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愛犬の死期を知り実家へ→爆笑エッセイの著者が描く、静かで温かい「看取り」の記録【作者に聞く】

  • 2026.1.17

いつも家族の中心にいて、ほほえみをくれた実家の大型犬。ある日、その命の終わりが近いことを知らされた漫画家・つづ井さんは、老犬と過ごす時間を最優先するために仕事を辞めて実家へ帰る決断を下した。

『裸一貫!つづ井さん』などの爆笑エッセイで知られる著者が、愛犬「A」を介護し、最期を看取るまでの静かで温かい日々を綴ったのが『老犬とつづ井』(文藝春秋)だ。本作に込められた、愛犬への誠実な眼差しと別れの受容について紐解く。

犬の気持ちを代弁しない。表現者に課した「誠実な距離感」

【漫画】「老犬とつづ井」を読む 画像提供:「老犬とつづ井」(C)つづ井/文藝春秋
【漫画】「老犬とつづ井」を読む 画像提供:「老犬とつづ井」(C)つづ井/文藝春秋
老犬とつづ井 はじめに(2) 画像提供:「老犬とつづ井」(C)つづ井/文藝春秋
老犬とつづ井 はじめに(2) 画像提供:「老犬とつづ井」(C)つづ井/文藝春秋
老犬とつづ井 はじめに(3) 画像提供:「老犬とつづ井」(C)つづ井/文藝春秋
老犬とつづ井 はじめに(3) 画像提供:「老犬とつづ井」(C)つづ井/文藝春秋

つづ井さんが本作を描くうえで最も注意したのは、「愛犬Aの気持ちを代弁しない」ことだ。人間の都合で犬に感情を押し付けたり、物語を整えるために都合よく喋らせたりすることを徹底して避けた。言葉が通じないからこそ、安易な擬人化をせず、その時々の事実をフラットに描くことにこだわったという。

また、「感傷的になりすぎない」ことも大きな指針となった。愛犬を失った悲しみに浸りきるのではなく、穏やかで幸福だった老犬との日常をそのまま残したいという想いが、作品の根底に流れている。終末期の痛々しい姿ではなく、楽しかった日々を中心に描くことで、読み手にもその温かさが伝わる構成となっている。

「気持ちがわからない」からこそ愛おしい。異種の生き物と暮らす喜び

一般的に「心が通じ合う」ことが美徳とされるペットとの関係だが、つづ井さんは逆の視点を持つ。「こんなにお互いの気持ちがわからない生き物と暮らすことができるんだ」という驚きと面白さが、愛犬との生活で学んだ最大の喜びだったと語る。

相手の心をそのまま覗くことができないからこそ、稀に心が通じたように感じた瞬間の尊さが際立つ。自分とは何もかも違う存在と同じ時間を共有することの豊かさを、つづ井さんは愛犬Aから受け取ったのだ。

「描くこと」が別れを受け入れるための大切なプロセスとなった

愛犬を看取った後、しばらくは涙が止まらない日々が続いた。しかし、絵日記として当時の記憶を細かに思い出したり、家族と語り合ったりする作業を通じて、悲しみ一色だった感情に変化が訪れたという。

本作を描き上げることは、著者にとって「愛犬がもういない」という事実を受容するための、不可欠な儀式でもあった。つづ井さんは「この本が必要な方に、必要なタイミングで届いたら嬉しい」と締めくくる。読者の心に静かに寄り添い、失ったものへの愛しさを再確認させてくれる一冊だ。

取材協力:つづ井(@wacchoichoi)

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