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クマ・イノシシなどの脅威をAIが自動判別!人里への侵入を防ぐAI撃退装置「アイデック」で農地と命を守る

  • 2026.1.30

全国でクマなどの野生動物が人里に頻繁に出没し、農作物被害のみならず住民への攻撃といった深刻な事態が相次いでいる。従来の人手による巡回や通報では出没の把握が遅れ、被害の拡大を未然に防ぐことは困難だった。この現状を打破すべく、株式会社ゼロフィールドはAIによるリアルタイムな「検知・通知・撃退」を可能にした新装置「アイデック」を開発。独自のAI技術で人と有害鳥獣を瞬時に識別し、音や光による自動威嚇で侵入を抑制するこのシステムは、農地と命を守る新たな切り札となり得るだろう。この記事では、そんな最新技術「アイデック」の特徴やポイントについて、担当者へのインタビューも交えて詳しく紹介する。

野生動物撃退システム AiDEC
野生動物撃退システム AiDEC

後付けAIで農地を鉄壁に。コストと手間を最小限に抑えた「アイデック」の強み

AIによる最新技術で野生動物の脅威から我々の生活を守ることができる「アイデック」。この技術の特徴として、現場の既存設備を最大限に活かしつつ、導入時の金銭的・物理的なハードルを極限まで下げた設計があげられる。

最新のAIシステムを導入する際、ネックとなるのが高価な専用カメラへの買い替えだ。しかし、アイデックはAI機能を搭載していない既存の監視カメラに、ゼロフィールドが開発した「AI検知・識別システム」を追加接続するだけで運用を開始できる。新たなカメラを購入する必要がないため、初期投資を大幅に抑えつつ、今ある設備を「最新の防衛拠点」へとアップグレードすることが可能となっている。

また、野生動物の侵入経路となる山林の境界線や広大な農地の端には、必ずしも電源があるとは限らない。そこで、アイデックは「オフグリッド」での稼働にも対応。電源の確保が難しい場所でも設置可能で、山間部や河川沿い、遠隔地といった従来の対策が困難だったエリアでも安定して稼働できるのが特徴である。

アイデックによる野生動物検知の瞬間
アイデックによる野生動物検知の瞬間

「脅威」だけを狙い撃ち。AIによる高精度な識別と撃退

本装置の中核を成すAIは、カメラ映像をリアルタイムで解析する。人や犬、猫といった危険度の低い存在は瞬時に識別して「脅威ではない」と判断し、通常の監視を継続する。一方で、クマ、イノシシ、鹿などの明確な脅威を検知したときのみ、システムが即座に防御態勢へと移行する仕組みだ。この高い識別精度により、近隣住民やペットへの不要な威嚇を防ぎつつ、守るべき場所を確実に防衛できる。

AIが脅威を検知すると、連動した装置から音や光による激しい威嚇が行われる。野生動物対策において最大の課題となるのが、同じ刺激を繰り返すことで動物が安全だと学習してしまう「慣れ」の問題。アイデックはこの対策として、音や光の出し方にランダムな演出を組み込んでいる。予測不能なパターンで威嚇を続けることで、クマやイノシシに「ここは危険な場所だ」と強く学習させ、持続的な侵入抑止効果を発揮する。

また、脅威を検知して撃退処置を行った際には、管理者のスマートフォンへリアルタイムで画像付きの通知が届く。これにより、離れた場所にいても「何が、いつ、どこに現れ、どう対処したか」を即座に確認できるのも、アイデックの大きな強みといえるだろう。

スマートフォンで映像の管理や保存もできる
スマートフォンで映像の管理や保存もできる

アイデックについて担当者へインタビュー!

――アイデック開発の際の困難や実現に向けて努力したことを教えてください。

開発初期の段階では、対象を検出する精度そのものについては、比較的早い段階で一定の水準に到達することができました。しかし、実際に現場で使える装置にするためには、検出精度以上に「誤検知をいかに抑えるか」が大きな課題でした。雪や雨、霧、夜間の光源の反射など、自然環境特有のノイズは想定以上に多く、単純な映像解析では誤検知を避けることができません。こうした環境下でも安定して判断できる仕組みを作ることが、開発における最大の壁でした。

また、実際に野生動物を対象とした検証では、こちらの都合よく鹿が現れてくれるわけではなく、検証自体が思うように進まないという、現場ならではの苦労もありました。実環境での検証を重ねながら、少しずつ実用性を高めていった点が、本装置の開発で最も時間と労力を要した部分です。

――本装置の特徴として「慣れを防ぐランダム演出」が挙げられていますが、具体的にどのような音や光のパターンがあるのでしょうか?また、長期的な運用において、同じ個体が繰り返し現れた際にも効果が持続した実証データや事例があれば教えてください。

