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「何も成し遂げていなくても、あなたはすでに完璧」──条件つきの自己愛から解放されて【マリウス葉の、声を聴く時間】

  • 2026.1.20
いまマリウスが愛用している革ジャン。無条件の自己愛を象徴する、白いハートのモチーフをまとって。
いまマリウスが愛用している革ジャン。無条件の自己愛を象徴する、白いハートのモチーフをまとって。

──メンタルヘルスという言葉を聞くと、つい「セルフケアをしなきゃ」と思ってしまうんです。でも、そもそもセルフケアができる状態にたどり着くまでにも、いくつもの段階がある気がしていて。マリウスさんは、心と向き合うことになる前、どんな価値観や状態の中にいたと感じていますか?

そうですね。かなり長いあいだ、「何かを成し遂げないと自分を愛してはいけない」と本気で信じていました。学校ではいい成績をとって、アイドルとしても結果を出して、いい大学に行って、仕事もちゃんとこなす。人から評価されて初めて、ほんの少しだけ「よく頑張ったね」と自分に言っていい。そんな感じで、自分へ愛情を向けることに、たくさんの“条件”をつけていたんです。

子どものころは、ただダンスが好きで、人を笑顔にしたくて、それがごく自然な「僕らしさ」でした。でも、しつけや学業に対して期待の大きい家庭環境や、学校での成績のランクづけ、さらには“評価されること”が前提の芸能界に入ったことで、「一番じゃない自分には価値がない」と内面化し、その思い込みは、気づかないうちに強くなっていきました。

──アイドルとして求められるイメージも、少なからず影響していたのでは。

“完璧で、ハーフらしくて、でもどこか人間味がある”——そういう像がいつのまにか独り歩きして、自分ではコントロールできない“マリウス”だけが先に進んでいく。本来の僕は、その後ろから必死で追いかけているような感覚がありました。

結果が出ない間は、楽しんではいけない。リラックスしちゃいけない。自分を褒めるなんてもってのほか。今振り返ると、本当にストイックで、自分に厳しすぎました。そうやって自分を追い込み続けるうちに、心のバランスが崩れていったんだと思います。

──もし、当時の自分に声をかけられるとしたら?

「すでに完璧なんだよ」──そう小さいマリウスに伝えたいです。自分が一位じゃないと自分を愛しちゃいけないし、人からも愛されないという考え方は、不健康だしサステナブルじゃない。例え特技がなくても、一位じゃなくても、仕事をしていなくても、人は存在しているだけで愛される権利を持っている。その前提がすごく大事だなと今は実感しています。

スペインの大学のキャンパスにて。「緑に包まれてキャンパスまで歩くのがいつも素敵な時間でした」と振り返る。
スペインの大学のキャンパスにて。「緑に包まれてキャンパスまで歩くのがいつも素敵な時間でした」と振り返る。

──その考え方ができるようになって感じた変化は?

以前の自分にとって“喜び”とは、頑張って、辛い思いをして、成し遂げたあとにだけ感じて良いものでした。でも今は小さな喜び、小さな幸せを毎日見つけることができます。自分を祝福することも意識的にやるようになり、辛いときこそ無条件の愛を自分へ実演する。そうすることで、「これをやってみたい」「この挑戦に人生をかけてみたい」という気持ちが、内側から静かに湧いてくるようになりました。“エフォートレスなセルフエネルギー”です。無理やり走るのではなく、自分の内側から生まれるエネルギーで、一歩を踏み出せるような。

──自分の状態と、仕事や生活のスピードが合わないと感じる瞬間って、誰にでもある気がします。マリウスさんは、そういう違和感に直面したとき、「頑張る」ということ自体を、どんなふうに見直してきましたか?

セルフエネルギーが自然と無限に出てくるようなものを見つけるのは大事ですが、今の社会の仕組みでは、誰もが自分の好きなことを仕事にできるわけではありません。だから、鼓舞して働かないといけない場面はどうしてもあると思います。そういうときは、「頑張れない自分」を責める前に、まず状況を確認することが最優先だと感じています。

僕の中で仕事に対するマインドセットが大きく変わったきっかけが、スペインで過ごした2年間でした。スペインの人たちが教えてくれたのは、たくさんお金を稼がないと楽しい人生がおくれないわけではない、ということ。愛すべきコミュニティがあること、夕方5時になったらワインを飲めること、ダンスや自然を楽しめること——そうした時間の中に、人生の豊かさを見出している人たちがたくさんいました。

僕の故郷である日本とドイツは、どちらかというと「仕事が中心」になりやすいカルチャーがあるように思います。それが合っていて、苦にならない人もいるので、決して悪いわけではありません。ただ、そうじゃない生き方もあるんだと知っておくだけで、選択肢は大きく広がる。最終的には、自分に合った生き方を見つけることがいちばん大事なんだと思います。

マリウス葉

2000年、ドイツ生まれ。幼少期を父の出身地のハイデルベルクで過ごす。元タカラジェンヌの母の影響で歌や踊りのレッスンをはじめ、11歳のとき、Sexy Zoneのメンバーとしてデビュー。2022年12月、芸能活動を引退。2021年9月、スペインの大学に編入。@marius_seiryu

Photos: Courtesy of Marius Yo Interview & Text: Mina Oba Editor: Makiko Yoshida

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