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【不妊治療とお金】体毛が抜け、心が削られ…それでも「後悔するくらいなら進みたい」夫婦の覚悟を描いた物語【作者に聞く】

  • 2026.1.16
身体も心もボロボロになりながら迎えた、顕微授精の判定日…。 画像提供:ぺ子さん
身体も心もボロボロになりながら迎えた、顕微授精の判定日…。 画像提供:ぺ子さん

「原因は、俺かもしれない」。その言葉が夫の口からこぼれ落ちた瞬間、夫婦の時間は静かに、しかし確実に別の軌道へと進み始めた。ぺ子さん(@peko_comic)が描く『原因は、俺…?』は、夫側の不妊という現実と、高額な不妊治療が心身に及ぼす影響を、逃げ場のない距離感で描き出した実話ベースの作品である。

「やっと希望が見えた!」12匹の精子がもたらした一瞬の安堵

「原因は、俺…?」17-1 画像提供:ぺ子さん
「原因は、俺…?」17-1 画像提供:ぺ子さん
17-2 画像提供:ぺ子さん
17-2 画像提供:ぺ子さん
17-3 画像提供:ぺ子さん
17-3 画像提供:ぺ子さん

不妊の原因が夫にもあると判明し、夫はTESE(精巣内精子採取術)を受けることになる。手術の結果、12匹ほどの精子が回収できたと聞いたとき、夫婦は確かに安堵した。長いトンネルの先に、ようやく小さな光が見えた気がしたからだ。しかし、その希望は、思いがけない形で揺らぎ始める。

風呂場で気づいた異変、身体が先に悲鳴を上げた

数日後、夫が風呂に入ろうと服を脱いだとき、全身の体毛がごっそり抜け落ちていることに気づく。仕事がつらく、何もやる気が起きない。TESEによるホルモンバランスの変化が、目に見える形で日常を侵食し始めていた。治療は数字や結果だけではなく、次第にそして確実に、彼の身体と心を削っていった。

減っていく貯金と、「もしダメだったら」という恐怖

さらに、治療を続けるほど、貯金も目に見えて減っていく。「これで子どもができなかったらどうなるのか」。結果が出ない不安と、費用の重圧が夫の胸を締めつける。迎えた着床判定の日、医師から告げられたのは陰性という結果だった。「一回目で妊娠できる人は、そう多くありませんから」。優しい言葉とは裏腹に、現実は冷たく残る。

4回続いた陰性、それでも妻は前を向いた

その後も結果は変わらず、4回目まで陰性が続く。心が折れそうになる夫に対し、妻は「最後の最後まで可能性にかける」と言葉をかける。治療の苦しさも、結果が出ない現実も、2人で背負ってきたからこそ、その言葉には覚悟がにじんでいた。

「おそらく着床していないかと…」最後の宣告と、新たな選択肢

最後の顕微授精の判定日、医師の口から告げられたのは「おそらく着床していないかと…」という、重すぎる一言だった。絶望的な表情を浮かべる夫婦に対し、医師は男性不妊治療に力を入れている福岡のS病院を紹介する。「もしかすると…可能性を見出せるかもしれません」。その言葉は希望であると同時に、新たな決断を迫るものでもあった。

「後悔するくらいなら」経験者だからこそ語れる覚悟

ぺ子さんは、この夫婦の立場に立てば「心臓が地につくくらい落ち込むと思う」と語る。治療の苦しさも、費用の重さも、すべてを共有してきたからこそ、結果が出なかった現実はあまりにも重い。それでも、「あのとき、もう少し治療していたら…と思う可能性があるなら、貯金がなくなってでも治療したらいい」と続ける。人生は一度きりだからこそ、後悔のないよう夫婦で話し合い、選択することが大切なのだという。

不妊治療は、結果だけで語れるものではない。身体の変化、心の揺れ、そして夫婦の関係そのものが試される時間だ。本作は、その現実を真正面から描き切り、読む者に重い問いを静かに投げかけてくる。

取材協力:ぺ子さん

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