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毒親育ち、逆に「メンタルが強い」説はホント?医師監修

  • 2026.2.3

「周囲からは『しっかりしている』と言われる。でも本当は弱いし、生きづらいを感じることがある」。毒親のもとで育った人のなかには、こうした二面性を抱えて生きている方が少なくありません。

ネット上では「毒親育ちはメンタルが強い」という声がある一方、「強いふりをしているだけ」「本当は誰よりも傷ついている」という意見も見られます。実際のところはどうなのでしょうか。

心療内科を併設するなかざわ腎泌尿器科クリニック院長・中澤佑介先生監修のもと、「毒親育ち=メンタルが強い」説を深堀りしていきます。

「毒親育ち=メンタルが強い説」は本当なのか?

結論から言うと、「毒親育ち=メンタルが強い」という説は、単純に正しいとも間違っているとも言えません。

確かに、困難な家庭環境で育った人のなかには、逆境を乗り越える力を身につけた人がいます。幼い頃から自分で考え、自分で対処することを強いられてきた結果、問題解決能力や精神的なタフさを獲得したケースです。

しかし、「それは本当の強さとは限らない」という声もあります。

「生きていくために身につけた強さ」ではあるが……

毒親育ちの人が見せる「強さ」は、しばしば「生存戦略としての強さ」と捉えられています。つまり、つらい環境を生き延びるために身につけた防衛反応であり、心から安定している状態とは異なるということです。

たとえば、感情を表に出さない、弱音を吐かない、一人で何でも解決しようとする。こうした姿は周囲から「強い人」と見られがちです。

しかしその内側では、常に緊張状態にあったり、他者を信頼できなかったり、自分の感情がわからなくなっていたりすることがあります。

つまり、「強く見える」ことと「心が安定している」ことは、必ずしも同じではないのです。

気質や、周囲の人の影響もある

また、同じような家庭環境で育っても、その影響は人によって大きく異なります。

持って生まれた気質、親以外に支えてくれる大人の存在、学校や地域などの環境要因など、さまざまな条件が複雑に絡み合って、その人の心のあり方を形作っています。

「毒親育ちだからメンタルが強い(または弱い)」と一括りにすることはできません。大切なのは、自分自身の状態を正しく理解し、必要なケアを受けることです。

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そもそも"メンタルが強い"ってどういうこと?

「メンタルが強い」という言葉は日常的によく使われますが、その意味するところは人によって異なります。ここで一度、「精神的な強さ」とは何かを整理してみましょう。

「強さ」にはさまざまな側面がある

心理学において、精神的な強さは複数の要素から成り立つと考えられています。

  • ストレス耐性
    困難な状況に直面しても、パニックにならず冷静に対処できる力。プレッシャーの中でもパフォーマンスを維持できること。

  • レジリエンス(回復力)
    つらい出来事があっても、そこから立ち直る力。一時的に落ち込んでも、時間とともに元の状態に戻れること。

  • 感情調整能力
    自分の感情を認識し、適切にコントロールできる力。感情に振り回されず、状況に応じた行動が取れること。

  • 自己肯定感
    自分には価値があると感じられること。失敗しても自分を責めすぎず、ありのままの自分を受け入れられること。

  • 柔軟性
    変化や予期せぬ事態に適応できる力。一つのやり方に固執せず、状況に応じて考え方や行動を変えられること。

「強く見える」と「実際に安定している」の違い

ここで重要なのは、「強く見える」ことと「心が安定している」ことは別物だということです。

たとえば、どんなにつらいことがあっても表情を変えず、弱音を一切吐かない人がいるとします。周囲からは「あの人はメンタルが強い」と評価されるかもしれません。

しかし、その人は感情を「出さない」のではなく「出せない」状態かもしれません。幼少期に感情を表現することが許されなかった、泣いたら怒られた、弱みを見せると攻撃された経験から、感情を封じ込めることを学んだ可能性があります。

これは「強さ」というより「麻痺」に近い状態です。感情を感じないようにすることで、一時的には傷つかずに済みますが、長期的には心身にさまざまな影響を及ぼすことがあります。

真の意味での精神的な強さとは、感情を抑え込むことではなく、感情を認識したうえで適切に対処できること。傷ついたときに傷ついたと認められること。そして、必要なときに人に頼れることです。

