1. トップ
  2. “ガール・ネクスト・ドア”な魅力を放つ中島瑠菜『蔵のある街』『TOKYOタクシー』『とれ!』で魅せた気取らない佇まい

“ガール・ネクスト・ドア”な魅力を放つ中島瑠菜『蔵のある街』『TOKYOタクシー』『とれ!』で魅せた気取らない佇まい

  • 2026.1.18

2025年は『九十歳。何がめでたい』、『蔵のある街』、『TOKYOタクシー』といった話題の映画に次々に出演し、NHKの大河ドラマ「べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~」にも第1話から登場して注目を集めた新進女優、中島瑠菜の勢いが止まらない。2026年は、新年の幕開けと共に、待望の初主演映画『とれ!』が1月16日から公開中。さらに、大島美優とW主演を飾る『ザッケン!』も今春の公開を控えている。そこで本コラムでは、中島の過去作を振り返りながら、今年さらなる飛躍を遂げるに違いない彼女の魅力に迫っていきたい。

【写真を見る】美咲は、親友の皐月と共に廃墟を訪れてから“神様”が憑くようになってしまう(『とれ!』)

【写真を見る】美咲は、親友の皐月と共に廃墟を訪れてから“神様”が憑くようになってしまう(『とれ!』) [c]2025 「とれ!」製作委員会
【写真を見る】美咲は、親友の皐月と共に廃墟を訪れてから“神様”が憑くようになってしまう(『とれ!』) [c]2025 「とれ!」製作委員会

“どこかで会ったことがある”ような、自然体な佇まい

熊本県出身の中島は、2021年に15歳で「松竹 JAPAN GP GIRLS CONTEST Supported by BookLive」のグランプリを受賞。高校進学と同時に上京し、2023年公開の『なのに、千輝くんが甘すぎる。』でスクリーンデビュー。2024年から雑誌「Seventeen」の専属モデルとしても活躍しているが、写真を見て“どこかで会ったことがあるような気がするな~”と感じるのは、彼女がマクドナルド、カンロ、代々木ゼミナールなどの大手企業のCMに出演し、どこにでもいそうな、それでいてクラスにいたら人気者になりそうな普通の女の子を自然に演じてきたからだろう。

そんな女優の原石のような中島を、映画界が放っておくわけがない!それが冒頭に書いた話題作への連続出演につながったわけだが、そこには個々の作品で新しいことに挑み、違った魅力を放つ彼女の成長がしっかりと刻まれていた。

アニメ声優に、大河ドラマと幅広いジャンルに挑戦

2025年最初の映画作品となった『九十歳。何がめでたい』では、草笛光子が演じた主人公、佐藤愛子の孫娘に扮し、約2か月の猛特訓を経てあまりなじみのなかったダンスシーンに挑戦。続いて出演した、岡山県の倉敷美観地区に住む高校生たちが街で花火を打ち上げるために奔走する『蔵のある街』では、自閉スペクトラム症の兄を持つヒロインの紅子を体現。傷ついた兄を守ろうとする優しさと家庭の事情で美術の道に進みたい夢を諦めかけている複雑な内面、それらから湧き上がる怒りを嘘のない芝居で表現し、自然にあふれだした涙で観客の心を揺さぶった。

さらに、「チェンソーマン」、「ルックバック」などで知られる人気漫画家、藤本タツキの初期短編集をアニメ化した『藤本タツキ 17-26』(25)の一編「妹の姉」では、表題の姉役で声優に挑み、活動のフィールドを拡大。また、NHK大河ドラマ「べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~」では最下層の女郎屋、河岸見世で働く女郎のちどりを第1話から体当たりで演じただけではなく、物語後半である第38話では、はまに名前を変えて女将として再登場。特殊メイクによる、眉毛を落とした印象的な見た目でお茶の間の話題をさらったのも記憶に新しい。

山田洋次監督作で木村拓哉の娘役に

こうした努力と奮闘が実を結んで、中島がついに掴んだのが、名匠、山田洋次監督がメガホンをとり、倍賞千恵子と木村拓哉が共演した松竹創業130周年の記念作品『TOKYOタクシー』への出演だ。その役どころは、木村が演じたタクシー運転手、宇佐美浩二の娘、奈菜。出演シーンこそ少ないものの、それだけにこの役は高度な芝居のスキルを身につけていなければ表現しきれなかったかもしれない。

個人タクシーの運転手、宇佐美浩二の娘を中島が演じた『TOKYOタクシー』 [c]2025映画「TOKYOタクシー」製作委員会
個人タクシーの運転手、宇佐美浩二の娘を中島が演じた『TOKYOタクシー』 [c]2025映画「TOKYOタクシー」製作委員会

