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【40代夜の夫婦関係】作家・鈴木涼美さん(42)「性的な舞台から自分は”もう降りた”と思わないこと」

  • 2026.1.14

AV女優から新聞社記者、作家という異色の経歴を持つ鈴木涼美さん。昨年ご結婚され、カップルやパートナーに対する考え方にも変化が。40代が漠然と抱える夫婦関係にまつわる言葉にならない思いやひっかかりについてご自身の経験とともに、赤裸々に語ってくれました。

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何かしらの舞台に自分をのせているか

私自身、昨年出産して、「次のステージに来たな」という感覚はあります。こんなに長くセックスしていないのも初めてで、今は日常の中でそういうことを全く忘れているというか、男女の燃え上がる恋心みたいなものも、まだ再燃していないですね。「ちょっと、お米研いでおいてくれる?」みたいな、おばさん二人の同居生活に近いかな(笑)。夫のことを信用していますし、頼りにしているパートナーではあるけれども、少なくとも今は、性的な匂いみたいなのは非常にないままなので、先輩方に聞きたいぐらいですね。ただ、裸のコミュニケーションって、やはりすごく分かりやすい自己肯定でもあると思います。自分のことで興奮してくれる人がいるとか、この人に何かしてあげたいと思える相手がいるとか、そういうことってある種すごく「alive」だと私は思うから。セックスしていると肌にツヤが出るのかどうか、生物学的なことは私には分からないけど、少なくとも私は、「性的な舞台からもう降りた」と思っていないことがその人のツヤや雰囲気には関係があるとは思います。性欲というよりも、恋愛の渦中にいるかどうかで、やっぱりどうしたって意識が変わる。もちろん、趣味が高じて何か資格の試験に受かったとか、そういう達成感ですごくイキイキとする場合もあるけど、どうしたってツヤが爆発的に出る瞬間ってやっぱり恋とか性が関係していることが多い気がするんです。それはたとえ片思いであっても、推し活でもいい。ライブに行く日におめかししていくことですごくハリが出てめちゃくちゃ元気で綺麗になっている子もいるから、性的な満たされ方だけとは限らないとは思うんですけど「何かしらの舞台に自分を乗せているか」ということは大事なんじゃないかなと思います。

「昭和的な理想の夫婦像」と「密接なフランス映画のような夫婦像」の間で迷っている

フランス映画のように、性的に密接なつながりがある夫婦を「正常」だと感じるかというと、日本では必ずしもそうではなくて、むしろ、性的な匂いが一切しないことこそが、理想的な夫婦像として語られてきた側面があると思います。それは、性を家庭の外に排除して、家庭の中は「運命共同体」としての家族愛然で繋がっている状態を「いい家庭」と呼んできた時代が確実にあったからだと思うんですよ。でも私たちはアメリカのドラマもフランス映画も観るし若くて恋愛を謳歌している女性たちとも日常的に接しています。比較対象があるからこそ、「めくるめく、自分が作り変わるような恋愛は、もう一生しないのかな」とか「私はこのまま終わってしまうのかな」と、ふと思う人もいますよね。

うまくいっている夫婦は、友人のような関係に落ち着いていることが多いと感じます。ただし、「うまくいっている」という定義自体が、人によってまったく違う。理想としているカップル像に齟齬があると思う。

夫は「すごくうまくいっている」と思っていても、妻は「もうキスすらしていない」と強いストレスがあったりすると、それは誰のせいでもないのに、結果として不幸が生まれてしまうこともある。縁側で一緒にお茶飲みたいと思っている人もいれば、激しく愛し合いたいと願う人もいて。付き合い始めた頃は同じ熱量で盛り上がっていても、最終的にどういうところに落ち着きたいっていうのが、それぞれ理想が違っているのだと思うんです。古い日本的な家族観と、ヨーロッパ的、あるいはアメリカ的なパートナー像が、ごちゃまぜになったまま、私たちは今を生きているのかもしれません。

 

 

2人の人間が、お互いの世界を狭めないために

私自身はというと、夫の育ってきた家庭環境や「ああいうのいいよね」といった言葉尻から、こういうのが理想なのかなと想像します。全く別の景色を見て育ってきた二人が一緒になるのだから、本来、自分一人でいるよりも世界や視野が広がっていたりするのが理想だと私は思っています。けれど現実には、相手の世界を狭めることを望む男性も女性もいると思うんですよ。それまで彼が大切にしていた楽しみを禁じたり、彼女が働きたいと言ったら難色を示したり。でも、相手が違う世界とつながろうとするのを阻む関係は息苦しいなと思います。こと性に関しては、かなり排他的にパートナーシップを結ぶわけですよね。つまり、誰かと食事に行くとかいろんな趣味を持つとかそういうことは歓迎する相手であってほしいけど、じゃあセックスに関してどれだけ世界を広げられるかと考えると、それはやっぱり2人で広げるしかないと思うんですよね。その関係性の中でどれだけ新しい感覚や対話を持てるかは、とても重要なんじゃないかなとは思います。不幸なわけではないし、子どもを囲んでうまく回っている。けれど、どこか満たされない感覚があったり、「このまま、というのはちょっと嫌だな」と思ったりすることもあります。お互いに今はそういう気分ではないのであれば問題ないと思うんです。でも、どちらかが「もう少し関係性を深めたい」と感じているときに、「夫婦になったんだから、もうそういうことはいいでしょうと封じ込めるのって、それはやはり、お互いの世界を狭めてしまうことになるのではないでしょうか。

 

 

女性用風俗、セクシャルウェルネスアイテム…チャンネルは増えている

単にセックスを求めているのか、それとも夫ともう一度、情熱的に繋がり合いたいのか。その違いをみんな自分でもあまりよくわかってないと思うんですけど……。私は結婚という制度に対して多少懐疑的でもあるので、既存の枠組みとは違う選択をしている人たちの話を聞くこともあります。ただ、多くの場合に共通しているのは、「家庭を壊したいわけではない」という点なんですよね。家庭は家庭として健全に運営しながら「そこから漏れる感情や欲求」みたいなものを救い上げる選択肢として女風といったサービスを使っているのかなと思ったりもしますね。あとはTENGA(日本生まれのセクシャルウェルネスブランド)を取材すると、一人で楽しむのもあれば、デリケートゾーンをケアするアイテム、二人の関係性をもう一度活性化させるための商品も出ていて。触れ合うことやコミュニケーションの大切さを意識した、カップル間で盛り上がりに欠ける時に投入してみる、再燃を後押しするみたいな発想が広がっていきています。正解は一つではなく、チャンネルが色々増えてきている時代になっているなと思います。

鈴木涼美さんprofile

1983年生まれ。東京都出身。作家、エッセイスト、コメンテーター。慶應義塾大学在学中にAVデビュー。東京大学大学院修士課程修了後、日本経済新聞社に5年半勤務。著書に『「AV女優」の社会学』、『JJとその時代~女のコは雑誌に何を夢見たのか~』、上野千鶴子氏との書簡集『往復書簡~限界から始まる~』、『ギフテッド』『グレイスレス』 (両作とも芥川賞候補)、『YUKARI』(三島賞候補)他多数。フジテレビの秋元優里氏とのポッドキャスト番組「ねーきいてよ」がSpotify、Apple Podcastなどで好評配信中。

撮影/佐藤俊斗 ヘアメーク/川村友子 取材/香取紗英子

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