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【ノロウイルス】「カキ食べない」「家族感染なし」でもかかる…なぜ? 専門医に聞く“意外なルート”

  • 2026.2.5
ノロウイルスに感染するのはなぜ?(画像はイメージ)
ノロウイルスに感染するのはなぜ?(画像はイメージ)

カキ料理などを提供した飲食店で、ノロウイルスの集団感染が相次いでいます。一方、「カキを食べていない」「周囲にノロウイルスに感染した人がいない」にもかかわらず、いつの間にかノロウイルスに感染する人もいるようで、SNS上では「なぜノロウイルスになったのか身に覚えがない」といった声が上がっています。この場合、どのような原因が考えられるのでしょうか。ノロウイルスの感染経路について、天王寺やすえ消化器内科・内視鏡クリニック(大阪市天王寺区)院長で総合内科専門医、消化器病専門医、内視鏡専門医の安江千尋さんに聞きました。

塵埃感染の可能性も

Q.そもそも、ノロウイルス感染症とはどのような病気なのでしょうか。

安江さん「ノロウイルス感染症は、ノロウイルスというウイルスが原因で起きる感染性胃腸炎です。特に11月から翌年3月ごろにかけて流行しやすく、食中毒や集団感染の原因として最も多いウイルスの一つです。

感染すると、突然の吐き気や嘔吐(おうと)、下痢、腹痛といった消化器症状が現れます。発熱はあっても38度未満のことが多く、インフルエンザのような高熱が出ることは通常ありません。症状はノロウイルスに感染後、12~48時間程度で急に始まるのが特徴です。多くの場合、症状は1~3日程度で自然に軽快しますが、嘔吐や下痢が激しい場合は脱水症状を起こすことがあります。特に高齢者や乳幼児、基礎疾患がある人は注意が必要です。

またノロウイルスは、数十個程度のごく少量のウイルスでも感染が成立するほど、感染力が非常に強い点も特徴です。そのため、家庭内や施設内で次々と感染が広がるケースも少なくありません」

Q.ノロウイルスの主な感染経路について、教えてください。主にどのようなパターンで感染するケースが多いのでしょうか。

安江さん「ノロウイルスの感染経路は、大きく分けて3つあります」

(1)経口感染(食品を介した感染)最もよく知られているのが、ウイルスに汚染された食品を食べることで感染するケースです。特にカキなどの二枚貝は、海水中のウイルスを体内に取り込みやすいため、十分に加熱されていない状態で食べると感染リスクが高まります。

ただし、注意したいのは「二枚貝だけが原因ではない」という点です。調理を行う人がすでにノロウイルスに感染していた場合、手指を介してウイルスが食品に付着し、その食品を食べることで感染するケースも少なくありません。

(2)接触感染(ヒトからヒトへの感染)実際の流行では、この経路が最も多いと考えられています。

・トイレ後の手洗いが不十分だった場合・嘔吐(おうと)物、便を処理した際に、手指が汚染された場合・ドアノブ、手すり、スマホなどの共用物品に触れた場合

こうした場面で、手に付着したウイルスが口に入ることで感染が成立します。ノロウイルスはごく少量でも感染が成立するため、目に見えないレベルの汚染でも十分に感染が起こります。

(3)飛沫(ひまつ)感染、塵埃(じんあい)感染(嘔吐物を介した感染)飛沫感染とは嘔吐時の微細な飛沫を吸い込むことによる感染を指します。また、嘔吐物や便によって汚染された場所が十分に消毒されずに乾燥すると、ウイルスを含んだ微粒子が塵埃(ほこり)として舞い上がります。塵埃感染とは、ウイルスを含有する微粒子が付着したほこりを吸い込むことによる感染を指します。

ノロウイルス感染者が嘔吐した際、ウイルスを含む微細な飛沫が周囲に飛び散ることがあります。この飛沫が「口や鼻に直接入る」または「床や衣服、周囲の物に付着する」ことで、感染につながります。ノロウイルスに感染した人の嘔吐物や便を適切に処理しなかったことが原因で塵埃感染するケースもあります。

Q.「カキを食べていない」「周囲にノロウイルスに感染した人がいない」にもかかわらず、ノロウイルスにかかってしまう人がいるようです。この場合、どのような原因が考えられるのでしょうか。空気感染の可能性はありますか。

安江さん「医学的に空気感染とは、厳密には、空気中に散布された病原体を呼吸時に吸い込むことによって感染する『飛沫核感染』を指します。結論から言うと、ノロウイルスは結核やはしかとは違い、飛沫核感染はしません。しかし、『飛沫核感染しない=ノロウイルスに感染した人に近づいても安全』というわけではありません。

例えば、駅構内や公共の場で嘔吐している人がいた場合、その周囲にはウイルスを含む飛沫や塵埃が存在している可能性があります。直接触れなくても、靴底や衣服、手指を介して、結果的に口にウイルスが入ることは十分にあり得ます。

そのため、一般の人が感じる『空気感染した気がする』という印象は、実際には“飛沫や環境を介した感染”であることがほとんどです」

Q.「空気感染した気がする」と感じる人がいることから、ノロウイルスが原因で受診する人の中には「なぜ自分がノロウイルスに感染したのか心当たりがない」といった人も多いのでしょうか。

安江さん「はい、なぜノロウイルスに感染したのか分からないという人が非常に多いのが実情です。診療現場では『カキは食べていない』『家族も元気』『外食もしていない』という人が、ノロウイルスと診断されるケースは珍しくありません。

これは、ノロウイルスが日常生活の中で、気付かないうちに感染するウイルスであるためです。特に、無症状の感染者や軽症で済んだ人からウイルスが広がることもあり、感染経路を特定できないことは決して異常ではありません」

Q.もし自分や家族がノロウイルスに感染した場合、どのように対処すればよいのでしょうか。症状が治まっても数日は自宅待機をしなければならないのでしょうか。

安江さん「ノロウイルスの基本的な対処法は『脱水予防(水分・電解質補給)』『無理に食べない』『吐き気、下痢が強い場合は医療機関を受診』の3つです。

また、家庭内感染を防ぐポイントは『トイレ、洗面所の次亜塩素酸による消毒』『嘔吐物処理時は手袋、マスクを着用』『タオルや食器の共有を避ける』『せっけんと流水による手洗いの徹底』です。

症状が治まっても、便中へのウイルス排出は1週間程度続くことがあります。特に、食品を扱う仕事や集団生活に関わる場合、乳幼児や高齢者がいる家庭では、症状が消えた後も数日間は慎重な対応が望まれます」

オトナンサー編集部

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