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聖地ルーマニアではテーマパークも建設!?2027年の130周年に向けて振り返りたいドラキュラの映画史

  • 2026.1.25

吸血鬼=ヴァンパイアを代表する存在として、高い人気と知名度を誇るドラキュラ。2025年にはリュック・ベッソン監督作『Dracula(原題)』がフランスで公開、ドラキュラ伝説の聖地ルーマニアでは「ドラキュラ・ランド」なるテーマパークの建設計画が発表された。1897年の原作発表から約130年、人々を魅了し続けるドラキュラのスクリーンにおける変遷を俯瞰してみたい。

【写真を見る】オールバックの髪型にタキシード、マントを纏ったミステリアスな東欧貴族というイメージを確立した『魔人ドラキュラ』

非公式作品ながら後世に影響を与えた『吸血鬼ノスフェラトゥ』

ドラキュラの最初の映画化とされているのが、1921年の『Drakula halála(ドラキュラの死)』だ。映画化権を取得せずハンガリー・オーストリアで製作された非公式作品で、フィルムも現存していない幻の作品。1922年公開のドイツ映画『吸血鬼ノスフェラトゥ』も権利の取得がかなわず非公式になった映画化で、ドラキュラ伯爵をオルロック伯爵にするなど人名や舞台を変更。一方で、朝日という弱点やヒロインが自らを犠牲にするなどオリジナル要素が盛り込まれ、個性的なキャラ造形や凝った撮影、ドイツ表現主義を取り入れたデザインワークも見応えがある。1979年と2024年には『ノスフェラトゥ』としてリメイクもされており、もはやオリジナル作品といっていいだろう。

ドラキュラ伯爵をオルロック伯爵にするなど人名や舞台を変更した非公式作品『吸血鬼ノスフェラトゥ』 [c]Everett Collection/AFLO
ドラキュラ伯爵をオルロック伯爵にするなど人名や舞台を変更した非公式作品『吸血鬼ノスフェラトゥ』 [c]Everett Collection/AFLO

ドラキュラのパブリックイメージを確立した『魔人ドラキュラ』

ドラキュラ映画の元祖というべき作品が、1931年のユニバーサル・スタジオ作品『魔人ドラキュラ』だ。本作のドラキュラは、オールバックの髪型にタキシード、マントを纏ったミステリアスな東欧貴族。それまで怪物的だった吸血鬼のイメージを一新し、現在まで続くパブリックイメージを確立した。主演は、本作の発端になったブロードウェイの舞台でドラキュラを演じたルーマニア移民の俳優ベラ・ルゴシ。芝居がかった振り付けと強い目力、訛りの強い口調が異国の貴族ドラキュラにいっそうのリアリティをプラスした。

【写真を見る】オールバックの髪型にタキシード、マントを纏ったミステリアスな東欧貴族というイメージを確立した『魔人ドラキュラ』 [c]Everett Collection/AFLO
【写真を見る】オールバックの髪型にタキシード、マントを纏ったミステリアスな東欧貴族というイメージを確立した『魔人ドラキュラ』 [c]Everett Collection/AFLO

ドラキュラのほか、不気味な小動物がうごめくクモの巣だらけのドラキュラ城のビジュアルも、以後のホラージャンルにおける古城のイメージとして定着。ヴァン・ヘルシング教授らが知識を武器にドラキュラに挑むチームプレイのおもしろさも、ジャンルを超えて普及した。映画は大ヒットし、ユニバーサルは『女ドラキュラ』(36)などオリジナルストーリーでシリーズ化。「フランケンシュタイン」や「狼男」などほかの映画シリーズとクロスオーバーしながらユニバースを形成するスタイルを含め、現在のエンタメ界に与えた功績は計り知れない。

ブロードウェイの舞台に続いてドラキュラをルーマニア移民の俳優ベラ・ルゴシが演じた(『魔人ドラキュラ』) [c]Everett Collection/AFLO
ブロードウェイの舞台に続いてドラキュラをルーマニア移民の俳優ベラ・ルゴシが演じた(『魔人ドラキュラ』) [c]Everett Collection/AFLO

クリストファー・リー&ピーター・カッシングの当たり役となったハマー・フィルム版

ユニバーサルが元祖とすれば、本家といえるのが英国ハマー・フィルムの『吸血鬼ドラキュラ』(58)である。ドラキュラ映画初のカラー作品である本作は、原作やルゴシ版のエッセンスを受け継ぎながら、威厳ある絶対的な存在としてドラキュラを活写。血走った眼や長い2本の犬歯などルゴシ版にはなかった要素も加わり、ここに現在も受け継がれているドラキュラ像が完成した。

激闘を繰り広げるドラキュラとヴァン・ヘルシング博士(『ドラキュラ’72』) [c]Everett Collection/AFLO
激闘を繰り広げるドラキュラとヴァン・ヘルシング博士(『ドラキュラ’72』) [c]Everett Collection/AFLO

セットや衣装、メイクなど作り込まれた世界観、大胆な色彩設計などビジュアル面もブラッシュアップ。価値観の変化も追い風になり、当時としては異例のバイオレンス&エロティックな描写が盛り込まれ、現在でも通用するエンタメ作に仕上がった。そんな本作でドラキュラを演じたのは、「ロード・オブ・ザ・リング」三部作の白のサルマンや「スター・ウォーズ」シリーズのドゥークー伯爵でおなじみクリストファー・リー。対するヘルシングを『スター・ウォーズ/新たなる希望(エピソード4)』(77)でモフ・ターキン総督を演じたピーター・カッシングが演じ、シリーズ化を通して彼らの当たり役になった。

