1. トップ
  2. 『旅の終わりのたからもの』山崎まどかが語るレナ・ダナムの魅力「とにかく、人の気を逸らさない方」

『旅の終わりのたからもの』山崎まどかが語るレナ・ダナムの魅力「とにかく、人の気を逸らさない方」

  • 2026.1.27

1991年のポーランドを舞台に、NY育ちの娘と、ホロコーストを生き延び、約50年ぶりに祖国に戻った父が繰り広げる珠玉のロードムービー『旅の終わりのたからもの』(公開中)。本作で娘ルーシー役を演じたのが、テレビシリーズ「GIRLS/ガールズ」の製作、主演、監督、脚本を務めたレナ・ダナムだ。そんなダナムの著書「ありがちな女じゃない」の翻訳を担当し、本人とも親交があるコラムニストの山崎まどかが、ダナムについて語ったインタビューを独占入手した。

【写真を見る】テレビシリーズ「GIRLS/ガールズ」の製作、主演、監督、脚本を務めた才能あふれるレナ・ダナム

原作はオーストラリアの著名な作家、リリー・ブレットが実体験をもとに書き上げた小説「Too Many Men」。ダナム演じるルーシーは、NYで生まれ育ち、ジャーナリストとして成功しているが、どこか心が満たされていない。その心の穴を埋めるべく、自身のルーツを探そうと、父エデクとともに、父の故郷ポーランドへの旅行を決行。2人の旅では、エデクが娘の計画をことごとく妨害し、かつてエデク一家が住んでいた家を訪ねても、父と娘の気持ちはすれ違うばかりだ。その後、アウシュヴィッツ=ビルケナウ強制収容所を訪れた時、父は初めて、辛く痛ましい家族の記憶を語りはじめる。

 父と娘が家族のルーツをたどりポーランドを巡る珍道中を描く『旅の終わりのたからもの』 [c] 2024 SEVEN ELEPHANTS, KINGS&QUEENS FILMPRODUKTION, HAÏKU FILMS
父と娘が家族のルーツをたどりポーランドを巡る珍道中を描く『旅の終わりのたからもの』 [c] 2024 SEVEN ELEPHANTS, KINGS&QUEENS FILMPRODUKTION, HAÏKU FILMS

――山崎さんがレナ・ダナムを最初に知ったきっかけを教えてください。

「映画『タイニー・ファニチャー』が本国で話題だったとき、予告編を観て特別なものを感じました。ちょうど当時のインディ映画のムーブメント『マンブルコア』(デュプラス兄弟、ジョー・スワンバーグ、そしてグレタ・ガーウィグを輩出した)に興味を持っていろいろと観ていたところで、彼女はそのムーブメントの妹分という感じだったかと。まだ20代前半なのに本人が主演、脚本、監督の映画を作るなんてすごいし、予告を観ただけでもソーホーの実家だというアパートメントの構造を生かした画面設計がとても良くて、若い女性でウディ・アレンみたいなことをやる人が出てきたんだと思いました」

【写真を見る】テレビシリーズ「GIRLS/ガールズ」の製作、主演、監督、脚本を務めた才能あふれるレナ・ダナム [c] 2024 SEVEN ELEPHANTS, KINGS&QUEENS FILMPRODUKTION, HAÏKU FILMS
【写真を見る】テレビシリーズ「GIRLS/ガールズ」の製作、主演、監督、脚本を務めた才能あふれるレナ・ダナム [c] 2024 SEVEN ELEPHANTS, KINGS&QUEENS FILMPRODUKTION, HAÏKU FILMS

――彼女が手掛けた人気ドラマ「GIRLS/ガールズ」は、20代女性の飾らない姿を描き、“キラキラしていない「セックス・アンド・ザ・シティ」”として人気を博し、ゴールデン・グローブ賞を受賞しました。その後も彼女は、自身の体型や病気についての率直な発信や活動が女性の支持を集めていきましたね。

