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パラスポーツが社会のこれからを変えていく。パラ競技団体合同プロジェクト「P.UNITED」の取り組みとは?

  • 2026.1.30

P.UNITEDは、車いすカーリングやパラ馬術など、8つのパラリンピック競技団体が連携して活動しているプロジェクトだ。競技ごとに抱えてきた運営の悩み、人材や資金の課題を共有しながら、各団体が続いていくための形を探ってきた。

P.UNITED・プロジェクトマネージャーの野口尚伸さん(左)と、プロモーションチームリーダーの河野正寿さん(右) 撮影=北村康行
P.UNITED・プロジェクトマネージャーの野口尚伸さん(左)と、プロモーションチームリーダーの河野正寿さん(右) 撮影=北村康行

今回は、プロジェクトマネージャーの野口尚伸さんと、プロモーションチームリーダーの河野正寿さんに、P.UNITEDが生まれた背景や横につながることで起きた変化、そしてパラスポーツの楽しみ方について話を聞いた。

なぜ8つの競技団体が合同で活動することとなったのか?

P.UNITEDは、車いすカーリングやパラ馬術、パラ射撃など、8つのパラスポーツ競技団体が連携して進めているプロジェクト。それぞれ競技は違っても、運営の現場で抱えてきた悩みには共通点があった。

プロジェクトマネージャーの野口さんは、初めて聞く人にも伝わるように、こんなふうに話してくれた。「P.UNITEDを構成してる8団体はどれも、一言で言うとマイナーなスポーツなんですね。運営をしていく中で、お金がなかったり、人材が不足したりという課題があって。じゃあそれをどう解決するかを考えた結果、8つの団体で連携して進めていこうということで3年前に立ち上がったプロジェクトがP.UNITEDです」

それぞれ独立した競技団体だが、抱えてきた課題は共通していた。そこで競技の違いを越えて知恵を持ち寄る動きが生まれた。

横につながることで生まれた変化

これまで各団体は、それぞれの場所で試行錯誤を続けてきた。P.UNITEDが始まってから変わったのは、悩みや工夫を共有できる相手が増えたことだ。

野口さんは言う。

「事務局同士で話ができるようになって、お互いの悩みを相談できるようになりました。『そのやり方、うちでもできそうだね』っていう気づきが生まれて、新しいことに取り組めるようになったのは大きいですね」

パラ射撃の試合の様子 (C)日本パラ射撃連盟
パラ射撃の試合の様子 (C)日本パラ射撃連盟

野口さんが印象的だった出来事として挙げたのが、テレビ朝日の取材が入ったことだ。

「正直、パラ射撃でテレビ取材が来るなんて、考えられなかったです」

8団体で連携する取り組みそのものが関心を集め、これまで表に出にくかった競技や活動が、より多くの人の目に触れるようになってきた。冬のスポーツ競技にとっては次の舞台を見据える時期に入っていることも、この動きを後押ししている。車いすカーリングなどでは、2026年のミラノ・コルティナ大会を意識した発信も少しずつ増えてきた。

 車いすカーリングの試合の様子 (C)一社日本車いすカーリング協会
車いすカーリングの試合の様子 (C)一社日本車いすカーリング協会

体験会がつくった、いちばん近い入口

P.UNITEDを知る入り口が普及体験会だ。競技に詳しい人だけのイベントではなく、通りがかった親子やなんとなく気になった人が、そのまま参加できる場を意識してきた。

プロモーションチームリーダーの河野さんは8団体で取り組む意味をこう話す。

「1団体だけだと、なかなか人を集めるのは難しい。でも8つの競技を一度に体験できるなら行ってみようかなと思ってもらえる。実際、集客も全然違いましたしSNSでも相乗効果がありました」

体験会イベント「パラスポーツ パーク」の様子 撮影=北村康行
体験会イベント「パラスポーツ パーク」の様子 撮影=北村康行

横浜で行われた体験会には、2日間で1000人近くが訪れた。印象に残っているのは、数字以上に会場で交わされた会話だと野口さんは振り返る。

「お子さんが『こういうスポーツもあるんだ』と知ってくれたり、車いすのお子さんが体験して『自分でもできるんだ』って感じてくれたり。そういう瞬間を見ると、やってよかったなと思います」

河野さんも、垣根をつくらなかったことで生まれた場面を覚えている。

「親御さんから『うちの子、馬に乗れるんですかね』『車いすカーリングできるんですかね』って聞かれることがあって。知らないだけで、選択肢が見えていなかったんだなと感じました」

「ちがいに気づく・おなじを見つける・未来と出会う」ための場づくり

体験会のテーマとして掲げているのが、「ちがいに気づく・おなじを見つける・未来と出会う」という言葉だ。

河野さんによると、ここでいう「ちがい」は、障がいの有無や競技の種類といったわかりやすい違いだけを指しているわけではない。動き方や感じ方、得意なことや苦手なこと。そうした一人ひとりの違いに気づくことが出発点になるという。