太陽の光や聖水、十字架、銀、杭など意外と弱点も多い(『ドラキュラ’72』) [c]Everett Collection/AFLO
太陽の光や聖水、十字架、銀、杭など意外と弱点も多い(『ドラキュラ’72』) [c]Everett Collection/AFLO

時代と共にドラキュラ映画の在り方も変化

元祖を生んだユニバーサルは、1979年に『ドラキュラ』を復活させた。『魔人ドラキュラ』同様70年代後半にブロードウェイで火がついたドラキュラ人気に乗った映画化で、やはり舞台と同じフランク・ランジェラが主演。ハマー作品以降アイコンになった牙を着けず、セクシーな王子様としてドラキュラを演じ話題を呼んだ。

そんな本作のキモがドラキュラに魅入られたヒロイン、ルーシー(ケイト・ネリガン)の存在。ドラキュラへの積極的なアプローチや、その出会いをステップに男性優位の社会から脱却する姿は、70年代に活性化したウーマン・リブ、いわゆる女性解放運動の影響が見て取れる。耽美なテイストがファンの間で賛否を呼んだが、クリステン・スチュワートとロバート・パティンソン共演の「トワイライト」シリーズなど、その後のロマンス系吸血鬼映画の先駆けになった。

1979年にはコメディの文脈でドラキュラを復活させた『ドラキュラ都へ行く』も公開。ピンナップガールを求めNYに現れたドラキュラ(ジョージ・ハミルトン)のカルチャーギャップやマイノリティの孤独をベースにした物語で高い評価を獲得した。この年はドイツの鬼才ヴェルナー・ヘルツォークが『吸血鬼ノスフェラトゥ』を独自に解釈した先述のリメイク『ノスフェラトゥ』も登場し、オルロック役のクラウス・キンスキー、ヒロイン役のイザベル・アジャーニという顔ぶれを含め注目された。

コメディの文脈でドラキュラを復活させた『ドラキュラ都へ行く』 [c]Everett Collection/AFLO
コメディの文脈でドラキュラを復活させた『ドラキュラ都へ行く』 [c]Everett Collection/AFLO

ドラキュラのバックグラウンドや内面に迫った作品も

1992年公開の『ドラキュラ』は、ユニバーサルとハマーが作り上げたドラキュラとは一線を画した超大作だ。監督は幼い頃から原作に魅せられていた巨匠フランシス・フォード・コッポラで、原作をベースにドラキュラのモデルで“串刺し公”と呼ばれたルーマニア国王ヴラド3世(1431~1476年)のエピソードをプラス。聖軍を率いながら妻の死を機に神に反旗を翻し、邪悪な吸血鬼になった男の叙事詩に仕上げた。

巨匠フランシス・フォード・コッポラが映像化に挑んだ1992年公開の『ドラキュラ』 [c]Everett Collection/AFLO
巨匠フランシス・フォード・コッポラが映像化に挑んだ1992年公開の『ドラキュラ』 [c]Everett Collection/AFLO

ドラキュラ役のゲイリー・オールドマン、ミナ役のウィノナ・ライダー、ヘルシングのアンソニー・ホプキンスほか、キアヌ・リーヴスやモニカ・ベルッチなど豪華キャストが集結。オペラ調の演出や豪華絢爛なデザインワーク、エロティック&バイオレンスな描写を含めコッポラらしい濃厚な世界が味わえる。吸血鬼を主役に据え、その内面や苦悩を描くスタイルは『血の唇』(70)や『マーティン/呪われた吸血少年』(77)、97年版『ノスフェラトゥ』、『ニア・ダーク/月夜の出来事』(87)などそれまでも存在したが、本作と2年後の『インタビュー・ウィズ・ヴァンパイア』(94)の成功によってサブジャンルとして定着していく。

ドラキュラのモデルで“串刺し公”と呼ばれたルーマニア国王ヴラド3世のエピソードをプラス(『ドラキュラ』) [c]Everett Collection/AFLO
ドラキュラのモデルで“串刺し公”と呼ばれたルーマニア国王ヴラド3世のエピソードをプラス(『ドラキュラ』) [c]Everett Collection/AFLO

様々なヒネリを効かせて進化してきたドラキュラ映画

ほかにもクリストファー・リーが主演したイタリア映画『吸血のデアボリカ』(70)や『ダリオ・アルジェントのドラキュラ』(12)などドラキュラは何度も映画化されている。原作がパブリックドメインになった70年代以降は、ドラキュラが登場するオリジナル作品も数多く公開。ちびっこモンスター討伐隊が大活躍する『ドラキュリアン』(87)やヒュー・ジャックマンが武闘派ヘルシングを演じた『ヴァン・ヘルシング』(04)、ルーク・エヴァンス主演の串刺し公ヴラドの物語『ドラキュラZERO』(14)などヒネリを効かせた作品も少なくない。

近年の原作系では、ドラキュラの棺をロンドンへ運ぶ原作の第7章を1本の映画にした『ドラキュラ/デメテル号最期の航海』が2023年に登場。そして25年にリュック・ベッソンの『Dracula(原題)』がフランスで公開された。妻を亡くした中世ルーマニアの王が吸血鬼となり、19世紀のパリで亡き妻そっくりの女性と出会う――コッポラ版に通じる幻想的なドラマが繰り広げられる。ベッソンらしい映像美が味わえるそうなので、ぜひ日本でも公開してほしい。

リュック・ベッソン監督による新たなドラキュラ映画『Dracula(原題)』 [c]Everett Collection/AFLO
リュック・ベッソン監督による新たなドラキュラ映画『Dracula(原題)』 [c]Everett Collection/AFLO

来年2027年は原作の出版から130年という区切りの年。アニバーサリーイヤーに向け、ドラキュラのさらなる盛り上がりを期待したい。

文/神武団四郎

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