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韓国・安国(アングク)で人気のティールーム『Tove』へ。『茶酔 (ochayoi) 』後藤景太郎さんの連載コラム、最新回はこちらから。

  • 2026.2.11

大学生の頃、1年ほど韓国・ソウルに留学していた。

帰国してからはあまり行けていなかったのだけど、去年の夏、久々に韓国に旅行に来た。当時の店や街並みはすごい速さで変わっていて、かつて過ごした学生街には、留学時代の面影はほとんど残っていなかった。それでも、ソウルの真ん中を流れる漢江(ハンガン)に架かる橋をタクシーで渡るとき、その情景に胸がきゅっとなるのは、いつ行っても変わらなかった。

今回は、ずっと行きたかった場所があった。それは、『Tove』というティールーム。

出典 andpremium.jp

安国(アングク)というエリアにあるその店は、昼過ぎに行くとほぼ満席で、人気の程が伺える。茶器や内装、お菓子、何をとってもかわいい。そして今回初めてお店に行ってみて何より、お茶がおいしくて驚いた。

変な話、こんなにかわいかったらお茶がおいしくなくても全然いい。私だったら、妥協した茶葉にするかもしれない。なのに、しっかりお茶がおいしい。店主はきっと、本当にお茶が好きなんだろう。

こんなに質が高いお茶なら、きっといろいろ説明したくなるだろう。でも、この店はお茶についてあまり多くを語らない。品種と産地、風味についての簡単な説明書きがあるだけ。私だったら得意げに講釈を垂れてしまうかもしれない。

そんな『Tove』の在り方に、韓国のさまざまなカルチャーに感じる軽やかさの一端を見た気がした。

出典 andpremium.jp

感銘で心がいっぱいになるのをなんとか咀嚼して、自分の中に仕舞いこむ。名物のレモンゼリーで口がさっぱりすると、何だか前向きな気持ちになってきて、せっかくなので自分たちが作っている中国茶のZINEを渡すことにした。唐突な感じもするので、手紙を書いて添える。「ここは憧れの場所で……今日も感銘を受けて……自分も日本でお茶をやっていて……」と。ハングルを手書きなんていつぶりだろう。

会計したあとに、「선물(贈り物)」と言ってZINEと手紙の包みを渡した。カムサハムニダ! と気持ちよく受け取ってもらえて安心した。

出典 andpremium.jp
出典 andpremium.jp

次の日、『Tove』の新店舗『Arcade Tove』へ向かった。

こちらは日本の純喫茶のようなしつらえで、『Tove』とはまた違った雰囲気のある場所だった。日本人の店員さんがいて、日本語で注文する。すると、店員さんが言った。

「もしかして昨日、プレゼントをくれた方ですか?」

思わず声が出る。もう情報共有されている。するとすぐあと、後ろから同い年くらいの女性が出てきて、流暢な日本語で言った。

「こんにちは、私が『Tove』の社長です」

なんと……。社長まで到達してしまった。その方はセヒさんといって、私たちはお互いに挨拶すると、どんなお茶が好きか、日本と韓国の若者がどんなふうにお茶を飲んでいるかなどなど、しばらく立ち話をした。

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最後に、セヒさんは「今年、一緒にお茶のイベントをやりましょう」と誘ってくれた。セヒさんのお茶しましょうは社交辞令ではなくて、そこからやり取りを重ねてその年の11月、本当にまた韓国に行って『Arcade Tove』で茶会をやった。

セヒさんありがとう。また今年もお茶しましょ。

edit : Sayuri Otobe

〈茶酔(ochayoi)〉 後藤景太郎

出典 andpremium.jp

ごとう・けいたろう/熱茶を飲み続けてリラックスしながら覚醒する現象「お茶酔い」を軸に、ZINEやPodcast、茶会イベントなどの活動をしている。最新刊は『茶酔叢書 巻山』(機微社)。

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