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ナイチンゲールダンス・ヤスのコラム連載!“芸人とVTuberどっちがおもしろいか”論争について考える

  • 2026.2.6

渋谷よしもと漫才劇場に所属し、「M-1グランプリ2023」では準決勝進出&敗者復活戦3位という結果で注目を浴びたお笑いコンビ・ナイチンゲールダンスのヤスさん。“尖り芸人”と呼ばれた過去もあるが、その素顔は「真っすぐで熱い男」だ。そんな彼が日々感じたことを書き綴る連載「ヤスのコラム」。

「ヤスのコラム」第23回 撮影=booro/ヘア&メーク=下竹絢子
「ヤスのコラム」第23回 撮影=booro/ヘア&メーク=下竹絢子

「VTuberっておもしろいの?という疑問に30時間向き合った結果」

ヤスです、最近喉風邪をひきまして5日ほど休みをもらってました。熱は下がり体は元気なのですが喉は無理したら悪化するので、家で安静にするだけの時間が2日ほどありました。

そのときにふとSNSでVTuberの話題が上がってきて僕の中である疑問が生まれました。

「で、結局VTuberっておもしろいの?」

なので睡眠以外の30時間くらいをざっとVTuberの動画や切り抜きを見る時間にしてみました。結論として、すごくおもしろかったです。ただVTuberの「おもしろさ」に対する疑問が世間で浮かんでくる理由も少しわかった気がしますし、逆に僕たち芸人ってこういうところVTuberに劣っているなと思う部分も多々ありました。

するとこの“芸人 対 VTuber”の構図、もしかしたら誰も悪くないのかもしれないと思うようになりました。

今から説明します、先に言っときますがここは僕のコラムですから僕がそう思っただけなのであしからず。

僕が最初に手をつけたのは『ドラゴンボール』のゲームをドラゴンボール初見の女性VTuberたちがプレイしてドラゴンボールのストーリーやキャラを知ると言ったリアクションまとめ、みたいな動画でした。

僕たちからしたら当たり前のトランクスがベジータの息子だったり、悟空とベジータが合体してベジットになったりする場面で絶叫したり涙したりする様子を見て少年の頃の自分の気持ちを思い出して一緒に熱くなり親子カメハメ波で一緒に泣いてました。僕が泣いたのは『ズートピア2』以来です。

この時点では僕はそもそもドラゴンボールが好きなので「ドラゴンボール初見が見る名シーンリアクションまとめ」がおもしろいだけだな、とまだどこかスンとして見てました。号泣しながら。

しかしそのまとめ動画でたくさんのVTuberのリアクションを見る中で、ぽろぽろと「ん?」と思うポイントがありました。

それはかなり幼くかわいい見た目の子が独自の解釈で感想を早口で述べていたり、そもそも声がドラゴンボールのキャラクターの声に似ていたり、ドラゴンボールガチ勢で1人後方腕組みで見ていたりと、そういう立ち回りをしていた方たちでした(このコラムがその方たちの活動の妨げにならないように名前の明言は避けます)。

ここで一旦僕の感情を整理してみると、確かにその発言や立ち回り、声色に惹かれたのは事実なんですが、それはそのビジュアルを起点としているかもと思いました。しかしこの時点ではまだうまく言語化できておらず、なんだろうこの感じと思い、気になったVTuber単体の人気動画を見るフェーズに入りました。

単体の動画を見てわかったことは、VTuberはそれぞれ性格、年齢、立場、特技、周りの環境など世界があって、基本はそれをもとに発言を展開していきます。大まかな世界観は大体チャンネルの最上部に説明されていてすぐに確認することができます。

そしてこれかもと思ったのは、全員

「解釈一致」

をすごく大事にしています。

これってなに?ってなる方。たとえばあなたの目の前にベジータがいてお腹が空いてそうです。あなたは、たまたまおにぎりを持っていたので「ほら食べなよ」と差し出します。ベジータはなんと言いますか?

「いらん!」

ですよね、これが解釈一致です。

そしてそこからさらに展開させて「解釈一致からのギャップ」をVTuberは見せます。たとえばあなたの目の前にベジータがいてお腹が空いてそうです。あなたは、たまたまおにぎりを持っていたのでこう言って差し出します、

「あなたの息子のトランクスが一生懸命握ったおにぎりです、うまくできなくて唯一きれいな形で作れたのがこれだけでした」

ベジータはなんと言いますか?

「ちっ、さっさとよこせ!」

ですよね、これが普段は弱みを見せないベジータの解釈からそれでも家族は大事にするというギャップを展開させて解釈一致からのギャップを生み出しています。

これはその世界を一度共有させないとできないことです、この世界を一度共有してそこから発言を展開していくのがVTuberが強く意識しているところかなと思いました。

漫才でも最初の設定を聞いとかないと「これ今なんで笑い起きてんの?」ってわからない漫才がたくさんあるんですけど、それって設定をもとに発言するから知らないと単体のボケ自体は弱く見えたり意味不明だったりしているのです。

逆に設定はよくあるけど掛け合いだったり単体のワードセンス、見せ方が強い漫才は、最初の設定を聞いてなくても笑えます。

基本詳しい自己紹介なしで、はいおもしろいこと言ってくださいのバラエティ番組は後者です。そこが僕たち芸人がしのぎを削っているフィールドです。かなり極端に言えば、内容自体が秀逸なので“誰が言ってもウケる可能性が高い”コメントです。

そうなるとさすがに生まれてから死ぬまでおもしろいことを言う言わないでふるいにかけられ続け、その中で勝ち残ってきた芸人側のほうが打率が高いので有利になってしまい、ここにVTuberが入ってきてもおもしろいこと言えないだろ!と劣勢に見えてしまいます。

しかしたとえばベジータの有名な名台詞

「きたねえ花火だ」

あのベジータが敵を爆発させたあとに言うセリフとしては120点じゃないですか。これ以上大喜利的におもしろいこと言おうとしたらベジータらしくなくなる可能性もあります、これが解釈一致だと思います。

つまり「自己紹介は済んでる世界で、あなたらしいこと言ってみんなを沸かせて」となると、VTuber有利だと思います。僕はこれも“おもしろい”と言っていいと思います。

“おもしろいセリフ”と、“この人が言うからおもしろいセリフ”があった場合、“この人が言うからおもしろいセリフ”は一回その人の情報を見て聞いて説明されないといけないのでおもしろいの初動が遅れるときがあります。

“芸人とVTuberどっちがおもしろいか論争”は、芸人のほうが単発で笑えることを言える確率が高く、それに適したフィールドで活躍しているのを切り抜かれる場面が多いのでかなり芸人有利なディベートになっていると思います。

言ってほしいセリフを言ってくれるのも、思いつかなかったセリフを言ってくれるのもどちらも才能です。なのでどっちがいいってのはフィールドによって変わるなあ、てことはこれどっちがどうって話ではないなというのが最終的な僕の結論です。

それにしても僕たち芸人って、自分の設定の提示を日常的に怠っていること多いなと今回のVTuber合宿で思いました。自分のいろんな面を言語化できるレベルで提示できたほうが見てるほうも推しやすいですね。やっぱ解釈一致って気持ちいいです。

みなさんは、どちらがいいですか?

僕ですか?

僕はわがままなので言ってほしいセリフも思いつかなかったセリフも言える「予想外の解釈一致」を目指します。

今のは解釈一致ですよね?

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