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「子どもの協力の仕方」は文化が形作る

  • 2026.2.10
子どもたちはどのように「協力」を学ぶのか / Credit:Canva

人間社会で生きていくうえで、他者との協力は欠かせません。

私たちは日常的に、分け合い、助け合い、ときには相手の失敗を許しながら暮らしています。

では、こうした「協力の仕方」は、どのように身につくのでしょうか。

生まれつき決まっているのでしょうか。それとも育った社会によって形づくられるのでしょうか。

この問いに正面から取り組んだのが、アメリカのボストンカレッジ(Boston College)の研究チームです。

研究者らは、北米、南米、アフリカにまたがる五つの社会で子どもたちを調査し、協力に関わる行動が成長とともにどのように変化するのかを詳しく調べました。

この研究の詳細は、2026年2月6日付の『Science Advances』に掲載されています。

目次

  • 子どもが「協力行動」を学んでいく過程を調査
  • 協力の形は社会ごとに「調整」されていく

子どもが「協力行動」を学んでいく過程を調査

これまで、子どもの協力行動に関する研究の多くは、限られた地域や社会を対象に行われてきました。

そのため、「成長すると協力的になる」「大きくなるほど公平さが身につく」といった傾向が語られることはあっても、そうした協力の発達パターンが、世界中の子どもたちに共通して当てはまるのかどうかは、十分に検証されていませんでした。

そこで研究チームは、「協力」を一つの性格や道徳心としてではなく、いくつかの要素に分けて捉えることにしました。

本研究で注目されたのは、①自分が得をしていても不公平な分配を嫌がる「公平さ」、②相手が自分を信じて損をしたときにそれに報いる「信頼に応える行動」、③相手の失敗に対して罰ではなく関係修復を選ぶ「許し」、④得をできる状況でもルールを守る「正直さ」の四つです。

調査対象となったのは、アメリカ、カナダ、ペルー、ウガンダ、そしてエクアドルの先住民シュアール社会に暮らす、5歳から13歳までの子ども413人でした。

研究者らは、子どもでも理解できる簡単な実験課題を用意し、キャンディーなどの具体的な報酬を使って、実際にどのような選択をするのかを観察しました。

例えば公平さの課題では、「自分4個・相手1個」といった不公平な分け方を受け入れるか、それとも不公平な分け方は拒否するかを選ばせました。

信頼に応える行動では、相手が自分を信じて損をしたときに、その見返りとしてどのくらい分け前を返すかを見ました。

許しでは、相手がうっかり自分に損をさせてしまった場面を設定し、そのあとで相手にどれだけ分け前を戻すかを測定。

正直さでは、子どもだけが実際の個数を知っている状況で、余分な分をどれだけ返すかを調べました。

さらに重要なのは、行動だけでなく、「その場面で何をするのが正しいと思うか」という規範意識についても、同年代の子どもや地域の大人に調査を行った点です。

これにより、子どもの行動が、その社会で共有されている価値観とどのように関係しているのかを検討できるようになりました。

その結果、幼い子どもたちはどの社会でも比較的似た行動を示す一方で、成長とともに行動が社会ごとに分かれていくことが明らかになりました。

では、その違いは具体的にどのような形で現れたのでしょうか。より詳しい結果を、次で見ていきましょう。

協力の形は社会ごとに「調整」されていく

研究で最も印象的だったのは、幼少期には文化差が小さいという点です。

幼い子どもたちは、どの社会でも、自分の取り分を優先する選択をしがちで、協力行動に大きな違いは見られませんでした。

しかし、小学校中学年から高学年くらいの年齢(おおよそ8〜13歳)になると状況が変わります。

子どもたちの行動は、次第にその社会で大人が「正しい」と考えるやり方に近づいていきました。

たとえば、公平さや信頼に応える行動では、多くの社会で年齢とともに大人の規範とのずれが小さくなっていきます。

そして、許しに関しては、五つの社会すべてで共通点が見られました。

実験では、相手がうっかり間違いを犯した場面を設定しましたが、そのときに相手をきびしく罰するのではなく、多くの分け前を返して関係を修復しようとする行動が、どの社会でもいちばん多く見られました。

大人や子どもの判断でも、こうした「許す」対応が支持されており、許しが人間社会において比較的普遍的な協力の要素である可能性が示されています。

正直さについては少し異なる傾向が見られました。

この研究では、多くの子どもが「どうするのが正しいか」は理解しているものの、そのとおりに行動できない場面も残っており、正直にふるまうことが年齢が上がっても簡単ではないことがうかがわれました。

得をするチャンスが目の前にあるとき、「正しい」と分かっていても実行するのは難しい、という現実が浮かび上がります。

研究者らは、これら四つの行動の組み合わせから、子どもたちが三つの異なる協力戦略を用いていることも明らかにしています。

すなわち、個人の利益を最大化する戦略相手が特定されない状況でも広く協力する戦略、そして相手や状況に応じて協力を使い分ける戦略です。

どの戦略が主流になるかは、年齢だけでなく社会の構造とも密接に関係していました。

たとえばエクアドルのシュアール社会では、資源を無駄にせず最大限に活用する行動が目立ちました。

一見すると不公平に見える選択でも、それは「平等を軽視している」のではなく、資源が限られた環境で合理的に振る舞うという、その社会の規範と一致しています。

研究者らは、こうした行動もまた、その文化に根ざした協力の一形態だと解釈しています。

もっとも、この研究には限界もあります。

調査は一時点で行われたもので、同じ子どもを長期的に追跡したわけではありません。

また、対象となった五つの社会も、人類全体の多様性を網羅しているわけではありません。

今後、別の社会やより幅広い年齢層でも同様の調査を行うことで、協力行動の発達パターンがどこまで共通し、どこから違ってくるのかが、さらに明らかになっていくでしょう。

子どもたちにとっての「協力」は、「すべてが同じもの」ではありません。

子どもたちは成長の過程で、自分が生きる社会にとって意味のある協力の形を学び、調整していくのです。

この研究は、その過程が文化によって丁寧に形づくられていることを、実証的に示したものと言えるでしょう。

参考文献

Around the world, children’s cooperative behaviors and norms converge toward community-specific norms in middle childhood, Boston College researchers report
https://www.eurekalert.org/news-releases/1115708

Study of 400 children in five societies finds culture shapes how kids cooperate
https://phys.org/news/2026-02-children-societies-culture-kids-cooperate.html

元論文

The emergence of cooperative behaviors, norms, and strategies across five diverse societies
https://doi.org/10.1126/sciadv.adw9995

ライター

矢黒尚人: ロボットやドローンといった未来技術に強い関心あり。材料工学の観点から新しい可能性を探ることが好きです。趣味は筋トレで、日々のトレーニングを通じて心身のバランスを整えています。

編集者

ナゾロジー 編集部

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