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第1話から衝撃がスゴい! オダウエダ植田が『と、ある日のすごくふしぎ』を語る

  • 2026.1.14

2025年9月から、grapeではお笑いコンビ『オダウエダ』の植田紫帆さんとの連載企画がスタート!

漫画を愛してやまない植田さんによる選りすぐりの漫画を、毎月1作品ずつ紹介してもらいます。

画像提供:吉本興業株式会社

オダウエダ植田書評第5回・SF短編集『と、ある日のすごくふしぎ』

今回は宮崎夏次系先生の『と、ある日のすごくふしぎ』を紹介させていただきます。

宮崎夏次系先生の作品に手を触れたのは、実家の近所のヴィレッジヴァンガードでした。

ヴィレッジヴァンガード、略してヴィレヴァン。ここは年始に何に使ったら良いのだろうかとおもう物ばかりが沢山詰め込まれた福袋を販売してるだけのお店ではなく、本来は本屋さんなのである。

中学の時に家の近所にイオンが出来、その中にヴィレヴァンができたことにより、"漫画をその日のフィーリングで購入する"という楽しみを覚えました。

それ以前は一度雑誌やアニメで見たことある物、家にあるものや友達に勧められたものしか読んでませんでしたので。

ヴィレヴァンには地元の本屋さんには無い、いや、あっても見逃してしまっている漫画が所狭しと陳列されてあり、その中に宮崎夏次系先生の『変身のニュース』も並んでました。

多分、一冊試し読み用に置いてありまして、なんのきなしに手に取ったところ、「なんだこの話は」と衝撃を受け、そこから宮崎夏次系先生の虜となりました。

宮崎夏次系先生は短編作品と長編作品を手がけられていまして、『変身のニュース』も今回紹介する『と、ある日のすごくふしぎ』も短編集でございます。

先生のお話はとても不思議なタッチで、不器用で切なく、普段見ないふりして気になってるけど触らないようにしている瘡蓋をめくってちょっといじる、みたいな、経験したことないけど、どこかで知ってると心の奥に鈍く響いてきます。

なのにどこか爽やか。

これが宮崎夏次系節だと私は勝手ながら思っています。

『と、ある日のすごくふしぎ』は短編でもさらに10pもないぐらいの短編なので怒涛のように押し寄せます。

一発目の「と、ある日の忘れもの」では、男が地元の島に老いた母を一人残して、船に乗って今自分が暮らしている街に帰ろうとする。

後悔の念で泣いているところに母親が男の大切な忘れ物に気づき、紛うことなくフルスイングで投げ、船に乗ってる男にぶつける。

なんという哀愁とパワフルさだろうか。

もう次のページでは2話目が始まっており、女の子二人が絶交してるシーンになっちゃってる。余韻だらけなのに余韻に浸る間もないのである。

三話目の「と、ある日のお弁当」では、主人公の男の子が死んだお母さんの代わりにお弁当を作ってくれる全自動マシーンのお弁当を見ているシーンから始まります。

見たことない導入なのに胸が痛みますよね。

主人公は父親に「もうママは居ないけどちゃんと中身はお前の好きなものばっかりだ。ママが作ったのときっと変わりはないよ」とお弁当を渡され学校にいく。

お昼ご飯の時間。

みんなが作ってもらってるお弁当を各々食べている中、主人公だけはお弁当を食べず、ママのお弁当とは違うのにママにしか作れないタコウインナーのような『32本足ウインナさん』を見つめ悶々とするその横で食いしん坊の生徒が「要らないならちょうだい」とずっと催促してる。

それを無視して悶々とし続ける主人公。

勝手にお弁当に触れられそうになった瞬間、主人公の怒りのボルテージが上がり暴れだす。

お弁当も自分もめちゃくちゃになり、逃げ出した屋上で唯一握っていた『32本足ウインナさん』を「こんなもの」と思っていながらも爪でにっこり笑顔にさせる。これでこの物語は終わり。

経験したことないけど身に覚えがある。そして出てくるキャラクターたちを抱きしめたくなります。

出てくるキャラクターたちはこの世界にどこか生きづらさを感じてはいて、それに打ちひしがれたり、抵抗しつづけたり、諦めたり、逆に楽しんだりしています。

そしてそんな世界でちょっとだけ頑張って、問題の根本的な解決はしないけど、ぐちゃぐちゃになったりするけど、一歩踏み出していきます。

その一歩のパワーはとても大きくとんでもない衝撃として表現されているのです。

今、夏次系先生は『カッパのカーティと祟りどもの愛』を連載中ですので是非ご覧になってください。

あと、『変身のニュース』を久しぶりに読みました。

第一話のオチにでっかい金玉出てました。

そら、好きになるわけや。

[文/植田紫帆 構成/grape編集部]

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