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ビールより染みる!“踏切に眠る幽霊”に“見える郵便配達員”がかけた言葉に「救われた」「幸せに生きられる未来を」のコメント続々【作者に聞く】

  • 2026.2.7
楽しそうに過ごしていた彼は今、踏切の近くで「眠って」いる…。 送達ねこ(@jinjanosandou)
楽しそうに過ごしていた彼は今、踏切の近くで「眠って」いる…。 送達ねこ(@jinjanosandou)

その町には、幽霊が出る踏切があるという。受験に失敗し、電車に飛び込んだ高校生の幽霊だ。恐ろしい姿で現れるわけではない。眠るように、ただ静かに横たわっている。見えない人のほうが多いが、幽霊の存在は町の共通認識になっていた。

その踏切が配達エリアに含まれる郵便配達員・水谷くんは、“見える側”の人間である。踏切待ちのたび、否応なく視界に入ってしまう幽霊は、何をするでもなく、そこに在り続けていた。その佇まいに、読者からも「怖さより静けさが印象に残った」という声が寄せられている。

踏んだり蹴ったりの一日は誕生日だった

その踏切には幽霊が眠るという 送達ねこ(@jinjanosandou)
その踏切には幽霊が眠るという 送達ねこ(@jinjanosandou)
幽霊は何をするでもなく、そこに眠っていた 送達ねこ(@jinjanosandou)
幽霊は何をするでもなく、そこに眠っていた 送達ねこ(@jinjanosandou)
踏切に眠る_P003 送達ねこ(@jinjanosandou)
踏切に眠る_P003 送達ねこ(@jinjanosandou)

水谷くんの配達エリアは、怪異だけでなく厄介ごとも多い。クレーム客に長時間拘束され、ようやく局へ戻ると、新人の入力漏れによる未処理の仕事が残されていた。踏んだり蹴ったりとは、このことだ。結局、自分が引き取って処理を終えた帰り道、ふと気づく。「今日俺、誕生日じゃん」。コンビニで自分へのご褒美に“ちょっといいビール”を買い、夜道を歩く。向かう先には、あの踏切がある。

読者の胸に、ビールより先に沁みる一言

踏切で幽霊と対峙した水谷くんは、ひと言、またひと言と語りかける。「お前知らないで 行ったろ。飲もうぜ」——。そのセリフは、饒舌でも説教でもない。こぼれ落ちるような言葉が、仕事に疲弊した心の奥へ、じわじわと染み込んでくる。読者から「ビールより先に、言葉が沁みた」と感想が集まったのも頷ける場面だ。

配達員は“会社員の顔”がなかなか脱げない

作者は現役郵便局員の送達ねこさん(@jinjanosandou)。彼によると、作中の描写は彼の現実と地続きで、自身も仕事終わりに道や店で不意に会釈されることがあるという。ノーガードな私生活の時間に、突然思い出す「会社員の顔」。お行儀は悪くなかったか、とっさに自分を振り返る緊張感は、不特定多数と接する仕事の宿命なのだとか。

踏ん張った者だけが知る“ささやか”な幸せ

水谷くんは、受験や就活といった人生の分岐点で挫折を重ね、今の仕事に就いた人物だ。理想は叶わなかった。それでも生きていく。ふがいなさや不本意さを抱えながら働く理由に、明確な正解はない。だからこそ、彼は人生ゲームを途中で降りた幽霊の気持ちがわかるのだ。

一方で、この世でしか得られない「ささやかな喜び」を、彼は幽霊が知らないまま去ったのではないか、とも感じている。苦労の先にある一杯のビール、その瞬間を分かち合おうとする行為に、大人としての責任と祈りが滲む。「人生に、とどまる意味はあったのか?」。その問いに完全な答案はない。それでも考え続ける姿勢が、この物語の芯なのだ。

「郵便屋が集めた奇談」は、同僚配達員たちの体験談をもとにした不思議な物語を描くシリーズだ。日本のどこかで、ひっそり起こる怪異。その静けさに耳を澄ませると、背筋のゾクッと感と同時に、なぜか心が温まる。

取材協力:送達ねこ(@jinjanosandou)

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