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ロブ・ライナー監督が遺した名作を、自身の言葉で振り返る貴重なインタビュー「『スタンド・バイ・ミー』は初めて自分の個性を反映した映画」

  • 2026.1.12

2025年12月14日に亡くなったロブ・ライナー監督は、『スタンド・バイ・ミー』(86)、『プリンセス・ブライド・ストーリー』(87)、『恋人たちの予感』(89)、『ア・フュー・グッドメン』(92)など、アメリカ映画の金字塔と呼ばれる作品を数多く残した。2025年9月には、監督デビュー作『スパイナル・タップ』(84)の41年ぶりとなる続編『Spinal Tap II: The End Continues』(25、日本未公開)が全米で公開されている。架空のハードロックバンドのドキュメンタリーを本物らしく撮る“モキュメンタリー”形式を発明し、ライナー監督自身もドキュメンタリー監督のマーティン・ディベルギー役として出演している。

【写真を見る】『スタンド・バイ・ミー』をはじめ『恋人たちの予感』、『ア・フュー・グッドメン』など数々の名作を世に遺したロブ・ライナー監督

このインタビューは、2022年のカンヌ国際映画祭中に『Spinal Tap II』の制作を発表し、海外プレス用に取材を受けた際のもの。まだ映画が作られる前の段階だったため、ライナー監督のキャリアにおける名作について再度聞くことができる貴重な機会となった。故ロブ・ライナー監督のご冥福をお祈りすると共に、色あせることのないフィルモグラフィーに敬意を表したい。

【写真を見る】『スタンド・バイ・ミー』をはじめ『恋人たちの予感』、『ア・フュー・グッドメン』など数々の名作を世に遺したロブ・ライナー監督 [c]Quiver Distribution Courtesy Everett Collection
【写真を見る】『スタンド・バイ・ミー』をはじめ『恋人たちの予感』、『ア・フュー・グッドメン』など数々の名作を世に遺したロブ・ライナー監督 [c]Quiver Distribution Courtesy Everett Collection

「顔をそろえると当時の気分に戻る」40年を経ても変わらない『スパイナル・タップ』チームの強いつながり

40年の時を経て『スパイナル・タップ』の続編が企画されていることについて、「実現させたいんですが、そこには大きな問題があるんです。前作を監督したマーティン・ディベルギーとメンバー間の対立がありまして…」と、すでにモキュメンタリーの世界にいるようなウィットに富んだ受け答えをしていた。

「『スパイナル・タップ』がなぜカルト的な人気を博したのか、説明するのは本当に難しいです。あの映画が公開された当時、人々はフェイクだと理解できず、『どうして無名で下手くそなバンドのドキュメンタリーを撮ったのですか?』と聞かれました。『これは風刺で、笑いを取ろうとしているんですが…』と何度も説明したものです。人々がそれを理解し楽しめるようになるまで、40年かかったということではないでしょうか?」

架空のヘビーメタルバンドの全米ツアーの模様をモキュメンタリー調で描いたライナー監督のデビュー作『スパイナル・タップ』 [c]Courtesy Everett Collection
架空のヘビーメタルバンドの全米ツアーの模様をモキュメンタリー調で描いたライナー監督のデビュー作『スパイナル・タップ』 [c]Courtesy Everett Collection

バンドメンバーを演じたクリストファー・ゲストは、自身もモキュメンタリー作品の傑作『ドッグ・ショウ!』(00)、『みんなのうた』(03)を監督、マイケル・マッキーンはドラマシリーズ『ベター・コール・ソウル』(15-17)に出演している。彼らとの交流は40年間変わらずに続いているそうだ。

