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[Alexandros]川上洋平が「死」を意識して綴った2ndエッセイ『次幕』 40代を迎え、今こそ“自分をさらけ出す”理由

  • 2026.1.20

2025年12月25日(木)に、2冊目となるエッセイ本『次幕』をリリースした[Alexandros]・川上洋平さん。自身の半生をテーマにした前作『余拍』から3年――、満を持して登場する今作では、“現在(いま)”にフォーカスが当てられているのだとか。この記事では、そんな今作への想いをはじめ、たっぷりとお話を伺いました。本書内の気になるエピソードをさらに深掘った質問も多数……!既に『次幕』を読んだ人は、副音声的に楽しめること間違いなし!もちろんまだ『次幕』を手に取っていない人も要チェックです。

“現在”の川上洋平を映し出した取扱説明書的1冊

──まずは、今作『次幕』の執筆依頼が来たときのお気持ちについて伺えると嬉しいです。

川上洋平(以下、川上) 実は、「次書きましょうよ」って話は、僕から切り出したんです(笑)。前作『余拍』は依頼をいただいた形でしたが、そのときに“文章を書くことがすごく楽しいな”って気づいて。「またいつか書けたらいいですね」みたいな話はしていたので、その流れもあって、今作が実現しました。

──そうだったんですね!再びエッセイ本を執筆することに対する思いはいかがでしたか?

川上 前作は自分の半生をテーマにしていて、僕の軌跡を中心に書きました。そこからさらに、“現在(いま)”を切り取りたいなって気持ちが強くなってきて。だから今回は、とにかく今自分が思ってること、そして自分でも思ってるかどうか分からないようなことを、もっと掘り下げていきたいと考えました。さらけ出すような形で書き綴りたいなっていう思いがあったので、結構セラピーに近いかもしれません。

──前作の執筆をはじめ、「“現在(いま)”を切り取りたい」と思うようになったきっかけは他にもあったんでしょうか?

川上 音楽雑誌などでインタビューを受ける機会がよくあるんですけど、そこでは作品のことを中心に聞いていただくんです。歌詞の意味であったり、曲の雰囲気であったり、それを聞かれるのは当たり前のことではあるんですけど、一曲一曲にフォーカスするんじゃなくて、もっと幅広く掘り下げてほしいなという思いがずっとあったんです。

例えば、作曲の方法や歌詞の書き方、CDのジャケット、アートワーク周り……そういった全般的な自分の曲制作スタイルや、僕の内面まで掘り下げられたら、そこから何か見えてくるものもあるんだろうな、と思っていました。そういう気持ちが爆発して、「“現在(いま)”を切り取りたい」に繋がったように感じます。

川上洋平の次の幕開け…タイトルに込めた思いとは?

──前作に続き、今作のタイトルも印象的です。漢字違いで“字幕”という候補もあったそうですが、そのほかにも案は出ていたんでしょうか?

川上 候補は結構いろいろありましたね。でも“ジマク”という単語自体は、前作を作り終えるくらいのタイミングから浮かんでいたんです。それこそ前作のタイトルを『余拍』にするか『字幕』にするか悩んだくらいで。結局『余拍』を採用しましたが、単語はすごく気に入っていたので、今作でまた(“字幕”を)引っ張り出してきたという経緯があります。ただ、なんか“捻(ひね)りがないな”って(笑)。2冊目だし、これからの自分について書いているということで、『次幕』に決まりました。

──『余拍』もそうですが、言葉選びに遊び心を感じます。

川上 そうですね。『余拍』の“拍”も、『次幕』の“次”も、やっぱり少しだけ捻りたいって気持ちがあったからこそで、こだわりました。

──文章はもちろん、写真もたくさん差し込まれていて見どころ満載だなと思いました。川上さんご自身、特に思い入れのある1枚などはありますか?

川上 どれも素敵に撮っていただいているんですけど、一番僕が気になっているのは、この写真(93ページ)で……(笑)。ライブ会場に入るときの自分、偉そうだなって思いました。

──キャプションにも“気取ってやがる”って書いてますね(笑)。

川上 (笑)。こういう1枚、嫌いじゃないです。

──また、特に思い入れのある章についても教えてください。

川上 それに関しては全部かな。どの章もかなり濃い仕上がりになりました。だけどその中で一番むしろ濃くないのが、『私事の幕』で綴ったイギリス旅行記(笑)。僕と両親のイギリス旅行について書いたところです。これ、実は“連載から始めよう”っていう名残でもあって。

そういう(緩い)エピソードを集めた本にしようかなと思ってた頃に書いたので、最初は今作に入れるつもりはなかったんです。結局面白いんじゃない?ってことで入れてみましたが……。

──メリハリがあって、楽しく読めました。さてここまで伺ったように、本当にすごく幅広いトピックを扱われているなと思ったのですが、扱う上で大変だったことなどはありましたか?

