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コーヒーで旅する日本/関東編|おいしさから伝わる焙煎士の魅力。「オトナリ珈琲」が教えてくれる、あなた好みのコーヒー

  • 2026.1.28

全国的に盛り上がりを見せるコーヒーシーン。飲食店という枠を超え、さまざまなライフスタイルやカルチャーと溶け合っている。なかでも関東エリアは、伝統的な喫茶店から最先端のカフェまで、さまざまなスタイルの店が共存する、まさに日本のコーヒー文化の中心地。

東京をはじめ、関東近郊にある注目店を紹介する当連載。焙煎士や店主たちが教える“今、注目すべき”ショップをつなぐ、コーヒーリレーの旅へ。

「海文堂」の建物の2階。コインランドリーの店前に立つ小さな看板を目印に
「海文堂」の建物の2階。コインランドリーの店前に立つ小さな看板を目印に

第16回は東京都千代田区にある「オトナリ珈琲」。神保町の路地裏、コインランドリーの2階に店を構える喫茶店だ。店主のしば田ゆきさんは大学時代にオーストラリアを訪れ、現地のコーヒー文化に触れたことからバリスタを志すように。都内の焙煎屋勤務を経て、2021年に同店を開業。店では全国各地から選び抜いた焙煎屋の豆をそろえ、2カ月ごとに入れ替える独自のシステムを採用している。

ここは単にコーヒーを提供するのではなく、店主が自信を持って選んだ豆を焙煎士の魅力とともに伝えるための場所。今回は開業までのエピソード、そして店主が伝えたいコーヒーの“それぞれの人に合ったおいしさ”を聞いてみた。

店主のしば田ゆきさん。大学在学中には「タリーズコーヒー」で働いた経験も
店主のしば田ゆきさん。大学在学中には「タリーズコーヒー」で働いた経験も

Profile|しば田ゆき(しばた・ゆき)

大学在学時、ワーキングホリデーでオーストラリアに1年間滞在し、現地のカフェ文化に触れたのが店を開業するきっかけ。大学を卒業後は一般企業に就職したのち、コーヒーの世界へ。勤務した「百塔(ひゃくとう)珈琲 Shimofuri」(豊島区駒込)では店長を勤め、退職後の2020年に自身のオンラインショップを開設。豆の販売に加えて、同サイト内に「プロのフィルターを通した選りすぐりの焙煎士」を伝えるために焙煎士を取材し、紹介する記事を公開。2021年に神保町に「オトナリ珈琲」を開業した。

伝えたいのは“それぞれ”のおいしさ

東京や大阪、福岡などエリア問わず、日本全国から焙煎士を探す。取材時(2025年12月)は大阪「aoma coffee」の豆が並んでいた
東京や大阪、福岡などエリア問わず、日本全国から焙煎士を探す。取材時(2025年12月)は大阪「aoma coffee」の豆が並んでいた

しば田さんを一気にコーヒー好きにしたオーストラリアは言わずと知れたコーヒーの聖地。日常に溶け込むようにカフェが点在するコーヒーの街で、滞在中は毎日のようにカフェに通っていた。

「オーストラリアは街中にいくつものカフェがあって日常に欠かせないもの。日本にはない本場のカフェ文化に触れられたのはいい経験でした。よくカフェラテを飲んでいたのですが、当時の日本では味わえないおいしさでしたね。何気ないことですが、このコーヒー体験が『私がやりたいことはコーヒーなんだな』という思いを明確にしてくれました」

2026年1月から「AMBER DROP COFFEE ROASTERS」の豆をそろえ、2月末まで販売
2026年1月から「AMBER DROP COFFEE ROASTERS」の豆をそろえ、2月末まで販売

大学卒業後は一般企業に勤めたのち、コーヒーの世界へと足を踏み入れることとなる。そんななかで、ある思いが生まれたのもこの時期。

「豊島区駒込の『百塔珈琲 Shimofuri』で店長をしていました。このお店では普段の営業でコーヒーを淹れるのはもちろんですが、大会に出場したり、審査員をやらせてもらったり、そんな経験もあって、コーヒーの技術が高められた時期でした。そして日々コーヒーと向き合うなかで、焙煎の技術を知ってほしいという思いが生まれ、現在のお店のテーマにもつながっていきました」

「ラムラテ」(HOT850円※アルコール入り)。「プリン」(550円)など手づくりのスイーツも人気
「ラムラテ」(HOT850円※アルコール入り)。「プリン」(550円)など手づくりのスイーツも人気

その後、「百塔珈琲 Shimofuri」を退職して2020年に自身のサイトを立ち上げ、オンラインショップを開始したしば田さん。ここでは全国から厳選したコーヒー豆を販売。同時に焙煎士を取材し、サイト内で紹介する取り組みをスタートさせた。

店内に置かれた「月刊オトナリ」。直筆のコラムに加え、本好きのしば田さんが教える“最近読んでいる本”の情報も
店内に置かれた「月刊オトナリ」。直筆のコラムに加え、本好きのしば田さんが教える“最近読んでいる本”の情報も

