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「間違いなくアニメ史に名を残す」「完成度が高すぎ」“偉業を成し遂げた”歴史的名作…公開から17年“語り継がれる”完成度

  • 2026.2.10

新旧を問わず、見た人の心に残り続けるアニメがあります。熱量の高い支持を集めてきた作品には、時代を超える強さがあるのです。今回は、そんな“熱い支持を得る傑作アニメ”を5本セレクトしました。

本記事ではその第1弾として、『つみきのいえ』をご紹介します。第81回アカデミー賞にて短編アニメーション部門のオスカーを獲得し、12分という短さながらも見終わったあとに胸がいっぱいになる作品です。

※本記事は、筆者個人の感想をもとに作品選定・制作された記事です
※一部、ストーリーや役柄に関するネタバレを含みます

あらすじ

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※Google Geminiにて作成(イメージ)
  • 作品名:『つみきのいえ』
  • 公開日:2009年3月7日

海に沈みゆく町で、老人は増築を重ねた縦長の家にひとり暮らししていました。潮が満ちるたびに下の階が水没し、彼は上へ上へと生活を移してきたのです。ある日、老人は愛用のパイプを落としてしまい、潜水服をまとって沈んだ階へ降りていきます。

水中の部屋には、かつての食卓、子どものおもちゃ、家族の写真といった失われた日々の気配が残っていました。扉を開けるたびに、老人の記憶は妻や子どもたちと過ごした時間へとさかのぼり、喜びも痛みも波のように押し寄せます。やがて彼は、胸にしまっていた思い出を抱きしめ直し、再び今の暮らしへ戻っていくのでした。

セリフがなくとも伝わってくる老人の“人生”

『つみきのいえ』は、セリフがないにもかかわらず、老人の“人生”が伝わってくる表現力が見どころです。海面の上昇によって家が沈んでいき、老人が上へと住まいを増築していく設定によって、長い年月と失われたものの大きさが感じ取れます。

水の中にパイプを落としたのがきっかけで老人が水中の階へ降りていく場面は、本作の肝。沈んだ部屋は過去そのものであり、扉を開けるたびに彼が昔過ごした時間や家族との思い出がふっとよみがえり、私たちも一緒に記憶を潜っていけるのです。

とくに巧みなのは、淡い色彩と静かな音で老人の心の波を表現している点です。家族との幸せも別れの痛みも、言葉を使って説明するのではなく、視線や間で描いています。そして最後に残るのは、抱えた記憶とともに今を生きる老人の姿。人生が愛おしくなるような余韻が、大きな魅力となっています。

たったの“12分”で胸が満たされる

たったの12分という短さで構成された『つみきのいえ』は、第81回アカデミー賞にて短編アニメーション部門のオスカーを獲得しています。他にも、フランスのアヌシー国際アニメーションフェスティバルにて短編部門のグランプリや、第12回文化庁メディア芸術祭にてアニメーション部門の大賞を受賞するなど、数々の受賞歴があります。

『つみきのいえ』に対してSNSでは「納得」「間違いなくアニメ史に名を残す」「完成度が高すぎてびっくり」との声があがりました。短編ながらもすこし切なく、そしてあたたかい余韻を残す本作は、どのようにつくられたのでしょうか。総合IT情報サイト“ASCII.jp”のインタビューにて、本作の監督を務める加藤久仁生さんは、製作過程について以下のように語っています。

最初にビジュアルのイメージ画を描いたんです。積み木のような家が積み重なっているものなんですが、それを脚本家の平田研也さんに見せて「何か考えられないか」と。
イメージ画を見た平田さんが「沈んでいる家の層にはその時代の思い出が沈んでるんだ」という発想をして、そこから大まかなストーリーラインを考えてくれました。
出典:『加藤久仁生監督に聞く、ネットアニメの現在地』ASCII.jp 2009年2月6日

イメージ画を1枚描き、脚本家・平田研也さんと協力しながら物語を考えたとのこと。また、『つみきのいえ』は加藤監督と平田さんの2人によって、絵本として描きおろされています。クリーム色を基調とした水彩画ならではの風合いが、本作の持つやさしさをていねいに描き出しているのです。

『つみきのいえ』は、とくに長い人生を歩んできた大人が感動できる一作です。失ったものは戻らなくとも、記憶は確かに存在し続け、心をあたためてくれます。12分という短い時間で、きっとあなたの胸の奥を満たしてくれるでしょう。


ライター:まわる まがり
主にアニメについての記事を書くライター。コラムやレビュー、映画の作品評を手がける。X(旧Twitter):@kaku_magari