川上 とにかく最初は、自分が書きたいかどうかも分からないものを吐き出していったんですよ。その上で“いや、これはいらないんじゃない?”みたいなことを、自分の中で吟味していきました。例えば、先ほど話題に出たイギリス旅行記や、マネージャーの話なんかは、本に入れるか・入れないか悩んだところ。周りに相談して、“面白いから入れよう”って方針には落ち着きましたが、ただエピソードとして話すだけだと弱いなって。だから“そのエピソードを通して何が見れるんだろう?”ということを途中から考えました。

川上 マネージャーについて書いた後は、そのマネージャーから見た僕についても書いてみたり……。自分の想像で綴っているので、実際に彼らがどう思っているかは分からないですが、ただのマネージャーの話に終始しないよう意識しました。僕の本なので、彼らを通して川上洋平のことを読み解けるような書き方にしていきました。

洋楽からJPOPまで!多彩な音楽遍歴に迫る

──「前作を通して作詞への考え方が変わってきた」という旨が綴られていましたが、改めてその変化について伺えたら嬉しいです。

川上余拍』を経て、自分なりのものの書き方が掴めたように思います。昨年出した『PROVOKE』というアルバムは、割と『余拍』を書いた影響がすごく反映されているんです。今作にも書きましたが、自分の何気ないメモ書きのようなところから始まっていった曲が多いですね。そうやって書けばいいんだなって気づきました。

──今話題に上がった『PROVOKE』ですが、リリースされた際、今が“バンド活動の中盤”と表現していたかと思います。後半に向けての意気込みなどはありますか?

川上 徹底的に好き勝手やりたいなと思ったときに、じゃあその好き勝手ってなんだろう?と考えました。行き当たりばったり、その日に思いついたものをそのまま音楽にしたためるのではなくて、好き勝手だからこそ、本当にこれは自分のやりたいことなのかをちゃんと見極めてから、これからは作っていきたい。丁寧にじっくり作っていきたいなというフェーズに入りましたね。

川上 それこそ今までは、初期衝動的に、思いついたものをそのまま曲にしていて。それもすごく素敵なんだけど、後から“もう少しああしたら良かったかも”と思うことが結構多かったんです。後悔とはまた違いますが、なるべくそういう思いが残らないような作り方をしていきたい。そう考えるようになったのは、やっぱり40を過ぎて死というものを意識し始めたからだなと感じます。自分がいつ死んでもいいように、いつまでも作品は生き続けていけるように、作っていきたいです。

──今作の内容をさらに詳しく深掘っていきたいのですが、個人的に特に印象に残っているのが『創造の幕』。「いつから始まった?の幕」で、小3の頃のバラードの記憶に触れられているかと思います。どこからインスピレーションを得ていたのか、覚えてる範囲で伺えますか?

川上 当時シリアに住んでいて、日本のテレビ番組はもちろん映りませんでした。でも紅白歌合戦や音楽番組の録画動画だけは、毎年VHSで送られてきたんです。そこに映っていた演歌歌手の歌唱姿をなんとなく想像していた気がしますね。本書にも書いた通り、自分のオリジナルバラードなので、曲調は全く演歌ではなかったですが……。

──あともう一つ、Mr. Childrenの曲を翻訳したエピソードも登場していました。改めて、英語と日本語それぞれの捉え方についても教えてください。

川上 あんまり(英語と日本語を)分けて考えていなくて。帰国子女って日本語を話しているときに、たまに英語が混ざったりするじゃないですか。あの感覚で、普段から歌詞も書いています。

川上 僕の曲の歌い出しって英語が多いんですけど、それは鼻歌をもとに作っているから。鼻歌のときは英語が多いんです。その名残を消さないように、英語と日本語それぞれを歌詞にしたためるようにしています。

──クリエイティブの起源として挙げられたこの2つのエピソード(小3のバラード、Mr. Children楽曲の翻訳)は、シリアにいらっしゃった頃のお話かと思います。シリアに行く前の音楽遍歴なども伺ってみたいです。どんな音楽に影響を受けられたんでしょう?

川上 やっぱり兄と姉の影響が結構強いと思いますね。例えば、兄は洋楽がすごく好きで。シリアに行く前から、洋楽をたくさん聴いている彼を横で見ていたので、その頃から“洋楽のエキス”みたいなものは、自分に入り込んでいたように思います。

一方で、姉はJ-POPがすごく好きだったんですよ。それこそMr. Childrenの曲の翻訳エピソードで出てきた『Tomorrow never knows』も姉が教えてくれた一曲です。こんな感じで、兄・姉の両者からそれぞれ洋楽とJPOPの良さを教えてもらったのは、自分の中で大きいです。あとはアニソンも好きでした。『ちびまる子ちゃん』とか『パプアくん』とか、今聴いてもグッときちゃいます。

最近のファッション事情は“モード×ストリート”

──「所有というより育成」のあたりも興味深かったんですが、楽器やインテリアをはじめ、物を選ぶときのこだわり・基準を改めて伺いたいです。

川上 例えば服でいうと、似合うかどうかが、購入のポイントになると思います。でも似合わないからと言って、買わないのはもったいないなと感じていて。だから僕は、まずは買っちゃいます。似合わないと思われても、着続けることでフィットすることって誰にでもあると思うんです。体型や雰囲気が服に合ってきたり、周りの人の目が段々慣れてきたり……。

