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「頭おかしい」で会話を終わらせる夫。でも、「おかしいのは私じゃなかった」と支配に気づいた日、人生が動き出した

  • 2026.1.18

夫の機嫌を損ねないように言葉を選び、傷ついた気持ちを伝えれば「頭おかしい」と切り捨てられる。Eさんはいつの間にか、「自分が悪いのかもしれない」「私が我慢すればいい」そう思い込むようになっていました。

家の中でも、外でも、夫の言葉が“正解”になっていく感覚。それは、暴力のない支配が完成していく過程でもありました。

本編では、Eさんが自分の感覚を疑わされていった仕組みと、「おかしいのは私ではなかった」と気づくまでの転機を丁寧に見ていきます。

 

「頭おかしい」という言葉で会話をシャットアウトする夫

家の中でも外でも、常に自分の思い通りに支配しようとする夫。そんな夫に対し、Eさんはある日、勇気を出して自分の気持ちを伝えました。

「そういう言葉は傷つくから、言わないでほしい」

家族として、ごく当たり前の、真っ当なお願いです。ところが、夫から返ってきた言葉は、想像を絶するものでした。

「そんなことで傷つくなんて、お前、頭おかしいんじゃないか?」

普通であれば、「そんなに嫌だったんだね」「ごめん」と歩み寄るのが夫婦の会話でしょう。しかし、モラハラ夫は違います。妻の正当な訴えを、「お前の考え方が異常だ」とすり替え、その感じ方や価値観そのものを否定してしまうのです。家族に対して「頭おかしい」という言葉を平然と投げつける。これは明確な暴言であり、心への暴力です。モラハラ加害者は、この言葉を好んで使います。

 

こうしたやり取りを繰り返されるうちに、Eさんは次第に「私のほうがおかしいのかな」「私が気にしすぎなのかな」と、自分の感覚を疑うようになっていきました。これこそが、モラハラ加害者が狙っている状態です。相手を「異常者」扱いすることで、自分は一切悪くない立場に居座り、話し合いそのものを成立させなくする……それがこの言葉の本当の目的なのです。

 

そんな暗闇の中にいたEさんに、光が差したのは、あるママ友との会話がきっかけでした。

「Eさんの旦那さん、人前で平気であなたをバカにするよね。実は私の元夫も、まったく同じだったの。家でも暴言、すごかったんじゃない?」

そのママ友は、2年前にモラハラ夫と離婚していました。

「最初は一人になるのが不安だった。でも今は、夫の顔色に怯えなくていいし、自分に自信も戻ってきたよ」

 

その言葉を聞いた瞬間、Eさんの中で何かがはっきりと変わりました。

「おかしいのは、私じゃなかったんだ」

そう気づいたとき、長いあいだ絡め取られていた霧が、少しずつ晴れていったのです。Eさんはママ友に紹介してもらった相談機関を訪れ、自分の人生を取り戻すために、離婚を現実的に考え始めました。

 

ある日突然、夫から離婚を切り出されて

ところが、長年Eさんを監視し、支配してきた夫は、彼女の変化を敏感に察知します。

「最近、お前の態度が生意気になった」
「誰に入れ知恵されたんだ」

そう言って責め立てるようになりました。

そんなある日、夫は突然こう切り出します。

「もうお前とはやっていけない。価値観が合わないから離婚しよう」

 

あれほどEさんに執着していた夫が、自分から離婚を切り出したのです。あまりに突然で、Eさんは大きな衝撃を受けました。しかし、これは加害者によく見られる“最後の抵抗”でした。

モラハラ加害者は、「捨てられる」という形を受け入れられません。「俺が離婚を言い出した」「俺が見切った」という形で、最後まで優位性を保とうとするのです。

 

突然の展開に、Eさんの胸には一瞬「捨てられる」という不安が押し寄せました。モラハラ加害者は、相手に罪悪感や不安を抱かせることで、最後の最後まで精神的な主導権を握ろうとします。離婚を切り出すこと自体が、支配の総仕上げなのです。

 

しかし、その不安は相談機関とママ友の支えによって、少しずつ整理されていきました。夫は自分から離婚を言い出したにもかかわらず、養育費や慰謝料といった「責任」の話は一切しませんでした。話が進まないため、Eさんが「調停を考えています」と伝えた途端、夫は慌てて金額を提示してきたのです。

モラハラ夫は、第三者に自分の理不尽さや卑劣さを知られることを、何より恐れます。

 

「約束」を形にする、公正証書という選択

それでも、口約束だけでは「本当に支払われるのか」という不安が残ります。そこでEさんは、取り決めた内容を公正証書に残すことを選びました。公正証書に「強制執行認諾条項」を入れておけば、万が一養育費の支払いが止まった場合でも、裁判を起こさずに給与などを差し押さえることができます。

 

支払いへの不安を抱え続けることは、離婚後も精神的な支配が続いているのと同じです。法的な後ろ盾を持つことで、Eさんの心は少しずつ自由を取り戻していきました。離婚の手続きや、その後の生活に不安がまったくないわけではありません。それでも、もう夫の顔色に怯える日々も、自尊心を踏みにじられる屈辱も終わりました。

 

Eさんが勇気を出して踏み出した一歩の先には、穏やかで新しい人生が待っています。

「ようやく、自分の人生を生きられる気がします」

そう語るEさんの表情は、以前よりもずっと柔らかくなっていました。

 

 

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