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「AIと法」研究者・太田勝造教授が語る3つの見どころ『MERCY/マーシー AI裁判』解説映像も到着

  • 2026.1.29

クリス・プラットやレベッカ・ファーガソンらスター俳優を迎え、近未来を舞台に繰り広げられるリアルタイムリミット型アクションスリラー『MERCY/マーシー AI裁判』。1月23日から公開中の本作より、明治大学法学部の教授で「AIと法」研究の第一人者として知られる太田勝造教授から推奨コメントが到着。あわせて特別映像が公開された。

【写真を見る】法廷画家、小野眞智子によるレイヴン刑事の裁判の様子

監督は、サンダンス映画祭で観客賞を受賞した映画『search/サーチ』(18)の仕掛け人であるティムール・ベクマンベトフ、プロデューサーを、アカデミー賞作品賞受賞の大ヒット作『オッペンハイマー』(24)や『ダークナイト』(08)を手掛けたチャールズ・ローヴェンが務める本作。物語の舞台は凶悪犯罪が増加し、厳格な治安統制のためにAIが司法を担うことになった近未来。ある日、敏腕刑事のレイヴンが目を覚ますと、妻殺しの容疑でマーシー裁判所に拘束されていた。冤罪を主張する彼だったが、覚えているのは事件前の断片的な記憶のみ。自らの無実を証明するには、AIが支配する世界中のデーターベースから証拠を集め、さらにはAI裁判官が算出する“有罪率”を規定値まで下げなくてはならない。無罪証明までの制限時間は90分。証明できなければ即処刑されてしまう。

“妻殺し”の容疑者にプラット、AI裁判官にファーガソンを迎え、AIが人類を裁く近未来を舞台に極限状態の法廷バトルを描く本作は、先日日米で同時公開を迎え、北米初登場1位、日本でも洋画実写初登場1位となった。監視カメラ、携帯電話の位置情報、SNSの投稿履歴──私たちの生活から日々生成される膨大なビッグデータ。それらが捜査や裁判に活用される時代は、もはやSFではなく現実のものとなっている。

そんな"AI裁判"の可能性と危険性を鮮烈に描きだし世界中に警鐘を鳴らす本作を、太田教授は「エンタテインメントとして95点。法的なリアリティとしては85点」と高く評価。「学生たちのゼミで使いたい、優れた教材だ」と絶賛のコメントを寄せている。本作は単なるエンタテインメントに留まらず、現代社会が直面する根源的な問いを投げかける。死刑執行後に再審で無罪とわかっても取り返しがつかないという究極の問題、無罪の推定や弁護人の権利の重要性、そしてAIと人間、どちらが裁きを下すべきなのか。新たに公開された主演のプラットによる解説映像から知ることができる“エンタテインメント”と“近未来の法的なリアリティ”の融合を実現させた制作の裏側と強く結びつく、AI時代を迎えた現代人が気づきを得るために必須の視点が語られた。

本作では、容疑者が無罪証明のための証拠として活用するために、AIが支配するビッグデータを革新的な映像表現でスクリーン上に表現する。AI裁判の要になるのは“データ”であり、プラットは「監視カメラもビデオ通話もメールもデータはすべて撮影した」と明かし、実際に現代社会に存在するあらゆる機材が撮影現場に投入されている様子が解説映像に映しだされる。ドライブレコーダーやボディカメラ、アクションカメラやスマホや玄関カメラもすべてが対象であり、プラットが「現代社会はどこでも映像が撮れる。ドローンも使った。IMAXカメラも。台数も定かではない。常時すべてを撮影されていた」と振り返るように、最新の撮影技術も取り入れながら作中で描かれる職務中のレイヴン刑事が激しく駆け回る姿や、息をのむダイナミックなアクション、そしてビデオ通話に向ける繊細な表情まで、データとして収集され、AI裁判官マドックスによって制限時間90分で執り行われる裁判に、無罪を証明するための証拠として使用される。緊迫感あふれる映像表現とリアルタイムリミット型で描く容疑者 vs AI裁判官の闘いは、果たして、現代人にどのような気づきをもたらすことになるのだろうか?

本作について、太田教授は3の見どころをプッシュ。まず一つ目は、「ビッグデータ捜査の"現実"を描いた、驚くべきリアリティ」だ。本作の舞台となるのは、AIが膨大なデータを収集、解析し、裁判で利用する近未来。しかし太田教授が指摘するように、これは決して遠い未来の話ではない。太田教授が特に注目したのは、「やはり『データ』ですね。いまも監視カメラや携帯電話などのデータとかが集められています。もちろん、本人の同意なしに収集したり、勝手に中に入って見たりしていいかというのは別の問題で、実際は令状なしではできませんが、とはいえ昔とは警察の捜査も全然変わって来ていますよね。それらを集約する形で裁判をするというのが、非常にリアリティがあるかなと思いましたね」と語る。

次に推すのは、「『理想の人間 vs 現実のAI』ではなく『現実の人間 vs 現実のAI』を描く誠実さ」。AI裁判を題材にした作品は数多く存在するが、本作が際立っているのは、その比較の公平性にあるという。太田教授は「よく『AI裁判官 vs 人間の裁判官』と比較されますが、その時によく陥る間違いがあって。それはなにかと言うと、『人間の裁判官は慈悲があって、優しくて、間違いが少なくて、気持ちが通じる理想化された生身の裁判官』で、それに対して『AIは冷徹で間違いも犯す人情を排除する』という比較をしがちです。でも現実には、人間の裁判官にもいろんな人がいて、いっぱい間違えているし、お腹も空くし、誤魔化しもするし、人の心を理解しない人もいないわけではない。だから『現実的なAI』と『理想の人間』を比べるのは議論として間違いで、『現実の人間』と『現実のAI』を比較して議論しないといけないんです」と、本作で描かれる挑戦的なテーマを掘り下げる。

3つ目として挙げたのは、「なぜ弁護人が必要なのか」「なぜ無罪の推定が必要なのか」という法の本質を問う点。太田教授は、本作が「ゼミのテーマに最適」だと大プッシュする。その理由は、この物語が意図的に現行の法制度にある重要な要素を省いているからだ。「おそらく、きちんと弁護士や法律専門家のアドバイスを受けているなというのがわかると同時に、あえて『無罪の推定』や『弁護人に代理される権利』のところを省いているんだなというのがわかります。それは逆を突けば、作品で欠けている要素に注目し、実際の裁判にある要素と比較することで、『なぜ弁護人が必要なのか』『なぜ無罪の推定が必要なのか』『検察側証拠の事前全面開示の必要性』『対審構造の原則』『裁判の公開』といった、この作品で省かれているものと現在あるものとを比較してそれらの意義や将来的に進む方向、残すべきものを考えてほしい。そのための教材としてすごくいいと思いました」と、死刑執行後に再審で無罪とわかっても取り返しがつかない、この究極の問題を通じて、本作は法の手続きが持つ意味、人権保障の重要性を浮き彫りにする。エンタテインメントとして楽しみながら、同時に深い思考を促すことを指摘。さらには本作について、「"隠れたシンギュラリティ(AIが人間の知能を超え自律的に進化し始めること)"が描かれている」と鋭いコメントを寄せた。

“無罪証明”までの制限時間90分を予測不能な展開で描き、衝撃の結末へ観る者を導くリアルタイムリミット型アクションスリラー『MERCY/マーシー AI裁判』。「AIと法」研究者も推奨する、すぐそこに迫るAI時代のリアリティを圧倒的没入感で描く本作を見逃すな!

文/サンクレイオ翼

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