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離婚か、それとも我慢か…いや「卒婚」の道もある!2択に疲れて《第3の道》を選択した夫婦2組の実話

  • 2026.2.8
「卒婚」が第3の選択肢に?
「卒婚」が第3の選択肢に?

「卒婚(そつこん)」という言葉を目にして、「その言葉、使ってる人いる?」「結局、熟年離婚のソフトな言い換えじゃない?」と感じる人もいるかもしれません。一方で、午前中の美容院やスポーツジムなど、熟年女性が集う場で耳を澄ませていると、笑いながら「うちは卒婚だからさあ」と明るいトークが聞こえてくるのも事実です。私の主宰する夫婦仲相談所でも、ここ数年、50代以降の妻からの「夫との距離の置き方」相談が微増しています。

「卒婚」とは、離婚と違い、戸籍上の夫婦関係を解消せず、夫婦の干渉を減らしてそれぞれの生活を尊重するスタイルを指します。同居のまま距離を取るケースもあれば、「週末別行動」「完全別居」など形はさまざま。法律上は夫婦の権利義務があるので、遺族年金などは保証されます。

「家庭内別居」「仮面夫婦」と似ていますが、夫婦二人で合意し、前向きに晩年を過ごそうとする点が決定的に異なります。また、感情が冷え切ったまま、無言の同居に徹する「オワ婚」とは別物です。

卒婚が選択肢として残っている背景には、人生後半の現実があります。

子どもが独立し、親の介護の見通しをつけながら、夫婦二人で一つ屋根の下に長時間過ごす生活。息苦しく感じるか、「やっと二人で楽しく過ごせる」と感じるか――。女性の就労や資産形成も進み、精神的にも経済的にも「夫婦はこうあるべき」という古いパッケージから降りやすくなった面があると感じます。

「離婚は損だ。踏み切る壁が高い。でも、これまでの夫婦の形には戻れない」。そんな“中間解”が、卒婚です。

卒婚と熟年離婚、どっちが得か

ここで、お金の観点を整理しておきましょう。

熟年離婚の場合、財産分与や年金分割など、制度上の清算が必要です。婚姻期間が長いほど対象となる財産が増え、退職金や不動産の扱いがドロドロの論点になることもあります。年金分割の対象は、主に厚生年金・共済年金です。一方の収入が低い夫婦ほど、離婚後の家計費がシビアになるという現実もあります。

対して卒婚は、戸籍上の夫婦関係を残すため、相続や生活費の考え方、住まいの維持などで「急激な分断が起きにくい」面があります。今の家に住むことができるし、二人で暮らすと光熱費も食費もお得。老後のセーフティーネットを残したまま距離を調整できる点は、卒婚の実用的なメリットでしょう。ただし、制度上は夫婦なので、ルールを曖昧にしたまま暮らすと「結局どちらがどこまで負担するのか」ともめやすいです。

卒婚は、「相手のことが嫌」という気持ちだけを優先せず、経済面でも“話し合い設計型”の関係だと考えておくと失敗しにくいでしょう。実際の相談例を2つご紹介します。

事例1:「距離を置いて今の関係を守る」道を選んだ妻

咲良さん(55歳、仮名)は結婚25年。夫は早期退職し、在宅で経理のバイトと投資をしています。子どもが大学進学で家を離れ、夫婦二人の時間が急に増えました。家事のやり方に今さら不満を言ってくる夫にうんざりしているといいます。

「『洗濯物の収納はこうした方が合理的だろ』『もっとスムーズに水回りの掃除できるだろ』など、長年私が担ってきた家事に、今さらガチャガチャ言ってきて不愉快です」。その上、定年仲間をよく家に呼ぶので、お茶だのビールだのを咲良さんが用意するはめに。

50代のうちに、自分の学び直しと、写真撮影をする旅行を楽しみたいと考えている咲良さん。それに専念する余裕がありません。同じ空間で過ごすほど、小さな不満が積もっていきました。

「嫌いになったわけじゃない。でも毎日一緒だと、私が私でいられない」と夫に伝えました。最初、夫は動揺したものの「嫌いになってはいない」という咲良さんの言葉で、「嫌われる前に、君の提案を聞く」と同意しました。

二人は、家計と衛生管理の基本は今のまま、食事は各自。平日はそれぞれの拠点で生活し、週1回は“夫婦メシ”をするルールを設定。そうして咲良さんは、晴れて写真のスクールに入学しました。

離婚ではなく卒婚を選んだ理由は「互いへの愛情が消えていないこと」が一番。ライフスタイルは、これくらい振り切らないと変わらないと思ったからだそうです。このケースが示すのは、卒婚が「愛の終わり」ではなく「夫婦関係のバージョンアップ」になり得るということです。

事例2:「役割夫婦から、ゆるい伴走者へ」変容した妻

直美さん(54歳、仮名)の夫は、岩手県盛岡市で単身赴任をしていました。子どもが独立したとき、直美さんはパートから正社員に転じ、生活の中心が「家庭」から「仕事と友人関係」へと移っていました。

ところが、夫が帰任して同居が再開した途端、「これからは二人の時間を大事にしような」と距離を詰めてきます。直美さんは、悪い気はしない一方で、長年一人で回してきた生活リズムを乱されたくないと感じ、「私はあなたの世話係に戻りたくない。仕事と友人を一番に考えたい」という本音をさらけだしました。もちろん口論になり、数カ月は夫ともめたといいます。

諦めずに話し合った末、二人が考え、合意したのは“ゆるい伴走”の形でした。

・生活費は一定額を共同口座へ・家事は「できる方がやる」ではなく「担当制」・平日の夜は基本「別行動」・食事は余分に作ったら二人で食べる・体調が悪いときは、助け合う

直美さんは「一緒に住んでも、昔みたいな愛あふれる時代に戻るのは難しい。でも、敵になる必要もない」と言います。彼女は卒婚という言葉は知りませんでしたが、卒婚の定義に当てはまると思いませんか。

私が考える卒婚は、「役割としての夫婦」を卒業し、「生活のパートナー」としてリラックスできる関係を再定義する“荒療治”のようなものだと思います。重要なのは「自然にそうなるもの」ではなく、合意とルールで成立する契約的な側面が強いという点です。生活費の分担、住まい、緊急時の連絡、親族行事の扱い、そして特に異性関係の線引き。ここを曖昧にすると、卒婚は夫婦の破綻に変質しやすいです。ルールを言語化できれば、夫婦は驚くほど安定します。

卒婚が気になったら、まずは“卒婚したい理由”を夫婦それぞれが語れるように整理してみてください。「自由が欲しい」だけでは交渉になりません。

・一人時間を確保したい・仕事、学び、趣味を続けたい・老後の病院や介護など、お金の不安は共有したい・自分の交友関係を優先する日を持ちたい など

というように具体的に落とし込むと、相手も理解しやすくなります。

夫婦は白黒で決めなくていい。離婚か、我慢かの2択に疲れた大人のための“第3の道”として、卒婚はこれからも静かに残っていくと感じています。

「恋人・夫婦仲相談所」所長 三松真由美

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