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絶滅危惧のオラウータン3頭が野生へ帰る【最大10年のリハビリを経て】

  • 2026.1.20
絶滅危惧種のオラウータン3頭が野生に帰る / Credit:Canva

保護した動物を再び野生に返すために、私たちの想像以上の年月がかかる場合もあります。

インドネシア・ボルネオ(カリマンタン)島で、最大10年に及ぶリハビリテーションを経た絶滅危惧種のオラウータン3頭が、国立公園の森へと戻されました。

これは感動的な救出劇であると同時に、野生復帰の厳しい現実を示すものとなりました。

目次

  • なぜオラウータンの野生復帰には時間がかかるのか
  • 絶滅危惧種のオラウータンの野生復帰に10年かかった

なぜオラウータンの野生復帰には時間がかかるのか

今回野生に放されたのは、ボルネオ島に生息するボルネオオランウータン(Pongo pygmaeus)3個体です。

それぞれ、違法取引で母親と引き離されたり、家庭でペットのように飼われていたり、観光施設で展示用に飼育されていたりと、人間の関与によって本来の生活環境から切り離されてきました。

その後、インドネシアのリハビリテーション施設で長期間のケアと訓練を受け、ようやく「野生で生きられる状態」に到達したと判断され、野生復帰に至っています。

オランウータンはアジアに生息する唯一の大型類人猿で、その1種であるボルネオオランウータンは、IUCNレッドリストで深刻な絶滅危惧種に分類されています。

森林伐採やパーム油のプランテーション開発、違法な狩猟やペット取引によって個体数は急激に減少しており、1頭1頭の保全が将来の個体群に直結する状況です。

このオランウータンたちは、野生下では子どもが6〜8年もの長い期間を母親と過ごしながら生きる術を学びます。

「どの果実や葉が食べられるのか」「どこにどんな食べ物があるのか」「毎晩どのように枝や葉を組み合わせて巣を作るのか」

こうしたことは本能だけでは身につかず、母親の行動をそばで見ながら習得していく必要があります。

ところが、幼少期に母親と引き離された個体は、この学習の機会を完全に失っています。

そのため、森に戻す前に、失われた学習の時間を埋め合わせるような「学び直し」の期間が欠かせません。

だからこそ、オラウータンのリハビリ施設で行われているのは、単なる保護や長期飼育ではありません。

採餌行動の訓練、森の中を広く移動する能力の回復、枝葉を使った巣作り、そして何より人間から距離を取る行動の再構築が重視されます。

人に慣れたままの個体は、野生では生き残れないだけでなく、人とのトラブルを生む可能性もあります。

そのため、リハビリでは「人から距離を取る」という野生本来の行動が身についているかが、とても重要な条件になります。

野生生物のリハビリとは「野生性を取り戻させる」ためのプロセスなのです。

では、今回の3頭のオラウータンたちは、それぞれどのように保護され、野生復帰できたのでしょうか。

絶滅危惧種のオラウータンの野生復帰に10年かかった

今回放された3頭は、同じボルネオオランウータンでありながら、置かれてきた状況は大きく異なっていました。

雄のBadulは観光施設で長期間飼育され、檻の近くにはヤマアラシや鳥など他の動物も展示されていました。

森とは無縁の環境で育ったため、野生の生活を一から学び直す必要があり、リハビリには8年以上を要しました。

雄のAsokaは、生後わずか数か月のときに人間に拾われ、家庭内で加糖練乳を与えられて育てられていました。

不適切な食事により到着時は非常に弱っており、集中治療からリハビリが始まりました。

そこから、必要なスキルを身につけ、完全な野生復帰レベルに達するまで、10年という歳月がかかっています。

雌のKorwasは、ソーシャルメディアを通じた違法な野生動物取引によって売買されようとしていたところを、森林警察の部隊に押収されました。

保護されたときには真菌による皮膚感染症があり、治療を受けた後に「森の学校」に参加し、他のオラウータンたちと交流しながら、少しずつ野生的な行動を取り戻していきました。

この3頭が放されたのは、インドネシア・西カリマンタン州にあるブキト・バカ・ブキト・ラヤ国立公園です。

この場所は森林の状態が良好で、自然の食物資源が豊富であり、人間の活動圧が比較的低いことが確認されています。

さらに、国立公園のスタッフによる定期的なパトロールが行われる保全区域である点も重要でした。

このように、放獣は「森があればよい」という単純な話ではなく、長期的に生存可能かどうかを科学的に評価した上で決定されます。

ちなみに、オラウータンは繁殖速度が非常に遅く、1回の出産で1頭しか産まず、その子ども長い期間育てます。

このため、繁殖可能な個体を1頭でも森に戻すことは、将来の個体群の維持に直結します

加えて、オラウータンは果実を食べて種子を運び、森に光の入る隙間をつくることで、森そのものの健康を支える重要な存在です。

3頭のオラウータンが森へ戻るまでに費やされた年月は、野生復帰がいかに長く、重いプロセスであるかを物語っています。

この一歩一歩の積み重ねこそが、絶滅危惧種の未来と、私たち人間と自然との関係を守る現実的な道筋なのです。

参考文献

Three Critically Endangered Orangutans Successfully Rehabilitated And Released Into The Wild
https://www.iflscience.com/three-critically-endangered-orangutans-successfully-rehabilitated-and-released-into-the-wild-82249

Inter-Agency Collaboration Enables the Release of Three Orangutans in Bukit Baka Bukit Raya National Park, West Kalimantan (Borneo), Indonesia
https://pressat.co.uk/releases/three-bornean-orangutans-released-a5b3e3f5846aec7df6c10e2d23bc441e/

ライター

矢黒尚人: ロボットやドローンといった未来技術に強い関心あり。材料工学の観点から新しい可能性を探ることが好きです。趣味は筋トレで、日々のトレーニングを通じて心身のバランスを整えています。

編集者

ナゾロジー 編集部

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