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仕事と家事を含めた「総労働時間」は女性就労者の方が長いと判明

  • 2026.1.19
女性就労者の方が「総労働時間」は長い / Credit:Canva

私たちの疲れは、賃金が支払われる仕事だけで生じるわけではありません。

賃金が支払われない家事や育児、介護に追われ、気づけば心身ともに疲れ果てているという経験を持つ人も多いのではないでしょうか。

こうした「見えにくい疲労」に注目した研究を行ったのが、大阪公立大学の研究チームです。

研究チームは、有償労働だけでなく家事や育児などの無償労働も含めた「総労働時間」に着目し、それが睡眠やメンタルヘルスにどのような影響を与えるのかを詳しく検証しました。

この研究成果は、2026年1月8日付で国際学術誌『Social Science & Medicine』に掲載されています。

目次

  • 就労者約4000人の「総労働時間」は女性の方が長い
  • 「見えにくい労働」に目を向け、疲労や不調を理解する

就労者約4000人の「総労働時間」は女性の方が長い

現代の中年世代は、賃金が支払われる仕事だけでなく、家事や育児、介護といった無償のケア労働にも多くの時間を費やしています。

特に共働き世帯が増加している日本では、やるべきことに追われて休む時間を十分に確保できない、いわゆる「時間貧困」の状態に陥りやすくなっています。

しかし、これまでの研究の多くは、健康への影響を検討する際に有償労働時間のみに注目してきました。

そのため、家事や育児といった無償労働に費やされる時間が、どのように健康と関係しているのかは十分に検討されてきませんでした。

そこで本研究では、有償労働と無償労働を合算した「総労働時間」こそが、実際の時間的負担をより正確に捉える指標になるのではないかという視点が採用されました。

研究チームは、40歳から64歳までの就労者3959人を対象に、アンケート調査を実施しました。

対象者は定期的に医療機関へ通院していない、比較的健康な中年層に限定されています。

参加者には、1日平均で収入を得る仕事、家事、育児、介護にそれぞれ何時間使っているかを自己申告してもらいました。

これらすべてを合計した時間が、本研究における「総労働時間」です。

また健康状態については、睡眠を取っても回復した感じが得られないかどうかを尋ねる「非回復性睡眠」の指標と、主観的なメンタルヘルスの状態を評価する質問が用いられました。

分析の結果、女性は有償労働時間では男性より短いものの、家事などの無償労働に多くの時間を費やしており、総労働時間では男性より長いことが明らかになりました。

さらに、総労働時間が長い人ほど、男女ともに非回復性睡眠を感じやすい傾向が確認されました。

加えて、女性では総労働時間が長いほど、メンタルヘルス不良のリスクも高まっていました。

これらの結果が持つ意味について、次項でさらに詳しく見ていきます。

「見えにくい労働」に目を向け、疲労や不調を理解する

本研究の重要な点は、単に総労働時間と健康状態の関連を示しただけではないことにあります。

研究チームは、有償労働時間のみを指標とした場合と、無償労働を含めた総労働時間を指標とした場合のどちらが、睡眠やメンタルヘルスの状態をよりよく説明できるのかを比較しました。

その結果、有償労働時間だけを見るよりも、総労働時間を見る方が、この研究のデータにおいて非回復性睡眠やメンタルヘルス不良をよりよく説明できることが示されました。

特に女性においては、この傾向が顕著でした。

この結果は、「仕事の時間はそれほど長くないはずなのに、なぜこんなに疲れが取れないのか」という疑問が、家事や育児といった無償労働を含めることで初めて説明できる可能性を示しています。

研究では、こうした性差の背景として、日本社会におけるジェンダー構造が指摘されています。

日本では、男性が有償労働に多くの時間を費やす一方で、女性は家事や育児、介護といった無償労働を担う割合が非常に高い傾向があります。

このような分業構造のもとでは、女性は仕事が終わった後も休息に使える時間が確保しにくく、慢性的な疲労や心理的ストレスを抱えやすくなります。

研究チームは、こうした問題を個人の努力や意識の問題としてではなく、社会全体の仕組みが生み出す時間的負担の問題として捉える必要があると示しています。

一方で、この研究にはいくつかの限界もあります。

本研究は横断研究であるため、総労働時間が長いことが直接的に健康悪化を引き起こしたと因果関係を断定することはできません。

また、労働時間や健康状態はいずれも自己申告に基づいており、主観的な評価である点にも注意が必要です。

それでも、有償労働時間だけに注目してきた従来の健康研究の枠組みを見直し、無償労働を含めた総労働時間という視点の重要性を示した点で、この研究は大きな意義を持っています。

今後は、時間の使い方と睡眠やメンタルヘルスの関係を、より詳しく検証する研究が進むことが期待されます。

私たちの疲れや不調を理解するためには、目に見える仕事の時間だけでなく、見えにくい労働の時間にも目を向ける必要があるのです。

参考文献

家事などを含む総労働時間の長さが健康リスクを高める ~健康格差に時間貧困やジェンダー不均衡の視点を~
https://www.omu.ac.jp/info/research_news/entry-21982.html

元論文

Associations of total daily working hours encompassing unpaid care and domestic work with nonrestorative sleep and mental health in middle-aged Japanese men and women: A cross-sectional study
https://doi.org/10.1016/j.socscimed.2026.118965

ライター

矢黒尚人: ロボットやドローンといった未来技術に強い関心あり。材料工学の観点から新しい可能性を探ることが好きです。趣味は筋トレで、日々のトレーニングを通じて心身のバランスを整えています。

編集者

ナゾロジー 編集部

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