川上 僕は「赤が似合わない」ってよく言われるんですけど、それがすごく悔しくて、色物をどんどん取り入れるようになりました。着続けていくと不思議なもので、みんなの目も馴染んでくるし、自分も着こなし方が分かってきたような気がします。服に限らず、好きだなと思ったらあんまり躊躇しないようにしています。選ぶとき直感が多いです。

──最近のファッション事情や、ご自身に馴染んできたアイテムがあれば教えてください。

川上 最近は自分の中でまたレザーが上がってきてます。ライダースなど、ちょっとおじさんっぽいものをアウターとして着て、そこにストリートのものを入れてバランスを取ることが多いです。あとは、2025年はOasisも復活したので、アディダスのジャージやトラックウェアを買いました。そこにアディダスのスニーカーを合わせず、ローファーを持ってきたり。カジュアルになりすぎないように、モードとストリートをミックスするスタイルで自分らしさを出しています。

──ちなみに2025年のベストバイは?

川上 The Rowのローファーかな。(The Rowのローファーって)とにかくメンズがなくて。ずっと女性ものしかないって言われ続けていたんですけど、遂にイギリスのハロッズにメンズの在庫が見つかったんです。1サイズ大きいんですが、すぐに買って取り寄せました。

ファン必読!? 川上洋平の“喜怒哀楽”に当てはまらない話

──「喜怒哀楽の幕」にちなんで、最近あった喜・怒・哀・楽に関するエピソードを何か教えてください。

川上 そうやって言われるとなかなか浮かびませんね(笑)。あ、でも最近、髭の脱毛に通っていて。半年以上通っているんですけど、毎回同じ方に施術してもらっているんです。で、たぶん、その方は僕のことを知らない。

──なるほど。

川上 施術中に雑談をしていて、仕事の話題もいろいろ振られたりするんですが、自分から「ミュージシャンです」って言うのは恥ずかしいじゃないですか。ツアーのことを出張と言ったり、作詞をデスクワークと言ったりして、話を合わせているんですけど、一向に相手が踏み込んだことを聞いてくれない。そろそろ「なんの仕事をされてるんですか?」って具体的に聞いてくれてもいいのにな……って(笑)。脱毛、あと2回で終わっちゃうんです。

──(笑)。攻防戦みたいになってますね。

川上 これは喜怒哀楽のどこにも当てはまらない話です。このもやもやもは、どこに当てはまるんだろう?(笑)。

──残り2回で進展があれば、“喜”になるかもしれないですね。

川上 40過ぎて毎回昼間に脱毛に来るおじさんって何者なんだろう?って思われそうなものですが、意外と聞かれない。あと2回どうなるか、楽しみです。

自分の内面に向き合うきっかけに

──最後に、本作のポイントをはじめ、smart読者に向けて一言お願いします!

川上 今回は“川上洋平”のことを中心に書いているんですけど、僕や[Alexandros]をあんまり知らない人を意識した部分も多いです。だから、とあるミュージシャンの内面を綴ったものとして読んでもらいたいなと思います。それを通して皆さんが、自分はどういう人生を送ればいいんだろう?送りたいんだろう?ということを考えるきっかけになったらいいのかなと思って。

今は、承認欲求について取り上げられる時代。どうしても外側にばかり目が行きがちですが、もっともっと内面に向き合う時間が必要なんじゃないかと感じています。自分とは何だろう?だとか、自分の正体は何だろう?だとか、追求への第一歩となれば嬉しいです。

(了)

ロックバンド [Alexandros]・川上洋平2ndエッセイ『次幕』

発売日:2025年12月25日(木) 定価:¥1870(税込) 宝島社

人気ロックバンド[Alexandros] ・川上洋平さんが、音楽と自分自身をめぐる“今”の思索を綴ったエッセイ。楽曲を生み出す方法や音楽とともに歩んできた日々、そして今思うこと──。 “音”や“人”、“もの”など、今のアーティスト・川上洋平をかたちづくるすべてが集結した1冊に。創作の裏側にある心の動きや、仲間・ファンとの関係をはじめ、これまでメディアでは語られなかったエピソードも数多く収録されています。さらには、中国・成都での撮り下ろしカットも盛りだくさん。いわば、“今の川上洋平”の取扱説明書のような内容です。

Profile/川上洋平/YOHEI KAWAKAMI
6月22日生まれ。4人組ロックバンド・[Alexandros]のボーカル&ギター。 ほぼ全曲の作詞・作曲を手掛ける。TVドラマやCM、映画など多岐にわたり楽曲提供を行い 幅広い層に支持されている。1月30日(金)全国公開の『機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ キルケーの魔女』では、前作の主題歌「閃光」に続き、挿入歌「ENDROLL」で参加。
公式X(旧Twitter):@alexandroscrew
公式Instagram:@alexandros_official_insta

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