毒親育ちの人が見せる「強さ」が、どちらのタイプなのかを見極めることが大切です。

次:毒親育ちでも「強く見える人」の特徴とは

毒親育ちでも「強く見える人」の特徴とは

毒親のもとで育ちながらも、社会的には「しっかりしている」「頼りになる」と評価される人がいます。こうした人たちには、いくつかの共通した特徴が見られます。

自己解決能力が高い

幼い頃から親に頼れなかった経験から、問題が起きたときに自分で考え、自分で対処する力が身についています。仕事でトラブルが発生しても慌てず、冷静に解決策を探ることができます。

周囲からは「頼りになる」「任せておけば安心」と思われることが多いでしょう。

他者の感情に敏感で気遣いができる

毒親のもとでは、親の機嫌を読み取ることが生存に直結していた場合があります。その結果、他者の表情や声のトーン、場の空気を敏感に察知する能力が発達していることがあります。

この能力は、対人関係や仕事において強みになることがあります。相手が言葉にしていない感情やニーズを汲み取り、先回りして対応できるため、「気が利く人」「察しがいい人」と評価されやすいのです。

我慢強い

理不尽な扱いを受けても耐える、自分の欲求を後回しにするなどの経験を重ねてきた結果、忍耐力が強くなっていることがあります。

多少の困難があっても投げ出さず、粘り強く取り組むことができるため、仕事などで高い評価を受けることも少なくありません。

自立心が強い

「誰かに頼る」という選択肢がなかった環境で育つと、何でも一人で頑張る傾向が強くなります。努力を重ね、経済的にも精神的にも自立しており、他者に依存しない生き方を選択できる人が多いようです。

感情をコントロールできる(ように見える)

感情的になることが許されなかった環境で育った場合、感情を表に出さないことに長けています。どんな状況でも冷静に見え、感情的な対立を避けることができます。

ただし、前述のとおり、これは「コントロールできている」のではなく「抑圧している」可能性もあります。表面上の冷静さと、内面の安定は必ずしも一致しません。

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危機管理能力が高い

予測不能な親のもとで育った経験から、「最悪の事態」を常に想定する癖がついていることがあります。リスクを先読みし、備えることができるため、リスク管理ができるという特徴があります。

毒親育ちのメリットとは? 視点を変えて考えてみる

次:"毒親育ちの強さゆえの生きづらさ"とは

強さと傷つきやすさは表裏一体? "毒親育ちの強さゆえの生きづらさ"とは

毒親育ちの人が身につけた「強さ」は、生き延びるために必要なものでした。しかし、その強さが大人になってから別の形で生きづらさを生むことがあります。

頼ることができない

「自分でなんとかしなければ」という思いが強すぎて、人に助けを求めることができません。本当は限界なのに、弱音を吐けない。助けてほしいのに、その言葉が出てこない。頼るという発想が薄い人もいます。

その結果、心身ともに追い詰められてしまうことがあります。

また、「この人は何でも一人でできる」と思われることで、周囲からのサポートを受けにくくなるという悪循環に陥ることもあります。

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自分の感情がわからない

長年感情を抑圧してきた結果、自分が何を感じているのかわからなくなっていることがあります。「悲しい」「寂しい」「怒っている」といった感情を認識できず、体の不調として現れることもあります。

自分の本当の気持ちがわからないため、何がしたいのか、何が幸せなのかもわからない。そんな空虚感を抱えている人も少なくありません。

常に緊張状態にある

危機管理能力が高いということは、裏を返せば常に警戒モードにあるということです。リラックスすることが苦手で、安全な環境にいても気が休まらない。

この慢性的な緊張状態は、自律神経の乱れや、不眠、頭痛、胃腸の不調などの身体症状につながることがあります。

親密な関係を築くのが難しい

他者の感情に敏感であることは、裏を返せば「相手に合わせすぎてしまう」ことでもあります。自分の意見や欲求を押し殺し、相手の期待に応えようとするあまり、対等な関係を築けないことがあります。

また、人を信頼することへの恐れから、深い関係になる前に自ら距離を置いてしまうパターンもあります。

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「頑張りすぎ」が止められない

我慢強さや自立心は、ときに「頑張りすぎ」という形で自分を追い詰めます。休むことに罪悪感を覚え、常に何かをしていないと不安になる。自分に厳しすぎるあまり、燃え尽きてしまうこともあります。

