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ピンクもワンピースも嫌!!男でも女でもない私が「普通の女の子」を演じ続けた先で出会った“ノンバイナリー”という生き方【作者に聞く】

  • 2026.1.26
母から決められた「女の子」らしい服を着せられ、息苦しさを感じていた少女時代。 画像提供:桜木きぬ(@kinumanga)
母から決められた「女の子」らしい服を着せられ、息苦しさを感じていた少女時代。 画像提供:桜木きぬ(@kinumanga)

男はズボン、女はスカート。ランドセルは男の子が黒で、女の子は赤。かつて当たり前とされてきた性別による区分は、少しずつ揺らぎ始めている。しかし、男性・女性という二つの枠に当てはまらない性自認を持つ人々は、今もなお社会の性差に違和感や苦しさを抱え続けている。漫画家・桜木きぬさん(@kinumanga)が描いた『性別に振り回されたわたしの話~1981年生まれのノンバイナリー~』は、そうした生きづらさを自身の半生として描いた作品だ。

男でも女でもないと気づくまで、名前のない違和感を抱えて生きてきた

第一話_001 画像提供:『性別に振り回されたわたしの話』(C)桜木きぬ/KADOKAWA
第一話_001 画像提供:『性別に振り回されたわたしの話』(C)桜木きぬ/KADOKAWA
第一話_002 画像提供:『性別に振り回されたわたしの話』(C)桜木きぬ/KADOKAWA
第一話_002 画像提供:『性別に振り回されたわたしの話』(C)桜木きぬ/KADOKAWA
第一話_003 画像提供:『性別に振り回されたわたしの話』(C)桜木きぬ/KADOKAWA
第一話_003 画像提供:『性別に振り回されたわたしの話』(C)桜木きぬ/KADOKAWA

人は生まれた瞬間に、外見によって「男」か「女」かを決められる。しかし成長の過程で、その区分に強い違和感を覚える人もいる。ノンバイナリーとは、男性と女性のどちらにも当てはまらない、あるいは両方に当てはまるなど、多様な性自認を含む言葉である。桜木さんもまた、自身の性別をどちらとも言い切れないまま成長してきた一人だ。

昭和の時代、「女の子らしさ」は強く求められていた。姉は赤、自分はピンク。祖母の作ったワンピースを着せられながらも、桜木さんはそこに押し付けられる「女の子という役割」に息苦しさを感じていたという。その違和感はやがて強い拒否感へと変わり、服を切り刻んでしまったことさえあった。

「女の子らしくしろ」と言われ続け、心を閉ざした幼少期

小学3年生のある日、限界を迎えた桜木さんはジーンズで登校する。すると周囲の女の子から注目を集め、その反応を見た父親から「女の子らしくしろ」「このままじゃろくな人間にならない」と強く叱責され、暴力を受けた。そこから桜木さんは、「普通の女の子」を演じることで自分を守るようになる。

将来の夢は「お花屋さん」「優しいお母さん」「かわいいお嫁さん」。本心とは異なる理想像を口にしながら、自分の気持ちにふたをして生きてきた。その無理は、思春期に入るとよりはっきりとした苦しさとなって表れる。体が女性らしく変化していくことへの嫌悪感、そして絶望。違和感は消えることなく、積み重なっていった。

40年目に出会った「ノンバイナリー」という言葉

40年近く「普通の女」として生きてきたある日、インターネットで偶然目にしたのが「ノンバイナリー」という言葉だった。その意味を知った瞬間、「これはまさに自分のことだ」と直感したという。一方で、すぐに受け入れられたわけではなかった。認めてしまえば、また差別や偏見にさらされるのではないかという不安も大きかったからだ。

それでも、否定し続けることにも限界を感じ、ぎりぎりのところで自分の性自認を受け入れたと桜木さん。最初は「折れた」という感覚に近かったが、次第に心身の状態は落ち着き、少しずつ生きやすさを感じられるようになっていったという。

漫画では、そうしたつらい経験も特別な出来事としてではなく、あくまで淡々と描いている。それは「決して珍しい話ではない」という実感があるからだ。カミングアウト後、創作の現場では当事者の視点からノンバイナリーを題材に描けるようになり、読者の反応が大きく変わることもなかった。その事実に、桜木さん自身も安堵したという。

本作はダ・ヴィンチWebで人気を博し完結。女子と呼ばれることに違和感を覚え始めた小学生時代から、結婚を経てノンバイナリーという言葉に出会うまでの半生が、率直に描かれている。桜木さんはこの作品について、何かを劇的に変えたいわけではなく、「この時代、この世代にもこういう人がいた」という記録を残したかったのだと語る。その記録が、未来の誰かの研究や理解につながることを願って——。

取材協力:桜木きぬ(@kinumanga)

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