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【人に教えたくなる酒】実に"人相のいい"銘酒「香住鶴」

  • 2026.2.7

2026年日本酒dancyu「出会えてよかった!心ふるえる酒」特集では、dancyuを長年支えてくれている酒のプロや愛飲家の皆様に、個人的な推し酒をジャンルレスに聞いてみました。いずれも「ぜひ飲んでみて!」と推薦者が熱く語ってしまうチャーミングな酒ばかり。今回は、堀越典子さん(フリーライター)の偏愛酒、「香住鶴」をご紹介します。

【人に教えたくなる酒】実に"人相のいい"銘酒「香住鶴」

■長年の推し酒です!

「無人島に持っていきたい一本は?」
「自分にとっての原点のお酒とは?」
いろいろな言い回しで“推しの酒”を聞かれることがあるが、答えは決まっている。兵庫・但馬の「香住鶴」だ。

出会いは20年前に遡る。学生時代にキツい悪酔いを経験して以来、日本酒には距離を置いていた自分が、ひょんな成り行きで地酒の取材にかかわることに。リサーチで回った酒屋さんの一軒で薦められ、口にしたのが「香住鶴 生酛純米」だった。

第一印象は「生酛って、こんなにきれいなお酒なの!?」という驚き。とっつきやすいというのとは違う。兵庫の酒らしい、ずんと重めの押し味と、曇り空のような複雑味。けれど、喉を過ぎると雲が切れて日が差すように、きらりと潔い後口に変わる。日本酒でいう酸のキレとは、このことかと覚醒した。店先で「一緒に」と薦められた缶詰の牛肉の大和煮と、さらにもう一口。古風で無口な親父肌の風合いが、孫の話に相好を崩すお爺ちゃんの表情に変わった!当時はその言葉すらなかった、ペアリング初体験の衝撃である。

思わず買って帰った四合瓶は、“ずん、きらり”のループでたちまち空に。
お酒のおいしさは、飲んで減るスピードに比例する。そんな原理原則を体に教えてくれた一本でもあったと思う。

初めて酒蔵を訪ねたのは2012年冬。前年から全量生酛山廃蔵となっていた「香住鶴」の酒造りでは、普通酒も大吟醸と同じ手酛(てもと)と山卸しの手間をかける生酛と知り、驚いた。その普通酒が実に商品の7割(当時)と聞いて、二度びっくり。「地元の方が毎日飲む晩酌酒こそ、手は抜かない。抜けない」と言う。なんてカッコいいのだ。もう一生ついていきます!

一点残念なのは、西日本ではメジャーな“但馬の銘酒”だというのに、東京では不思議なほど知られていないこと。年季の入った日本酒通に「カスミツル?初耳です」などと言われること再々。そもそも買える店、飲める店が少ない。なんて不条理なと思いつつ、そんなところがまたいいのよ~♥と、ますます好きになってしまうのだ。

香住鶴
香住鶴

文:堀越典子 撮影:大志摩 徹

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