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「こんなんじゃロクな学校に受からないわよ」中学受験で家を"レッド"に染める親vs"グリーン"を灯す親の頭の中

  • 2026.2.6

中学受験で子供を合格に導ける親は何が違うのか。仕事や家事の傍ら、机に向かう子供をサポートする親も不安や葛藤を抱えている。セルフマネジメントプログラムの講師・園田恭子さんは「子供の成績が不調な時、親も感情を揺さぶられるが、その際、どんな対処や声がけをできるかで親子関係や家庭内の雰囲気はがらりと変わる」という――。

Transformのエグゼクティブ・アドバイザー園田恭子さん
Transformのエグゼクティブ・アドバイザー園田恭子さん
わが子を合格に導ける親の「頭の中」

中学受験で合格めざして頑張る子は、いわば試練に立ち向かう勇者だ。その志と努力は見上げたものだが、それを支える親もまた立派。とりわけ縁の下の力持ちの役を担うことが多い母親の働きは称賛に価する。

何せ、母親は受験本番までのプロセスで多かれ少なかれこんな感情を抱くことになるのだから。

・わが子の成績が伸びない(塾の他の子は伸びているのに)
・子供がやる気を見せない(時間はあまり残されてないのに)
・これではろくな学校に受からない(塾費をかけているのに)。
・夫は丸投げ(私は塾送迎、栄養管理、勉強支援などフル回転なのに)

焦り・恐れ・不安・怒り・無力感……。とにかく心が忙しく、休まる日がない。仕事や家事もあり、たまりにたまったネガティブな要素が「爆発」。最悪の場合、受験勉強がとん挫し、全落ちする残念なケースもある。

「大人(母親)は自身の経験や見聞きしたことから、今の子供の行動がどんな未来(結果)につながるのかおおよそ想像できます。でも、子供はそうした見通しがあまりできません。そのギャップが親の焦りや不安、怒りにつながってしまうのでしょう。これは無理もありません」

こう語るのは、ビジネスパーソンの向けのプログラムやコーチングをしている園田恭子さん。東京に拠点があるTransformでエグゼクティブ・アドバイザーとしても活動している。

Transformは、経営学者ピーター・F・ドラッカーの「自分をマネジメントできなければ人をマネジメントすることなどできない」という思想をベースに、企業のリーダーなどにセルフマネジメントのスキルを伝授している会社だ。

感情爆発を回避する方法

中学受験に挑戦する家庭で、感情爆発してしまう母親とは対照的に、心穏やかに気持ちを整え、家族みんなが納得できる「合格」へと導くことができる母親もいる。愛するわが子の人生初の受験を応援したい気持ちは一緒なのに、いったい何が違うのだろうか。

家庭でよくある親子の衝突シーンで考えてみよう。

例えば、模試の結果がひどく悪かった、もしくは成績低迷しているにもかかわらず机に向かわない子供。母親が何か言うと、「あー、ハイハイ。わかってるよ」とあからさまに鬱陶しそうな態度や行動をされる。そんな経験をした人は多いにちがいない。

この時に、いったん受け止めて冷静に対処しようとするか、逆に、瞬間湯沸かし器のごとく腸が煮えくり返って攻撃的になるか。後者は、こんなNGワードを口にしてしまいがちだ。

「冬期(春期・夏期・直前)講習に何万円出したと思ってるの?」
「そんなんじゃどこにも受からないよ」
「Aちゃんは、1日何時間勉強してこの学校に受かったらしいよ」
「そんなに勉強したくないなら、もう塾(受験)を辞めなさい」

売り言葉に買い言葉だが、子供は親に罵倒されると、より強いストレスを感じ、「頑張っているのに認めてくれない」と否定された気持ちに。モチベーションや自己肯定感がさらに低下し、成績が思うように上がらないという悪循環を招いてしまう、と園田さんはいう。

以前、娘の中学受験に寄り添ったことのある園田さんは、自身の経験も踏まえつつ「怒りや哀しみなどの感情をマネジメントするためには、親自身の身体(神経系)の状態も大きく関わっているのではないでしょうか 」という。つまり、逆に言うと、引き金となる子供の言動があっても、自分の状態次第では感情爆発を回避することも可能ということだ。

どうすれば回避できるのだろうか

Transformの活動で園田さんが必ず伝えているのが、人間が持つ3つの神経状態には「グリーン」「レッド」「ブラック」の各ゾーンがあり、自分が今どのゾーンにいるのかを把握して、軌道修正することが大切だということだ。

