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「首長恐竜の赤ちゃん」はジュラ紀のファストフードだった

  • 2026.2.6
Credit:Generated by OpenAI’s DALL·E,ナゾロジー編集部

巨大な体と長い首で知られる首長恐竜。

成体になれば地上最大級の存在だった彼らですが、実はその「赤ちゃん時代」は、肉食恐竜にとって格好の獲物だった可能性が高いことが分かってきました。

後期ジュラ紀の生態系を詳細に再現した英ユニヴァーシティ・カレッジ・ロンドン(UCL)の最新研究によると、幼い首長恐竜は、捕食者を支える“ファストフード”的な存在だったというのです。

研究の詳細は2026年1月の科学雑誌『New Mexico Museum of Natural History and Science Bulletin』に掲載されています。

目次

  • 巨大恐竜の「弱すぎる幼少期」
  • 化石が語る「食物網」の全体像

巨大恐竜の「弱すぎる幼少期」

研究の対象となったのは、ディプロドクスやブラキオサウルスに代表される竜脚類と呼ばれる草食恐竜です。

成体はシロナガスクジラよりも体長が長く、歩けば地面が揺れたと考えられています。

その圧倒的な体格は、捕食者にとって容易に手出しできない防御手段だったでしょう。

しかし問題は、その大きさに到達するまでの過程です。

竜脚類の卵は直径約30センチ程度とされ、孵化した直後の個体は非常に小さく、完全に無防備でした。

しかも研究者によれば、体の巨大さゆえに親が卵や幼体を保護することは難しく、現代のウミガメと同様、親の世話を受けずに成長していた可能性が高いといいます。

その結果、後期ジュラ紀の環境には「守られていない首長恐竜の赤ちゃん」が大量に存在していたことになります。

トゲのあるステゴサウルスや全身装甲の恐竜と戦うより、抵抗力の低い幼体を捕まえる方が、捕食者にとってははるかに効率的だったはずです。

化石が語る「食物網」の全体像

研究チームは、アメリカ・コロラド州にあるドライ・メサ恐竜採石場の化石データを用い、約1億5000万年前の生態系を再構築しました。

この場所には、約1万年にわたって堆積した膨大な恐竜化石が残されており、複数種の竜脚類も確認されています。

研究者たちは、恐竜の体サイズ、歯の摩耗、同位体分析、さらには胃内容物の化石といった既存データを統合し、「誰が誰を食べていたのか」を示す高解像度の食物網を作成しました。

その結果、竜脚類(首長恐竜のグループ)は他の草食恐竜よりも、生態系内で圧倒的に多くのつながりを持っていたことが明らかになりました。

これは幼い竜脚類が多くの肉食恐竜に餌資源として利用されていたことを示唆します。

研究者は、この“簡単に手に入る食料”の豊富さが、当時の捕食者の進化にも影響を与えた可能性を指摘しています。

後期ジュラ紀の頂点捕食者は、後の時代に登場するティラノサウルスほど大型でも強力でもありませんでしたが、それでも生き延びることができたのは、狩りやすい幼体が豊富だったからかもしれません。

赤ちゃん恐竜が左右した進化の行方

後期ジュラ紀から約7000万年後、竜脚類が減少した時代に登場したティラノサウルスは、より大型で危険な獲物を倒すため、強力な咬合力や優れた視力を進化させました。

つまり、首長恐竜の赤ちゃんが“ファストフード”のように豊富だった時代と、そうでなくなった時代とでは、捕食者に求められる能力そのものが変わった可能性があるのです。

化石をもとに食物網を再構築することで、恐竜たちの生態や進化の背景が、少しずつ立体的に見えてきました。

巨大恐竜の影に隠れていた「赤ちゃんの存在」こそが、ジュラ紀の生態系を動かす重要な鍵だったのかもしれません。

参考文献

Baby Giants Were The Fast Food of The Jurassic, Study Reveals
https://www.sciencealert.com/baby-giants-were-the-fast-food-of-the-jurassic-study-reveals

Baby dinosaurs a common prey for Late Jurassic predators
https://www.ucl.ac.uk/news/2026/jan/baby-dinosaurs-common-prey-late-jurassic-predators

元論文

“HERE, SIZE IS NO ACCIDENT”: A NOVEL FOOD WEB ANALYSIS OF THE DRY MESA DINOSAUR QUARRY AND ECOLOGICAL IMPACT OF MORRISON FORMATION SAUROPOD FAUNA
https://www.researchgate.net/publication/400003503_HERE_SIZE_IS_NO_ACCIDENT_A_NOVEL_FOOD_WEB_ANALYSIS_OF_THE_DRY_MESA_DINOSAUR_QUARRY_AND_ECOLOGICAL_IMPACT_OF_MORRISON_FORMATION_SAUROPOD_FAUNA

ライター

千野 真吾: 生物学に興味のあるWebライター。普段は読書をするのが趣味で、休みの日には野鳥や動物の写真を撮っています。

編集者

ナゾロジー 編集部

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