「焙煎士を知ってほしい、またさまざまな焙煎士が焼いた豆を飲み比べしたいという思いがあって、これがオンラインショップを立ち上げたきっかけです。コーヒー業界を経験して思ったのは、コーヒーブームにより焙煎士が増加傾向にあって、業界全体のバランスが崩れる可能性もあるということ。そんななかでおいしさを見極める目利き役が必要だと感じました。今の時代だとSNSで映えるのがいいという風潮があるが、それがいいとは限らない。例えば『さかい珈琲』は映えは狙っていないけれど、生豆の選定の技術を持ち、質の高い焙煎をしています。そんなすてきなお店をぜひ知ってほしいと思っています」

【写真】コインランドリー内の階段が入口。焙煎士との信頼関係を築き、訪れた人に最適な一杯をおすすめする「コーヒーの酒屋さん」のような店を目指している
【写真】コインランドリー内の階段が入口。焙煎士との信頼関係を築き、訪れた人に最適な一杯をおすすめする「コーヒーの酒屋さん」のような店を目指している
都会だけどどこかノスタルジックな街・神保町と、店の雰囲気が見事にマッチ
都会だけどどこかノスタルジックな街・神保町と、店の雰囲気が見事にマッチ

コーヒーへの熱い思いを胸に2021年に実店舗の開業を果たした、しば田さん。店はコインランドリーの奥にある階段を登った先、まさに隠れた名喫茶だ。建物は築60年以上。剥き出しの梁、すりガラスの窓などがある昭和レトロな空間には、あえて不ぞろいの家具を配置。しば田さんのセンスが光る店内の雰囲気も魅力となっている。

地道な抽出の繰り返しがおいしさへの最適解

約6種類のドリッパーを駆使して、豆の味わいが最も出せる抽出方法を見つける
約6種類のドリッパーを駆使して、豆の味わいが最も出せる抽出方法を見つける

「取り扱う豆は2カ月ごとに変えています。フェスやイベントで出会った方だったり、知り合いからの口コミだったり、いろんな見つけ方がありますが、紹介するうえで大切にしているのは自分自身がおいしいと思えるか。そして焙煎士の魅力、焙煎に対する考えに納得したうえでセレクトしています。基本はシングルオリジン3種類、エスプレッソ1種類。豆の種類や焼き方は焙煎士の方にお任せしています。それが豆のよさが出たベストな状態だと思うので」

「コーヒー」(HOT800円)※撮影時は「aoma coffee」のエルサルバドル産の豆を使用
「コーヒー」(HOT800円)※撮影時は「aoma coffee」のエルサルバドル産の豆を使用

「私自身のモットーとして、人それぞれに合ったコーヒーを選びたいという思いがあります。お客様からおすすめを聞かれることがあるんですが、そんなときは、まずはその方の好みを聞いて最適な豆を選ぶようにしています。好みは人それぞれですから、お店のおすすめより、それぞれが“合う”と思うものがいいかなと」

サイズや穴の形状など、それぞれ異なるドリッパーを用意
サイズや穴の形状など、それぞれ異なるドリッパーを用意

厳選した豆のおいしさを最大限に出すため、重要になってくるのが抽出。豆により異なるが基本はハンドドリップ。ハリオV60、ORIGAMI、クレバードリッパー、エアロプレスといった約6種類のドリッパーを用意し、提供までに試行錯誤を重ね、最適な抽出方法を探している。

「豆が変われば抽出方法が変わるのは当然。ドリッパーの形状だけでなく、豆によってはリンス(※フィルターを湯通しすること)しないほうがよいがよいものもあったり。また豆の状態は日々違うのでグラム数やお湯の量をはじめ、都度微調整が必要になってくるので大変な作業です。でも自分で選んだ豆ですから、最適な抽出方法を見つけて、しっかりとおいしさが伝わればうれしいですね」

ノートには今までやりとりした焙煎士の魅力が細かく書かれている。「さかい珈琲」もそのなかのひとつ
ノートには今までやりとりした焙煎士の魅力が細かく書かれている。「さかい珈琲」もそのなかのひとつ

優れた焙煎士を見極め、本物の豆を楽しませてくれる「オトナリ珈琲」。店を訪れた際は、ぜひ焙煎士の魅力を伝えるためのノートを手にとってみてほしい。今後はページもさらに増えていき、好みに合うコーヒーがきっと見つけられるはずだ。

訪れたときのギャップを楽しんでほしいと、某サイトであえて評価1と低く付けてもらうユニークな取り組みも
訪れたときのギャップを楽しんでほしいと、某サイトであえて評価1と低く付けてもらうユニークな取り組みも

【しば田さんレコメンドのコーヒーショップは「salad day coffee」】

「東京都台東区にある『salad day coffee(サラダ デイ コーヒー)』。店主の宮村さんの個性が“染み込んでいる”焙煎喫茶店です。ご自身で買い付けた豆を焙煎したり、珈琲屋を集めてカッピングイベントなども行っています。お店はいつ行っても馴染みの方であふれていて、音楽好きの宮村さんとのお話を静かに楽しむお客さんが集まる、カルチャースポットとしての一面もすてき」(しば田さん)

【「オトナリ珈琲」のコーヒーデータ】

●抽出/ハンドドリップ(ハリオV60、たらちね、ORIGAMI、クレバードリッパー、CAFEC、カリタウェーブ)、エスプレッソマシン(シモネリ、ラ マルゾッコ)

●焙煎度合い/浅煎り〜深煎り※豆の種類により異なる

●テイクアウト/あり(680円〜)

●豆の販売/100グラム1,100円〜※豆の種類により異なる

取材・文/GAKU(のららいと)

撮影/大野博之(FAKE.)

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