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「聴力検査では異常なし」でも聞き取れない…17万人が共感→“APD/LiD”の高校生が抱える日常の違和感【作者に聞く】

  • 2026.1.30

教室のガヤガヤした喧騒。友達が楽しそうに話しかけてくる。けれど、聞こえてくるのは「意味を持たない音の塊」――。

通常の聴力検査では「異常なし」と診断される。耳自体は聞こえている。しかし、脳が音を言葉として処理できない症状「聞き取り困難症(LiD)」や「聴覚情報処理障害(APD)」。雨桜あまおう(@amaousansan)さんが描く創作漫画『聞き取りが苦手すぎる男子の日常』は、この見えにくい不自由さを、高校生の橘結友というキャラクターを通して鮮やかに描き出している。

「必殺・テキトー相槌」で乗り切る限界。17万いいねが物語る“隠れた当事者”の多さ

【漫画】「聞き取りが苦手すぎる男子の日常」を読む 画像提供:雨桜あまおう(@amaousansan)
【漫画】「聞き取りが苦手すぎる男子の日常」を読む 画像提供:雨桜あまおう(@amaousansan)
聞き取りが苦手すぎる男子の日常1(2) 画像提供:雨桜あまおう(@amaousansan)
聞き取りが苦手すぎる男子の日常1(2) 画像提供:雨桜あまおう(@amaousansan)
聞き取りが苦手すぎる男子の日常1(3) 画像提供:雨桜あまおう(@amaousansan)
聞き取りが苦手すぎる男子の日常1(3) 画像提供:雨桜あまおう(@amaousansan)

主人公の橘は、大人数での会話や騒がしい場所での聞き取りが極端に苦手だ。会話の流れを遮るのを恐れ、「テキトーな相槌と愛想笑い」でやり過ごすものの、笑う場面ではないところで笑ってしまい「話、聞いてる?」と不審がられることも少なくない。

聴力に問題がないがゆえに、「集中力がない」「態度が悪い」と誤解されやすいこの症状。SNSで17万件もの「いいね」を集めた背景には、同じ苦しみを抱える人々からの切実な共感があった。

1対1なら大丈夫、でも1対多は難しい。好きで聞き返しているわけではない。こうした「見えないバリア」の存在を、本作は多くの読者に知らしめるきっかけとなった。

あえて「コメディ」で描く。読み手を肩肘張らせない、作者のこだわり

作者の雨桜あまおうさん自身も、聞き取る力が少々弱めだという背景がある。日本語が理解できない謎言語のように聞こえてしまう日常の感覚。それを漫画にする際、あえて「悲劇」ではなく「コメディ」という形を選んだ。

大変な生活=常につらくて深刻、という捉え方はあまり自分の作風に合わない。明るく軽やかに描くことで、読者が肩肘張らずに読めることを意識しました。

また、作中で言葉が聞き取れない部分に使用されている「ほにゃらら」とした文字表現も、読者の目を引く。続け字の書体を厳選し、「聞こえているけれど、言語として認識できない」という独特の感覚を視覚的に再現した。パッと見た瞬間に、当事者が感じている「もどかしさ」が伝わる仕掛けとなっている。

「世の中には、いろんな感覚の人がいる」という気づきを

橘を助ける親友・白川銀司は、声量や話すスピードが彼にとって「クリアに聞こえる」特別な存在だ。こうした身近な理解者の存在も、本作の温かな魅力となっている。

「世の中にはいろんな人がいて、いろんな感覚を持って生きているんだなぁ」と、誰かの日常に想いを馳せるきっかけになれば。そんな願いを込めつつも、雨桜さんは「読者それぞれの解釈で楽しんでほしい」と語る。

「知らなかった世界を知れた!」という好奇心でも、「自分も同じだ」という安心感でもいい。十人十色の受け取り方ができる本作は、現代社会における「聞こえの多様性」を優しく照らしている。

取材協力:雨桜あまおう(@amaousansan)

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