そのうえで、同じ競技を体験したり同じ空間で時間を過ごしたりする中で、「楽しい」「難しい」「やってみたい」といった感覚が重なっていく。そこに見えてくるのが、「おなじ」だ。

車いすに座って、パラ選手と同じ道具・環境で競技を体験できるのが体験会の醍醐味 撮影=北村康行
車いすに座って、パラ選手と同じ道具・環境で競技を体験できるのが体験会の醍醐味 撮影=北村康行

河野さんはこんなふうに話してくれた。「8団体が集まったからこそできることとして、競技の普及だけでなく、共生社会という言葉を、体験を通して具体的に感じてもらいたいと思っています。知的障がいの方に焦点を当てた体験も、そのひとつでした」

過去のパラスポーツイベントの様子 提供画像
過去のパラスポーツイベントの様子 提供画像

誰かに向けて答えを示すのではなく、同じ場所で体験し、会話が生まれる。その積み重ねの先に、それぞれが思い描く「未来」と出会っていく。そんな場をつくることが、このテーマに込められた意味だ。

見方が変わると、スポーツはもっと近くなる

パラスポーツをどう楽しむか。その話になると、具体的なエピソードが次々と挙がった。

河野さんが触れたのは、選手のバックボーンだった。競技の結果だけでなく、その背景を知ること。選手がどんな経緯で今の舞台に立っているのかを知ると、選手に思い入れを抱き競技の見え方が全然違ってくるという。

車いすカーリングの試合の様子 (C)一社日本車いすカーリング協会
車いすカーリングの試合の様子 (C)一社日本車いすカーリング協会

一方の野口さんは、「義足や車いすも、既製品をそのまま使っているわけじゃない。自分の体に合わせて考えて、調整して、一番力を出せる形を探しているんです」と、選手一人ひとりに合わせたギアに注目するとおもしろいと教えてくれた。

パラ射撃の試合の様子 (C)日本パラ射撃連盟
パラ射撃の試合の様子 (C)日本パラ射撃連盟

背景を知ること、工夫に目を向けること。パラスポーツの新たな見方を気づかせてくれた。

無理なく関われる未来へ

P.UNITEDが目指しているのは、大きな理想を掲げることより、続けられる形をつくることだ。その姿勢は、2026年1月17日(土)・18日(日)にお台場で開かれたイベント「パラスポーツ パーク」にも表れていた。東京国際交流館プラザ平成を会場に、8つの競技が並び、体験や展示、トークイベントが行われた2日間。入場無料ということもあり、親子連れの姿も多く見られた。

パリ2024パラリンピック日本代表の竹守彪(たけもりたけし)選手も、参加者と一緒にプレーしていた 撮影=北村康行
パリ2024パラリンピック日本代表の竹守彪(たけもりたけし)選手も、参加者と一緒にプレーしていた 撮影=北村康行

子どもがスタンプラリーを片手に競技を巡り、初めて触れる用具に目を輝かせる。その様子を、少し離れたところで見守る親の姿もあった。通りがかった人がそのまま足を止め、気になった競技をのぞき込み、そのまま体験していく。会場には、誰かに勧められて来たというより、偶然の出会いから参加した人たちが自然に混ざり合っていた。

野口さんは、こうした場づくりを続けていきたいと話す。

「このつながりを続けながら、競技団体の運営としても新しい形を示していけたらと思っています」

河野さんは、障がいのある人との接し方に感じる迷いにも触れる。

「どこまで手を差し伸べていいのか、迷う気持ちは誰にでもある。その迷いや体験を共有して、障がい者も健常者も共に生きる社会を少しずつ具体化していけたらと思います」

車いすカーリングは、3月に開催されるミラノ・コルティナ冬季パラリンピックに出場が決定している注目競技 撮影=北村康行
車いすカーリングは、3月に開催されるミラノ・コルティナ冬季パラリンピックに出場が決定している注目競技 撮影=北村康行
パラ・パワーリフティングは、ほとんどのクラスで健常者と同等のルールで行われる。その世界記録は、310キログラムで健常者の記録を上まっているというから驚きだ 撮影=北村康行
パラ・パワーリフティングは、ほとんどのクラスで健常者と同等のルールで行われる。その世界記録は、310キログラムで健常者の記録を上まっているというから驚きだ 撮影=北村康行
パラ射撃は、一点集中で自分と向き合う究極のメンタルスポーツ。体験用のライフルは、ビーム式になっている 撮影=北村康行
パラ射撃は、一点集中で自分と向き合う究極のメンタルスポーツ。体験用のライフルは、ビーム式になっている 撮影=北村康行

競技を知るきっかけも、関わり方の距離感も、人それぞれでいい。P.UNITEDの活動は、特別な人だけのものではない。気になったら知る、近くでやっていたら立ち寄る。そんな自然な関わり方が、これからも続いていく。

取材=澤田麻依、取材・文・撮影=北村康行

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