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「踏み外せば谷底…」バイクも入れない限界集落→郵便配達員が山奥で遭遇した“不思議な少女”の正体【作者に聞く】

  • 2026.1.25
バイクでは入れないほどの細い山道の先へは杖を使って歩いて登る。 送達ねこ(@jinjanosandou)
バイクでは入れないほどの細い山道の先へは杖を使って歩いて登る。 送達ねこ(@jinjanosandou)

「ああ、今日はいいお話を読んだなあ……」そんな余韻を残す感想が、静かに、しかし確かに広がった作品がある。郵便配達員が実際に体験した出来事をもとに描かれた「山に棲む」だ。読者からは「深夜ドラマで観たい」「幾重にも深い話」といった声に加え、「平凡な日常の中にも等しく“生きる重み”があることを教えられる」という共感の言葉も寄せられた。本作を描いたのは、現役郵便局員でもある送達ねこさん(@jinjanosandou)だ。

山の奥、その先に人が暮らしている限り

その先に民家があれば郵便局員はどこまでも行く 送達ねこ(@jinjanosandou)
その先に民家があれば郵便局員はどこまでも行く 送達ねこ(@jinjanosandou)
山に棲む_P02 送達ねこ(@jinjanosandou)
山に棲む_P02 送達ねこ(@jinjanosandou)
「杖」は足腰のために持って行くのではなかった! 送達ねこ(@jinjanosandou)
「杖」は足腰のために持って行くのではなかった! 送達ねこ(@jinjanosandou)

「踏み外せば谷底」――そんな言葉が冗談にならないほど、山深く細い道。その先に民家がある限り、郵便配達員は足を運ぶ。今回の主人公は、バイクすら入れない山道を担当することになった郵便配達員・N局のアラタさんだ。

都会育ちで、配達員になりたてだったアラタさんは、教育係の江藤さんに連れられ、「一般車両進入禁止」の道を歩いて集落へ向かうことになる。「こっからは歩きだ。上まで杖をついてく」若さゆえに杖を断ると、「足腰の話じゃねえ!蛇を追い払うんだ!」と一喝。「誰がジジイだ、東京もんは何も知らねえ」と怒鳴られ、「すみません…」と小さく謝るしかなかった。

その道中、アラタさんは着物姿でおかっぱ頭の少女を目にする。山の中で、場違いなほど静かに佇むその姿。しかし直後、江藤さんに思わぬ緊急事態が起こり、その違和感を深く考える暇もなくなってしまう。

「怖い」は“わからない”から生まれる感情

作中で描かれる江藤さんの厳しさについて、送達ねこさんは「怖さにはいろいろな種類がある」と語る。人は自分を守るために情報を集める。その中で「わからない」ものに出会うと、恐怖を感じることがある。それは霊的な存在に限らず、対人関係でも同じだ。「よくわからない人だから怖い」と感じ、避けたり、ときには攻撃的になることもある。傍から見ると嫌っているように見えても、根底にあるのは“理解できない”という不安なのだという。

しかし、送達ねこさんは続ける。「未知と出会うことは、その人にとって“足りない必要なもの”に触れる瞬間でもある」。怖いと感じた相手を理解しようとしたとき、関係が一変することがある。避けていた存在に惹かれていたことに気づく――それは、愛の本質にとても近い行為なのだ。

だからこそ、「怖い話」は、ときに「愛の物語」になる。本作が「深い」「いい話」と受け止められた理由も、そこにあるのだろう。作中には「昭和の田舎で語り継がれてきた怪談」も織り込まれており、祖父から父へ、父から子へと受け継がれる語りとして楽しめる構造になっている。

静かな余談と、思わず笑う読者の声

「郵便屋が集めた奇談」は、送達ねこさんのもとに寄せられた、同僚配達員たちの不思議な体験談を描いたシリーズだ。余談だが、本作では作中の江藤さんのビジュアルにも注目が集まり、「江藤さんの絵が強すぎて話が入ってこない」「3回読み返した」という声も。重層的な物語の中に、思わず肩の力が抜ける余白が用意されているのも、この作品の魅力だ。

取材協力:送達ねこ(@jinjanosandou)

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