「それは20代のメランコリックで不安なところ、ナルシスティックでみっともないところ、甘ったれたところをさらけ出すようなスタイルで、かつ洗練されていました。すぐにHBOでショウランナー/主演のドラマが決まったと知って、彼女を追いかけていけばいまの時代が分かるという気がしたんです。でも思った以上にあっという間に“時代の寵児”になってしまいました。最初から注目度が高かった分、失態もいろいろと報じられて大変だったはずだけど、その成長の過程も余すところなく見せて、新しい女性アーティストの道を切り拓いていきました。きれいごとじゃない女性の日常や人生の機微を自分の体を張って表現しているところがすばらしいです」

第74回ベルリン国際映画祭ベルリン・スペシャル・ガラ作品で、トライベッカ映画祭2024 インターナショナル・ナラティブ・ナラティブ・コンペティション作品でもある [c] 2024 SEVEN ELEPHANTS, KINGS&QUEENS FILMPRODUKTION, HAÏKU FILMS
第74回ベルリン国際映画祭ベルリン・スペシャル・ガラ作品で、トライベッカ映画祭2024 インターナショナル・ナラティブ・ナラティブ・コンペティション作品でもある [c] 2024 SEVEN ELEPHANTS, KINGS&QUEENS FILMPRODUKTION, HAÏKU FILMS

――実際に会ってみて感じた、ダナムの「人となり」や印象的な言葉があれば教えてください。

「実際に彼女に会った人はみんな、彼女のことを好きになるというタイプです。レナと話していると、自分が世界の中心にいるような気がするといろいろな人が言っていますが、とにかく、人の気を逸らさない方です。私がレナのエッセイを翻訳していると言ったら、すぐにテーブルの向こうからこちらに駆け寄ってきて抱きしめてくれました。そういうことがわざとらしくなくできる人。ヘアメイクの女性を呼び止めて、『髪はこのままでもいいかなって思ったけれど、あなたが巻いてくれたらすごく可愛くなった!ありがとう』と言っていて。きっと撮影現場でもこんな感じなんだろうなと思いました」

父娘が旅の終わりに手に入れた、たからものとは? [c] 2024 SEVEN ELEPHANTS, KINGS&QUEENS FILMPRODUKTION, HAÏKU FILMS
父娘が旅の終わりに手に入れた、たからものとは? [c] 2024 SEVEN ELEPHANTS, KINGS&QUEENS FILMPRODUKTION, HAÏKU FILMS

―― 『旅の終わりのたからもの』では、効果のないダイエットに振り回され、別れた夫を忘れられずに意地を張るルーシー役を熱演。父ともぎくしゃくしてしまうダメな自分を真っ直ぐに見つめる不器用なルーシーだからこそ、大いに共感を呼びそうです。そんな葛藤をリアルに体現したダナムの印象や魅力についても聞かせてください。

「本作は、女優としてのレナ・ダナムの魅力を感じられる作品です。立派なキャリアウーマンのはずなのに、どこか大きな子どもみたいで、ふてくされた表情のなかに、ナイーヴな心が隠れています。直接口に出しては言わないけれど、妙に人に対して愛想のいい父親に苛立っている感じや、本当の彼を見つけてふれ合いたいと願っているのに叶わないという寂しい気持ちがニュアンスだけで伝わってきます。また、コメディの“間”の取り方がやっぱり上手だと思いました」

『旅の終わりのたからもの』は公開中 [c] 2024 SEVEN ELEPHANTS, KINGS&QUEENS FILMPRODUKTION, HAÏKU FILMS
『旅の終わりのたからもの』は公開中 [c] 2024 SEVEN ELEPHANTS, KINGS&QUEENS FILMPRODUKTION, HAÏKU FILMS

――これからのダナムに期待することや、見てみたいテーマはありますか?

「自身の監督作では、自分の作品に主演するというスタイルから一旦退いて、裏方に徹する方向性のようですが、中年や初老になってからの彼女を見せる『ガールズ』シリーズの続編みたいな作品も観てみたいです」

文/山崎伸子

元記事で読む
の記事をもっとみる