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首都直下地震の被害想定見直し 12年前から何が変わった?ポイントを解説

  • 2026.1.19

政府の中央防災会議は2025年12月、首都直下地震の新たな被害想定を公表しました。

前回の想定から12年ぶりとなる今回の見直しでは、耐震化や防災対策などによる被害の減少が見られる一方で、政府が掲げてきた「10年間で被害をおおむね半減させる」という減災目標には届かない結果となっています。

今回は首都直下地震の被害想定の変更点やポイントを解説します。

首都直下地震について

首都直下地震とは、首都圏やその周辺地域の直下を震源とするマグニチュード(M)7級の地震や、プレート境界で発生するM8クラスの海溝型地震の総称です。

陸域で発生する浅い地震の規模は、海溝付近で発生する地震に比べると小さくなる傾向があります。しかし、都市部のすぐ下という浅い場所で発生するため、たとえ地震の規模が海溝型より小さくても、直上の地上では激しい揺れになりやすいのが特徴です。

政府の地震調査研究推進本部によると、M8級の海溝型地震が30年以内に発生する確率はほぼ0~6%程度、首都の直下で起きるM7級の地震は30年以内の発生確率が70%程度としており、M7級の首都直下地震はいつ起きてもおかしくない状況となっています。

首都直下地震の被害想定見直し

政府の中央防災会議は2025年12月19日、首都直下地震に関する新たな被害想定を公表しました。

今回の見直しは、2013年の前回想定から12年ぶりとなります。この10年余りの間に進められてきた建物の耐震化や不燃化対策といった防災施策、そして高層マンションの増加やSNS・生成AIの普及といった最新の社会情勢を反映させた内容となっています。

震度分布

30年以内の発生確率が70%程度とされるM7級の首都直下地震は、特定の場所で発生する一つの地震を指すものではありません。

そのため最新の被害想定では、発生場所が特定しにくい特性を踏まえ、合計19パターンの地震モデルを想定しています。

このうち最も被害が大きく首都機能に甚大な影響を与えるのが、①の「都心南部直下地震」で、今回の被害想定はこの地震が発生した時を想定して算出されています。

変更点やポイント

最新の被害想定(2025年公表)と前回(2013年公表)の比較データを表にまとめています。

この表は、被害が最も大きくなると予測される「冬・夕方、風速8m/s」の条件下でのシミュレーション結果に基づいています。

今回の見直しでは、10年間の耐震化や不燃化対策の進展により、死者数・建物被害ともに2〜3割の減少がみられました。しかし、政府が目標としていた被害半減には届いておらず、依然として甚大な被害が予想されています。

死因の多くは火災

最新の想定でも、死者全体の約3分の2にあたる約1.2万人が火災によるものと試算されています。

特に木造住宅密集地域では、同時多発的な火災が広範囲に延焼するリスクが依然として高い状況です。

建物自体の耐震化は進みましたが、火災被害を防ぐためには、揺れを感知して電気を遮断する感震ブレーカーの普及や、消防力の強化などの災害対応力の強化が不可欠です。

災害関連死

今回の報告書で、直接的な死者(約1.8万人)とは別に、警戒すべきリスクとして挙げられたのが災害関連死です。

東日本大震災や能登半島地震の実績に基づいて推計したところ、最大で約1.6万人〜4.1万人(上記死者数に含まれない)にのぼる可能性があることが示されました。

関連死は、避難生活中の体調悪化や持病の治療停止、精神的ストレスが原因となります。これを防ぐには、避難生活環境の質向上や包括的なケア体制の構築が必要です。

経済被害

想定される経済被害は約83兆円にのぼるとされています。

内訳は、建物やインフラの損壊による資産の損失が約45兆円、工場や店舗の停止による経済活動の低下が約38兆円です。

また、現代ならではのリスクとして、停電や通信障害によるキャッシュレス決済の広範囲にわたる停止が予想されます。

ATMでの現金引出しも困難になるため、現金を持たない人々が食料や日用品を購入できなくなる「買い物難民」の発生や、小売店での深刻な混乱が懸念されています。

都市機能の低下

都市構造や情報環境の変化に伴い、現代社会ならではの新たなリスクが顕在化しています。

今回の報告書で強調されているのが、SNSや生成AIによるデマ拡散の脅威です。

AIによって生成された虚偽画像や偽情報が瞬時に拡散されることで、被災者の不安を煽り、物資の買い占めなどの社会的パニックを引き起こす恐れがあります。

さらに、物理的な混乱として懸念されるのが膨大な数の帰宅困難者の発生です。首都直下地震等の発災時には、公共交通機関の停止により、都心部で約840万人もの人々が足止めされると推計されています。

これらの人々が一斉に移動を開始すれば、SNS上での「駅が開放された」「〇〇ルートで帰れる」といった誤情報の拡散と相まって、さらなる事故や混乱を招く危険性があります。

こうした情報の錯綜と物理的な滞留の連鎖は、一刻を争う救助活動や緊急物資の輸送を直接的に妨げる要因となります。

首都直下地震に備える

首都直下地震における最新の被害想定では、耐震化などにより死者数は約1.8万人へと減少した一方、政府の減災目標には届かず、依然として甚大な被害が予測されています。

また、直接的な犠牲を上回る可能性がある最大4.1万人の災害関連死や、AI・SNSによるデマ、キャッシュレス決済の停止といった現代特有のリスクなどには、これまで以上の警戒が必要です。

首都直下地震はいつ起こるかわからない切迫した状況となっています。

こうしたリスクに備えるためには、家具固定などの自助を徹底するとともに、1週間分以上の備蓄、現金の確保、情報の真偽を見極める判断力を養うことが重要です。

<執筆者プロフィル>
田頭 孝志
防災アドバイザー/気象予報士
田頭気象予報士事務所。愛媛の気象予報士・防災士。不動産会社の会員向けの防災記事、釣り雑誌にコラムの連載・特集記事の執筆、BS釣り番組でお天気コーナーを担当したほか、自治体、教育機関、企業向けに講演を多数、防災マニュアルの作成に参画。

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