本装置では、撃退・抑止を行う際の音や光の出し方を、毎回同じにならないよう変化させる仕組みを採用しています。単純に光を点ける、一定のリズムで点滅させるといった方法では、動物が刺激に慣れてしまい、長期的な効果が続きにくいことがわかっています。そのため、本装置では演出が繰り返されない設計を採用しました。具体的には、発光のタイミングや点滅の速さ、間隔などがその都度変わるため、動物にとって刺激のパターンが固定されず、慣れにくい構成となっています。また、音や光の強さ、間隔については、設置環境や対象に応じて調整できるようにしています。

弊社の地方にある検証拠点では、頻繁に出現していた鹿に対して本装置を設置し、繰り返し接近を抑止できていることを確認しています。実際の様子については、検証映像として公開しています。なお、装置設置後は鹿の出現頻度が大きく減少したため、同一個体に対する長期的なデータ取得が難しくなるという、想定外の苦労もありました。

――人や犬猫は「無害な存在」として識別し、クマやイノシシのみを撃退対象にされていますが、夜間や悪天候における識別精度はどの程度確保されているのでしょうか。

本装置では、検出対象を柔軟に設定できる設計としており、鹿などの野生動物を脅威対象とする一方で、人や犬・猫といった存在は明確に区別して認識し、無害な対象として判断しています。単に「対象外」とするのではなく、人は人として認識したうえで対応対象から除外することで、誤った威嚇動作を抑制しています。雨や雪、夜間の赤外線反射など、自然環境による映像ノイズへの対応は、開発において特に苦労した点のひとつであり、悪天候時における誤検出についても、可能な限り抑制する設計としています。

一方で、映像解析という仕組みの特性上、濃霧やレンズの汚れなどにより映像自体が判別できない状況では、判断が難しくなる場合もあります。そのため、検出感度や判断条件を設置環境に応じて調整できるようにしており、誤検出と検出漏れのバランスを現場ごとに最適化できる設計としています。

――AI非搭載の既存カメラに接続するだけで映像解析機能を付加できる、とのことですが、接続可能なカメラの規格に制限はありますか?

本装置は、AIをカメラ側に搭載するのではなく、既存のカメラ映像を後段で解析する構成を採用しています。一般的な映像配信方式に対応しており、各メーカーが仕様を開示しているカメラであれば、メーカーや機種を問わず幅広いカメラと接続が可能です。映像をネットワーク経由で受信できる環境であれば、有線・無線(Wi-Fi)を問わず利用でき、既存のネットワーク構成を活かした導入が可能です。

また、置き換えが難しいアナログカメラについても、数千円〜数万円程度の変換器を介して映像をデジタル信号に翻訳してインターネットに乗せることで導入できます。すでに設置されているカメラ設備や通信環境を活かしたまま、映像解析機能を追加できる点が、本装置の大きな特徴です。

――電源のない場所でも設置可能な「オフグリッド対応」とありますが、具体的にはソーラーパネルやバッテリーをどの程度のサイズで運用することになりますか?また、冬場の積雪時や日照時間が短い地域でも、リアルタイム検知・通知機能を安定して維持できる稼働時間の目安を教えてください。

オフグリッド対応については、社内検証環境において、ソーラーパネルやバッテリーを含むシステム一式を、ポールに取り付け可能なサイズで構成しています。現在の検証構成では、外部からの給電がない状態でも、約1週間程度の連続稼働が可能であることを確認しています。

一方で、豪雪地帯などでは積雪によりソーラーパネルが覆われると発電できなくなるため、設置角度や取り付け位置など、雪が溜まりにくい工夫が必要になります。日照時間が短い地域や季節における稼働時間については、バッテリー容量や構成を調整することで対応が可能です。サイズや重量とのバランスは考慮が必要ですが、設置環境に応じて柔軟に構成できる設計としています。

――読者へのメッセージをお願いします。

野生動物による被害に悩まされている農家や地域住民、企業の方々を少しでも助けたい、という想いも、本装置の開発の出発点のひとつです。現場では、人の手だけでは対応しきれない状況や、対策を続けること自体が大きな負担になっているケースも少なくありません。そうした現場の声に向き合いながら、技術を現場で本当に役立つ形にできないか、少しでも負担を減らし、新しい選択肢を届けられないかを考えています。野生動物被害でお困りの方は、まずはお気軽に当社にご相談ください。

――ありがとうございました。

AI野生動物撃退システム「アイデック」は、既存の設備を最大限に活用しながら確実な検知と撃退を可能にする、現場の負担を劇的に軽減する装置といえる。地方の検証拠点では、頻繁に出現していた鹿の接近を繰り返し抑止できた実例もあり、その確かな効果が実証されている。現在は自治体や農業関係者との協議が進められており、今後は現場導入を通じた検知精度や運用ノウハウのさらなる高度化を目指す方針だという。将来的にはこの技術を応用し、人の異常行動やトラブルの兆候検知など、野生動物対策以外の分野への展開も検討していくとのことで、その可能性は多岐にわたりそうだ。野生動物の被害に悩んでいる人は、ぜひチェックしてみてほしい。

文=栗原志穏

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