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料理のジャンルを超えて、「福井前」を標榜する料理人から目が離せない[門上武司さん今月のおすすめ]

  • 2026.2.8
撮影=福森クニヒロ

門上武司さん、秋山都さん、山路美佐さん、森脇慶子さん他、食通のジャーナリストや編集者が毎月ひとつのテーマから着想した3軒をまとめてご紹介する小誌連載「ガストロノミーの杜 極私的店案内」。

今回はフードコラムニストの門上武司さんが、福井の3店をご紹介します。

地の食材のよさを踏まえて、さらなる味の高みを目指す

北陸新幹線が金沢から敦賀まで延伸したのが2024年春。食の世界ではそれまで、日本海側の新潟、富山、石川が元気でしたが、そこに福井が加わりました。北陸では11月解禁の蟹の美味が有名ですが、ここ数年で出会った福井県の料理人たちは蟹に限らず、地の食材の生かし方をさまざまな調理法で模索しています。

ひとり目は「鮨処 海月」の主人、郷北斗(ごうほくと)さん。福井で生まれ、大阪の寿司店で修業後、故郷で2006年に開業、18年に福井駅前に移転しました。「食材は米も含め、福井産を9割ほど使っています。日本各地からお客様が訪れるので、福井ならではの食材の味を知ってもらいたい」と福井愛を語ります。

越前の海女からその日獲れた雲丹などの魚介を直接店に届けてもらい、地元の漁師や料理人と絶えず交流を重ねて、「江戸前」ならぬ「福井前」の寿司を確立しようと日々寿司を握ります。「福井の食のレベルが上がるのが楽しみ」と話します。

撮影=福森クニヒロ

福井駅から少し離れた郊外で数年前にオープンした「皇龍」の主人・冨士大介さんは、京都の四川料理の名店「大鵬」で仕事を重ね、福井で独立。福井の文化を表現するのに「越山若水」(越前には山、若狭には海)という言葉がありますが、冨士さんは"越山中華"を目指し、福井県のジビエを使った「ジビエの会」という名の勉強会を開催する、熱意のある料理人です。

彼は福井の中国料理にいま確実に影響を与えていて、「中国料理で福井の食材をどう使いこなすことができるか、うちの料理で実感してほしい」と力強く語ります。

歴史ある料亭を改装し、25年に暖簾を掲げた割烹「御食國 温」。主人の友本尚兵さんは、京都「菊乃井」で修業を重ねた後、地元の福井で開店。確かな技術に裏打ちされた包丁のキレ、魚介の火入れの凄さは開店直後とは思えない安定感。締めの福井県産米「いちほまれ」の甘みを湛えた味わいには頰が緩みました。

勢いのある料理人が増えてきた福井。当地ならではの料理をしばらく追いかけてみたくなりました。

撮影=福森クニヒロ

「鮨処 海月くらげ」(福井・福井城址大名町)

地元・南越前産の米の寿司飯に合わせたネタが絶妙

福井の中央部、南越前のスジかつお(上写真・下)にはふくよかさがあり、あおりいか(上写真・上)はねっとりとした食感があって嚙むごとに甘みが増していきます。三国のレンコ鯛(上写真・中)はきめの細かさと香りが特徴です。これらのネタは、南越前産の米を使った寿司飯との相性を考えて仕立ててあり、さすが。一貫一貫から「福井前」の意味が伝わります。

DATA
コース16,500円~。
営業時間/17時~23時(最終入店)
定休日/日曜、祝日、不定休
tel.0776-22-7776
Google mapで確認
福井県福井市順化1-10-2

鮨処 海月

撮影=福森クニヒロ

「皇龍(こうりゅう)」(福井・福大前西福井)

辛さの本質を踏まえて、福井ならではの四川料理を出す

「よだれ鶏」「麻婆豆腐」といった四川料理の代表的な料理には、「麻」「辣」2種の辛みの存在が非常に大事です。この店では、その役割が何なのかをお客様にきちんと伝えつつ、四川料理の本流を外さない料理を味わうことができます。福井県産の「ふくいポーク」を使った「雲白肉(ウンパイロー)」(写真/1,430円/要予約)は、店主の冨士さんが標榜する"越山中華"を表す一品です。

DATA
営業時間/11時30分~14時30分、17時~21時(ともにL.O.)
定休日/月曜、不定休
tel.0776-58-3466
Google mapで確認
福井県福井市飯塚町29-101

皇龍

撮影=福森クニヒロ

「御食國 温(みけつくにたずね)」(福井・福井城址大名町)

御食国・若狭の海の幸を存分に生かして日本料理のコースに

「御食国」とは「古代から平安時代まで、皇室や朝廷に海水産物などを御食(みけ)として献上したとされる国(若狭、志摩、淡路)」のこと。「若狭ふぐの薄造り」(写真)では店主・友本さんの包丁技が光り、見事な日本料理の一皿となっています。締めの白ごはんは福井産の「いちほまれ」が使われていますが、コーヒー豆を手作業で選別するように米粒を揃えたごはんは感動的です。

DATA
コース17,600円。
営業時間/18時~(カウンターのみ18時30分一斉スタート)
定休日/日・月曜
tel.0776-87-0633
Google mapで確認
福井県福井市照手1-16-16

御食國 温

教えてくださったのは……

門上武司さん(フードコラムニスト)
かどかみたけし●フードコラムニスト。食にまつわる執筆、編集の業務を中心に、プロデューサーとして幅広く活動。「一般社団法人 全日本・食学会」副理事長。「食の都・大阪」推進会議メンバー。料理雑誌『あまから手帖』編集顧問。最新刊は『別冊あまから手帖 食べる仕事 門上武司』(クリエテ関西)。

文=門上武司 撮影=福森クニヒロ 編集=平田剛三(婦人画報編集部)

『婦人画報』2026年3月号より

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