面で「嘘を言ってほしい」か「真実を言ってほしい」かを選んでもらいます。

そしてその後、関係満足度や、立ち直りやすさ、さらに「正直って、関係を傷つけると思う?」といった“真実への見え方”もたずねています。

結果は予想通り、自分本位の嘘よりも、優しい嘘のほうが圧倒的に選ばれやすくなっていました。

たとえば3つの場面の合計で見ると、自分勝手な嘘を言うケースが支持されたのは平均0.48回しかなかったのに、優しい嘘は平均1.07回と倍以上選ばれました。

しかし、面白いのはここからです。

研究者たちは当初、関係がうまくいっている人ほど「関係の安定のために、優しい嘘を歓迎するかもしれない」と予想していました。

「上手くいっている関係に追い風を与えるための優しい嘘」という考え方です。

ところが実際には、関係に満足している人ほど、優しい嘘を選ぶ回数が少なくなる傾向が出ました。

加えて自分勝手な嘘も関係に満足している人ほど「いらない」という判断に寄ることがわかりました。

つまり、関係が良いほど“優しい嘘さえも”必要なくなっていくのです。

これは、「仲良しだから嘘で丸く収める」というより、むしろ逆で、仲が良いからこそ真実を扱える、という読み方ができます。

一方で、満足度が低いほど真実を「関係を傷つけるもの」と感じやすく、優しい嘘の希望とも結びついていました。

またメンタルの「立ち直りやすさ」についても予想が裏切られました。

研究者たちは「立ち直りやすさ」が弱い人――いわゆるメンタルが豆腐な人ほど、厳しい本音より優しい嘘を好むだろうと予想していました。

ところが、「立ち直りやすさ」と「優しい嘘を聞きたい度」のあいだには、はっきりした関係が見つからなかったのです。

立ち直りにくいからといって、全員が一律に“優しい嘘ください”になるわけではない……恋愛はそんなに単純じゃないようです。

そこで研究者たちは、データを追加で分析して、「真実がどれくらい“有害”だと感じられているか」に注目しました。

ここでいう「真実の有害さ」とは、「痛い本音を正直に言うと、恋愛関係が傷ついたり、相手の心をひどく傷つけたりすると思うかどうか」という感覚です。

すると関係満足度が高い人ほど、「真実はそんなに有害ではない」と感じる傾向がありました。

一方で関係満足度が低い人ほど、この「真実は危険」感が強くなり、それと関連して優しい嘘を選びやすくなる――そんな“心のドミノ”が見えてきました。

関係がしんどいとき、真実は刃物に見え、優しい嘘は絆創膏に見えるわけです。

そして最後に、ちょっと怖いおまけがあります。

優しい嘘を「聞きたい」と答えた人ほど、別の質問で「自分も恋人に優しい嘘を言う」方向に寄りやすいつながりも見られました。

もし今度、大切な誰かに「真実」と「優しい嘘」のどちらを言うか迷ったときには、2人の間にある「心のバッテリー残量」みたいなものを気にしてみるといいかもしれません。

元論文

If I cannot bounce back easily, can I handle the truth? Satisfaction in romantic relationships, resilience and preference towards prosocial lies
https://doi.org/10.1080/00224545.2025.2607672

ライター

川勝康弘: ナゾロジー副編集長。 大学で研究生活を送ること10年と少し。 小説家としての活動履歴あり。 専門は生物学ですが、量子力学・社会学・医学・薬学なども担当します。 日々の記事作成は可能な限り、一次資料たる論文を元にするよう心がけています。 夢は最新科学をまとめて小学生用に本にすること。

編集者

ナゾロジー 編集部

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