というのも、奈菜は希望していた音大の付属高校への推薦入学を決めるが、入学金は莫大で、浩二の妻、薫(優香)も途方に暮れている。だから奈菜も内心穏やかではない。だが、帰宅してそのことを知った浩二が、一瞬戸惑いの表情を見せながらも「入学金のことは心配するな」といったフォローをしながら心から祝ってくれたので、奈菜も思わず全身で喜びを爆発させるという流れ。わずか数分のやりとりのなかで多くのことを伝えなければいけないなか、中島の満面の笑顔と弾けるような芝居が木村の温もりが感じられる言動と合わさって、奈菜が父親に心から愛されているということを可視化するすばらしいシーンに。浩二の人柄や彼がどんな想いで仕事と向き合っているのかということの裏づけにもなる、中島の名アシストぶりに目を見張った。

じわじわと変わっていく普通の女子高生を演じる『とれ!』

学校でも家でも、常に美咲の後ろに佇む、お面姿の神様(『とれ!』) [c]2025 「とれ!」製作委員会
学校でも家でも、常に美咲の後ろに佇む、お面姿の神様(『とれ!』) [c]2025 「とれ!」製作委員会

そんな中島が満を持して挑んだ初主演映画『とれ!』では、意表を突くようにホラーに挑戦。本作は、登録者89万人を超えるYouTubeチャンネル「kouichitv」を運営する人気動画クリエイターのコウイチが、自らのオリジナル脚本を映画化した劇場長編監督デビュー作。母子家庭のため進学は諦め、地元で就職しようと思っていた高校3年生の美咲が、たまたま霊のようなものが映り込んだ動画を投稿。それがバズりまくったことから、SNS投稿に夢中の親友、皐月と一緒に心霊フェイク動画を投稿するようになる。すると、それがまたまた大当たり!2人はさらなる刺激を求めて、地元で噂の廃墟に潜入するが、そこでついに“本物”と遭遇し、美咲は和装でお面のようなものを着けた“神様”に憑きまとわれるようになってしまい…。

途中まで王道のホラー映画の手順を踏み、そこから怖いけれどちょっと笑えて、青春映画のムードも味わえるコウイチワールドに突入していくのだが、美咲に扮した中島がどこにでもいる田舎のまじめな高校生としてそこにいるのがいい。自分はスーパーでコツコツバイトをし、VLOG投稿で荒稼ぎしようと目論んでいる皐月を冷ややかな目で見ていたのに、自身が撮影した投稿がバズったことで少しずつ前のめりに。

心霊フェイク動画にハマっていく2人。しかしある時、異変が起きて…(『とれ!』) [c]2025 「とれ!」製作委員会
心霊フェイク動画にハマっていく2人。しかしある時、異変が起きて…(『とれ!』) [c]2025 「とれ!」製作委員会

そんな美咲が動画撮影にハマっていく展開がそこら中に普通に転がっているリアルな光景に見えるのは、中島と、皐月に扮した人気インフルエンサーのまいきちの芝居が自然だから。観客も彼女たちに寄り添いながら禁断の領域にズブズブと足を踏み入れることになるが、そこから美咲になりきった中島の表情がどんどん変わり、思いがけない展開になっていくのがおもしろい。ただ泣き叫び、逃げ惑うだけのステレオタイプとは違う、令和時代のホラーヒロインを見事に作り上げているため、怖い映画が苦手な人にも刺さるポイントがあるはずだ。

20歳を迎える2026年、中島の快進撃に期待!

中島が大島美優と共に主演を務め、休部中の「雑草研究部」を復活させるべく奔走する『ザッケン!』 [c]2026上村奈帆・モノガタリラボ・プクプク/小学館/『ザッケン!』製作委員会
中島が大島美優と共に主演を務め、休部中の「雑草研究部」を復活させるべく奔走する『ザッケン!』 [c]2026上村奈帆・モノガタリラボ・プクプク/小学館/『ザッケン!』製作委員会

一方、今春公開の『ザッケン!』は、東京都立日比谷高校に実在する部活動「雑草研究部」をモチーフにした上村奈帆の人気コミックを上村自身の脚本と監督で実写化した青春ムービー。中島扮する自称“青春不適合者”の新入生のゆかりが、雑草マニアの同級生、みみ=“ドクダミちゃん”(大島)と休部状態の「雑草研究部」を復活させるために奔走するストーリーたが、本作ではどんな顔を見せているのか楽しみだ。

もちろん、これ以外にも水面下では様々な企画が進行中だろうが、彼女の快進撃は始まったばかり。未知なる可能性を秘め、今秋20歳を迎える中島瑠菜のこれからの活躍にも期待したい。

文/イソガイマサト

元記事で読む
の記事をもっとみる