グリーン・ゾーンかレッド・ゾーンか

理想なのは、グリーン・ゾーンだ。

【図表1】グリーン・ゾーン
図版提供=Transform

「人間は、活動時に優位になる交感神経と、睡眠中やリラックス時に優位になる副交感神経という自律神経がうまく切り替わることで、心や身体の健康が保たれます。2つの波が適度な範囲内で波を打っているのが理想的な“グリーン・ゾーン”です。

グリーンの時はさまざまな感情が湧いたとしても、望む結果につなげられるような言動や思考の転換を行う“余白”を持っている状態です。 子供であれば、エネルギーもやる気も高まり、勉強に集中できる。リラックスした状態で心は穏やかです。その後、エネルギーは徐々に消耗しますが、きちんと睡眠を取るなどして休息を取り、“チャージ”することで、また走り出すことができます」

親にワーッと言われ過ぎて、フリーズ

では、レッド・ゾーンやブラック・ゾーンとは何か。

「レッド・ゾーンの根っこは“恐れ”です。不安、焦り、怒りや緊張などにより、アクセルが踏まれた状態になると、人の神経系は恐れへの対処として“レッド・ゾーン”に入ってしまいます。親が、子供に対して感情的になったり、過剰に発破をかけて勉強を促したり、勉強しない様子にイライラしたりするのは、このゾーンにいるときです。

子供がここにいる場合『怒られるのが怖くて勉強をする(戦う)』または『よい成績が出せず親に怒られるのが怖くて勉強しない(逃げる)』ことになります。そのような緊張状態が長く続くことでエネルギーが枯渇することも。

そうすると、もう子供は勉強をするどころではなくなり、親も怒ることに疲れて、『もう塾を辞めなよ』などと口走ってしまう。これが、エネルギー切れのバーンアウト、“ブラック・ゾーン”です。時には、親にワーッと言われ過ぎて子供がシャットダウンやフリーズするということもあります」

【図表2】レッド・ゾーン
図版提供=Transform
【図表3】ブラック・ゾーン
図版提供=Transform

親子共に、レッド&ブラック・ゾーンにいるときは、危険信号。一刻も早くそこから逃れ、グリーンに戻るようにすることが大事だ。

園田さんによれば、常時グリーン・ゾーン内にいられれば、心の柔軟性があり、辛抱強さもある。瞬間湯沸かし器にはならないのだ。子供も頑張って勉強に前向きに取り組み、クリエイティブな気持ちになれる。「模試や塾の小テストなどでうまくいかなかったとしても、『次頑張ろう』といったエネルギーが自然とわいてくる状態です」

親がピリピリしているときは

とはいえ、親も人間だ。気づいたらレッドやブラックに振れてしまうこともあるだろう。「あなたのことを思って私が全力でサポートしてあげているのに!」といったダークサイドの感情が湧き上がってしまうケースもある。だが、大事なのは、やはり親が先にグリーンに立ち戻ろうと姿勢を見せることだ。

「なぜなら、こうした神経系の状態は伝播しやすいからです。親がピリピリ、イライラ、ムカムカしていると、そのネガティブな空気がすぐさま伝わり、子供が親に暴言を吐いたり反発したりするもの。そもそも日々、塾仲間と競い合い、合格というプレッシャーと戦っている子供の負担は心身ともに大きいでしょう。その結果、無意識にレッド・ゾーンに入ってしまえば、自己コントロール能力が不十分な年齢ですから、レッドから抜け出しにくくなる。そこで、せめて親がグリーンな状態を心がけて、プラスな伝播で、家族全体をグリーンにして、好循環にすることができます」

中学受験の合否は子供がどれくらい勉強を積み重ねるかも重要だが、見守る母親や家庭内のグリーン時間がどれだけ多く、レッド時間を最小限にできるかということも大きく影響するということなのだ。(桜田容子=取材・文)

園田 恭子(そのだ・きょうこ)
ANA国際線客室乗務員や、コンサルティング会社でのコーチング・コンサルティング業務を経て、独立。現在はTransformでエグゼクティブ・アドバイザーとしても活動中。セルフマネジメントの領域から、ビジネスマンに向けてチームや組織で成果をあげていくためのサポートをしている。プライベートでは3人の子の母。13年前、娘の中学受験に伴走し、第一志望校のミッション系の難関女子中高合格に導いた経験を持つ。

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