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俳優・寛一郎さんインタビュー「母が読んでくれるたびに号泣していた絵本があります」

  • 2026.2.6

映画やドラマなどで独特の存在感を放つ寛一郎さん。「子どものころ大好きだった遊びや絵本が今の自分の一部を確かに成している」と語ります。そんな幼少期の話から、最新の出演映画『たしかにあった幻』を通して考えたことについてお話を伺いました。

寂しさ、切なさ、嬉しさ… 母の朗読で心が洪水状態に

――幼少期の寛一郎さんはどんな子どもでしたか?

親の仕事の関係もあって大人が始終出入りしている家だったこともあり、人見知りは全くなく自分から話しかけていく子どもでした。好きな遊びは仮面ライダー。当時放送していたオダギリジョーさん主演の『仮面ライダークウガ』が大好きで、クウガになってひたすら敵と戦っていました。クウガのマスクもつけて自分の中では完全にクウガなんだけど、そこはまだ小さい子どもで、首から下はすっぽんぽんという写真も残っています(笑)。

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――ストーリーの中を生きていたんですね。絵本は読んだりしていましたか?

絵本は大好きでした。読んでくれるのはいつも母で、特に覚えているというかほぼその記憶しかないほど印象に残っているのは『アンジュール ある犬の物語』。

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『アンジュール ある犬の物語』 ガブリエル・バンサン/作 BL出版 1540円
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© 1982 by Casterman Editions. Belgium

とにかく絵がきれいで犬の表情や特徴をものすごくよく捉えていて、文字が一切ないんです。でも母は毎回自分でセリフを作って「読み聞かせ」をしてくれました。せりふ回しは同じだったり変えたりまちまちで、寂しさ、切なさ、嬉しさ、感動……さまざまな感情が入り混じって、僕はその都度号泣していた記憶があります。小さな子どもを泣かせるのって意図的にやろうとしても難しいと思うのですが、母は元俳優座の俳優という意地を見せたんでしょうね。

子どもの頃の記憶と結びついている絵本はこれだけ。他にもいわゆる定番絵本は家にありましたが、これを体験しちゃったおかげで他の絵本では心が動かなくなってしまったというか……。改めて母のすごさを感じます。

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大切なのは命や記憶を つないでいくことかもしれない

――映画『たしかにあった幻』では、どこかつかみどころのない青年・迅を演じておられますが、寛一郎さんご自身と近い部分は感じますか?

迅は人当たりはいいけど責任は一切もたない。すごく臆病で、どんなに親密になった人との間にも絶対的な距離があり、一番大切に思っているはずの人さえも傷つけてしまう。その臆病さが魅力の一つでもあるのだけど、そうした部分は僕の中にもあるような気がします。

実は最初の脚本の迅と映画の中の迅とではちょっと違う部分もあって。河瀨直美監督が僕を見てなんとなく寄せていった結果、映画の中の迅になりました。人を不快にさせることはないけれども線引きは確かにある。そういう一面を監督は僕に感じたのかもしれません。

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© CINÉFRANCE STUDIOS – KUMIE INC – TARANTULA – VIKTORIA PRODUCTIONS – PIO&CO – PROD LAB – MARIGNAN FILMS – 2025

――「命のつながり」をテーマに、臓器移植を通して生きた証や記憶をつないでいくことを描いた作品ですが、演じてみてそうしたことに対しての捉え方、考え方に変化はありましたか?

臓器移植ってすごく難しい問題ですよね、倫理的な問題も感情的な部分も含めて。助かる可能性がある命があるなら僕は助ける選択肢を取るだろうし、それによって命が循環していくのは尊いことだと思います。

一方で、誤解を恐れずに言うと、僕自身は生きている/亡くなったということ自体にはそこまで執着がないというか、そこに重きを置いていないことにも気がついたんです。この前、母方の祖母が病気になって手術を受けたんですね。もちろん大切な祖母だから生きてほしい、がんばってほしい気持ちはあるけど、物理的に命の終わりというのはどうしたってある。でも大切な相手に対して自分がどういう思いで何をしてあげられたか――大事なのはそこで、命や記憶をつないでいくってそういうことでもあるのかなと。

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――映画のテーマにも通じていますね。その考えには、演じる中で至ったのでしょうか?

今回、役作りのために一定期間屋久島に住んだんです。電波の届かない山奥で何日も過ごす中で、森を散歩したり景色を眺めたりする時間がたくさんありました。そうすると普段ではあまり考えないようなこと、例えば生きるとか命といった今まで真正面から向き合ってこなかったことについてもいろいろ考える時間ができました。

今って情報がいろいろありすぎて、そのせいで自分自身がどう考えているか、どう感じているかが見えなくなっている人も多いように思います。僕ももっと1日1日を大切に、いろいろなことを感じて生きていきたいと改めて思いました。

――映画の中では短冊に願いを書くシーンがありますが、寛一郎さんが今、短冊に願いごとを書くとしたらどんなことを書きますか?

うーん……難しいな。健康にはそこまでこだわっていないし、おいしいものをたくさん食べたいとかもないんだよなぁ。「それらを捨てて得られるものを全部ください」って書こうかな。でもそれって逆にめちゃくちゃ強欲ですね(笑)。

寛一郎
かんいちろう/1996年生まれ、東京都出身。2017年に俳優デビュー。同年公開の映画『ナミヤ雑貨店の奇蹟』で新人男優賞を受賞して注目を集めた。主な出演作に、NHK大河ドラマ『鎌倉殿の13人』(22)、映画『せかいのおきく』(23)、『ナミビアの砂漠』(24)『シサム』(24)がある。2025年は、NHK大河ドラマ『べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~』、NHK連続テレビ小説『ばけばけ』、NHK放送100年特集ドラマ『火星の女王』、映画『爆弾』『そこにきみはいて』『ラストマン -FIRST LOVE-』など多数出演。公開待機作として『恒星の向こう側』を控える。

INFORMATION

映画『たしかにあった幻』

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河瀨直美監督の8年ぶりオリジナル脚本の本作。「臓器移植」と「行方不明者」という現代日本の2つの大きな問題をテーマに、愛のかたちと命のつながりを描く。臓器移植コーディネーターとしてフランスから来日したコリーは、臓器移植を待つさまざまな患者や家族と向き合う中、屋久島で出会った迅と惹かれ合い一緒に暮らすことに。ところが迅はある日突然姿を消してしまう。死=「終わり」の概念とはまた別の可能性を考える、そんなきっかけになる作品。

出演:ヴィッキー・クリーブス 寛一郎 尾野真千子 北村一輝 永瀬正敏ほか
監督・脚本・編集:河瀨直美
配給:ハピネットファントム・スタジオ

© CINÉFRANCE STUDIOS – KUMIE INC – TARANTULA – VIKTORIA PRODUCTIONS – PIO&CO – PROD LAB – MARIGNAN FILMS – 2025


2月6日(金)テアトル新宿ほかロードショー

寛一郎さん着用 ジャケット ¥115,500(T.T/T.T tel:075・525・0402)、シャツ ¥39,600(SEVEN BY SEVEN/SEVEN BY SEVEN tel:03・5785・6447)、シューズ ¥223,300(Alden/LAKOTA tel:03・3545・3322)※税込価格
インタビュー/遊佐信子 撮影/相馬ミナ ヘアメイク/Taro Yoshida(W) スタイリスト/石井大

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