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プレゼンの時に出がちな「えーっと」や「あのー」は聞き手の記憶力を高める

  • 2026.1.18
プレゼンの時に出がちな「えーっと」や「あのー」が聞き手の記憶力を高める
プレゼンの時に出がちな「えーっと」や「あのー」が聞き手の記憶力を高める / Credit: Unsplash

誰かと話しているやプレゼンをしているとき、「えーっと」や「あのー」といった言葉がつい出てしまうことはありませんか。

これらの「言い淀み」は、一般的には話し方がスムーズでないマイナスの印象を与えがちです。

しかし、米国ヴァンダービルト大学(Vanderbilt University)のエフゲニア・ディアチェク(Evgeniia Diachek)氏らの研究によると、こうした言い淀みは聞き手の記憶を助ける重要な役割を果たしているようです。

研究チームは、「えーっと」や会話の途中で生じる沈黙、単語の「繰り返し」という3種類の言い淀みが記憶にどう影響するかを実験しました。

分析の結果、言い淀みがない場合と比べて、言い淀みの直後に続く言葉は聞き手の記憶に残りやすくなることが判明したのです。

どうやら私たちは、話の中に言い淀みが挟まると、「次に重要な情報が来る」と注意を向ける傾向があるようです。

この研究の詳細は、2022年7月21日に学術誌「Journal of Experimental Psychology: Learning, Memory, and Cognition」に掲載されています。

目次

  • 言い淀みが注意のスイッチを入れる
  • 効果は短く、タイミングが重要

言い淀みが注意のスイッチを入れる

あなたは今、重要なプレゼンテーションや会議に参加しているとします。

もし話し手が、 「えーっと、、本日の、あのー、議題は、ええ、先月の売り上げに関してです」 といった具合に、言葉を詰まらせてばかりいたら、どのような印象を抱くでしょうか。

おそらく多くの人は、話し手の「準備不足」や「自信のなさ」といったネガティブな印象を抱くでしょう。

実際、過去の研究では、言い淀みが多い話し手は採用面接での評価が下がったり、教育場面では教員としての指導力が低いと見なされたりする社会的なデメリットがあることが報告されています 。

しかし近年、この「厄介者」として扱われてきた言い淀みについてプラスの効果が見られるとの報告がありました。

その研究は、ヴァンダービルト大学のエフゲニア・ディアチェク(Evgeniia Diachek)氏らの研究です。

ディアチェク氏らは、言い淀みの種類(「えーっと」や会話の途中で生じる沈黙、単語の「繰り返し」 )によって記憶にどのような影響を与えるのかについて4つの実験を行いました。

実験1と2では、合計200名以上の参加者を対象に、文章の最後に「言い淀み」を入れた音声を聞かせ、その後の記憶テストで単語を覚えているかを調べています。

用意されたのは、「姉がスキーで事故に遭って、(えーっと)足を骨折した」といった文章です。

結果、言い淀みがなかった場合と比較して、言い淀みがあった場合には直後の単語(今回の例であれば足)を正しく思い出す確率が約1.45倍も高くなることが分かりました。

実験1の結果の図を改変。言い淀みがない場合よりも言い淀みがあった場合の方が直後の単語の記憶率が高い。
実験1の結果の図を改変。言い淀みがない場合よりも言い淀みがあった場合の方が直後の単語の記憶率が高い。 / Credit: Diachek, & Brown-Schmidt. (2023)

具体的には、言い淀みがない場合の正解率が約56%だったのに対し、言い淀みがある場合は最大で約64%にまで上昇していたのです。

また興味深いことに、「えーっと」のようなフィラーだけでなく、ただの「言葉の繰り返し」や「沈黙」でも、同様の記憶が促進される効果が見られました

効果は短く、タイミングが重要

なぜ言い淀みの直後の単語は聞き手の記憶に良く残るのでしょうか。

研究チームは、言い淀みが「注意を向けるべき合図」として機能していると考えています。

これを確かめるため、実験3と4では、言い淀みを入れる位置(文頭、中間、文末)を変えて実験を行いました。

もし言い淀みが「この話は重要だ」という全体的な印象を与えるなら、どこに入れても記憶は良くなるはずです。

しかし結果は、言い淀みの「直後」にある単語だけが記憶に残りやすく、文の序盤や中盤で言い淀んでも、その後の単語の記憶は向上しませんでした。

実験4の結果の図を改変。言い淀みの「直後」にある、文末の単語だけが記憶に残りやすい
実験4の結果の図を改変。言い淀みの「直後」にある、文末の単語だけが記憶に残りやすい / Credit: Diachek, & Brown-Schmidt. (2023)

例を出して説明すると、「えーっと、彼がテーブルに置いたのは、とても美味しいパンでした」のように文頭に言い淀みがあった場合、それ以降の単語(テーブルやパン)の記憶は向上しないのです。

つまり、言い淀みによって引き出される注意力は極めて短命で、わずか0.1〜0.3秒ほどしか持続しません。

このため、文頭や文中で言い淀んでも、肝心なキーワードが出てくる頃にはその効果が切れてしまいます。

言い淀みが文末の「重要な単語」のすぐ手前に置かれたときにのみ、その直後の情報に対してピンポイントで記憶を強化するスイッチとして機能するのです。

このことは、私たちが無意識に相手の言葉の詰まりを「次に何が来るか」を集中して聞くためのトリガーとして利用している可能性を示しています。

私たちは日常会話の中で、100語あたり4回から10回ほどの頻度で無意識に言い淀みを発しています。

こうした言い淀みは、一般的に「自信がない」「不慣れ」といったネガティブな印象を与えがちですが、研究が示す通りデメリットだけではありません。

話し手が言葉に詰まるその瞬間、聞き手の脳は無意識に「重要なメッセージが来る」と身構え、情報の処理と記憶の定着を強化しているのです。

もちろん、言い淀みがあまりに多すぎれば信頼を損なう恐れはあります。

しかし、「本当に伝えたいキーワード」をあえて文末に配置し、その直前にわずかな「間」や「言い淀み」を挟むことで、相手の記憶に深く情報を焼き付けることができるのかもしれません。

流暢で完璧な話し方だけが、最良の伝達手段とは限らないのです。

元論文

The effect of disfluency on memory for what was said
https://doi.org/10.1037/xlm0001156

ライター

AK: 大阪府生まれ。大学院では実験心理学を専攻し、錯視の研究をしていました。海外の心理学・脳科学の論文を読むのが好きで、本サイトでは心理学の記事を投稿していきます。

編集者

ナゾロジー 編集部

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