幸せを感じることへの罪悪感がある

つらい環境で育った人のなかには、幸せを感じることに対して無意識の罪悪感を抱く人がいます。「自分が幸せになってはいけない」「いいことがあると、その後に悪いことが起きる」といった感覚です。

これは、幼少期に幸せな瞬間が長続きしなかった経験や、幸せそうにしていると親から攻撃された経験などが影響していることがあります。

次:毒親育ちのメリットとは? 視点を変えて考えてみる

毒親育ちのメリットとは? 視点を変えて考えてみる

ここまで、毒親育ちの「強さ」の影の部分について触れてきました。しかし、つらい経験を経たからこそ得られたものがあるのも事実でしょう。

それを「メリット」と呼ぶことに抵抗がある方もいるかもしれませんが、自分が身につけてきた力を肯定的に捉え直すことは、回復への一歩になり得ます。

観察力・洞察力が身についた

親の機嫌や場の空気を読むことで生き延びてきた経験は、鋭い観察力として残っています。人の微妙な表情の変化、声のトーン、言葉の裏にある感情を読み取る力は、対人関係やビジネスの場面で大きな強みになります。

カウンセラー、教師、医療従事者、営業職など、人と関わる仕事で活躍している毒親育ちの人が多いのは、こうした能力が活かされているからかもしれません。

共感力が高い

自分自身がつらい経験をしてきたからこそ、他者の痛みに寄り添える力があります。表面的な励ましではなく、本当の意味で相手の気持ちを理解できる。この共感力は、人間関係において大きな財産です。

「あなたに話を聞いてもらえて救われた」と言われた経験がある方も多いのではないでしょうか。

逆境に強い

嫌な経験をしてきたからこそ、多少の困難では動じない強さがあります。この胆力は、人生のさまざまな場面で助けになります。

自分で考え、行動する力が身についた

誰かに教えてもらえなかった分、自分で学び、自分で判断する習慣が身についています。

マニュアルがなくても動ける、前例がなくても道を切り拓ける、他者の経済力に依存せず自立できている。こうした自立性は、変化の激しい現代社会において貴重な能力です。

反骨精神・向上心がある

「親のようにはなりたくない」「この環境から抜け出したい」という思いが、強い向上心や反骨精神につながっていることがあります。ハングリー精神を持って努力を重ね、社会的に成功するためには欠かせない気質です。

危機管理能力が高い

たとえネガティブな性格だと悩んでいても、それをリスク管理能力として活かすこともできます。

プロジェクトの落とし穴を事前に見つける、トラブルに備えて準備をしておくなどの姿勢は、仕事において高く評価されます。

自分と向き合う力がある

毒親育ちであることを自覚し、その影響について考えている時点で、あなたには「自分と向き合う力」があります。これは誰にでもできることではありません。

過去を振り返り、自分の行動パターンや感情の癖を理解しようとする姿勢は、心理学で「内省力」と呼ばれ、精神的な成長において非常に重要な能力とされています。

身につけざるを得なかった「強さ」だが、それが「今の自分」を支えてくれている

大切なのは、これらの能力を「あんな経験をしたから仕方なく身についたもの」としてだけ捉えるのではなく、「今の自分を支えてくれている力」として認めてあげることです。

同時に、その「強さ」で自分が苦しくなっていないか、定期的に確認することも必要です。強くあり続ける必要はありません。弱さを認め、人に頼ることを学ぶことも、また別の意味での「強さ」です。

もし幼少期の経験による生きづらさを感じているなら、カウンセラーや心理士などの専門家に相談することも選択肢のひとつです。ぜひ頼ってみてください。

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監修者プロフィール

なかざわ腎泌尿器科クリニック 院長 中澤佑介

金沢医科大学医学部医学科卒業。「患者さんに近い立場で専門的医療を提供したい」という思いで2021年、なかざわ腎泌尿器科クリニックを開設。2024年9月、JR金沢駅前に金沢駅前内科・糖尿病クリニックを開設。2026年4月、金沢市玉鉾に心療内科・ペインクリニックを開設予定。

<Text:外薗 拓 Edit:編集部>

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