「みんなが顔を揃えると、あの当時の気分に戻るんです。『スパイナル・タップ』の35周年記念上映をトライベッカ映画祭でやった際に集まり、すぐに同じノリに戻りました。何度も続編制作のアプローチは受けていましたが、本当におもしろいアイデアが浮かぶまでは、誰もやりたくないと思っていたんです。『スタンド・バイ・ミー』の最後にこんなシーンがあります。『あの12歳の時のような友だちは もうできない もう二度と…』。この言葉がとても良く表していると思います。思春期を迎える12歳の頃に出会った友達と結んだ絆は、非常に強く感情的なつながりになります。『スパイナル・タップ』をご覧になった方々は、そこに共感していただけたんだと思うんです」

『スタンド・バイ・ミー』上映時にスティーヴン・キングからかけられた言葉

ライナー監督の作品が色あせないのは、人生で出会う普遍的な絆について描いているからだ。『スタンド・バイ・ミー』の原作者スティーヴン・キングや、『ア・フュー・グッドメン』に主演したトム・クルーズとも、映画制作を通じて特別な絆を結んできた。

行方不明になった死体を探しに旅に出た4人の少年たちが、ひと夏の思い出を通じて成長していく姿を描く『スタンド・バイ・ミー』 [c]Columbia PicturesCourtesy Everett Collection
行方不明になった死体を探しに旅に出た4人の少年たちが、ひと夏の思い出を通じて成長していく姿を描く『スタンド・バイ・ミー』 [c]Columbia PicturesCourtesy Everett Collection

「スティーヴン・キングと初めて会って握手をした時、彼は手のひらにネズミのおもちゃを握っていました。まるで、自分がスティーヴン・キングであるという義務を果たすため、出会った人すべてを恐がらせているような。それはキングのために『スタンド・バイ・ミー』の上映を行なった時でした。彼はあまり気が進まないようでした。なぜなら、この物語は彼の個人的な経験から、実際に死体を見に行ったというような思い出が詰まっている作品だったから。彼はプロデューサーのアンドリュー・シェインマン、脚本を書いたブルース・A・エヴァンスとレイノルド・ギデオンの3人と一緒に映画を観て、『ちょっと考えをまとめさせてくれ』と言って去っていきました。私は『ああ神様、彼はなんて言うんだろう?』と思いました。しばらくして彼が戻ってきて『私の本の映画化のなかで最高の映画だった』と言いました。そのほめ言葉はあまり意味がなかったかもしれません。なぜなら、彼は映画化されたほとんどの作品を気に入っていなかったから。でも彼はこうも言ったんです。『私が思いつけばよかったと思うものが入っていた』と。それは小説にはなかった描写でした」

「キーファー・サザーランドが演じた悪者たちと対峙する時、小説ではクリスが銃を拾います。リヴァー・フェニックスが演じた役ですね。ですが、私たちはゴーディ(ウィル・ウィートン)が銃を拾い彼らを阻止するように変更しました。すべてはゴーディについての物語だったから、映画では彼に焦点を当てたんです。小説のゴーディは観察者のように描かれていましたが、私はこの映画をゴーディの個人的な旅として描きました。ゴーディが兄の葬式で泣かなかったこと、父親が自分を愛していないと感じていたこと、すべて。だから、(銃を拾う描写は)彼が自分自身を見出すきっかけとして描きました。そしてスティーヴンは『あなたがそう描いてくれて良かった』と言ったんです」

トム・クルーズやメグ・ライアン…ライナー監督の世界観を作り出す役者たち

2022年のカンヌ国際映画祭において、トム・クルーズが名誉パルム・ドールを受賞し同時期にカンヌを訪れていた。ライナー監督は、当時30歳のクルーズを『ア・フュー・グッドメン』で起用している。

「トムはもうすぐ60歳になりますが、彼はキャリアを賢く管理しています。本当にすばらしい作品に出演し続け、いまは『ミッション:インポッシブル』シリーズや『トップガン』の続編を抱えています。それでも、私はトム・クルーズにほかのことをやってほしいですね。フランチャイズの興行はうまくいっているし、トムはすばらしくやってのけている。でも、世間は彼を過小評価しています。彼は類稀なる才能を持つ俳優なのだから、ほかのタイプの作品にも挑戦してほしいのです」

【写真を見る】米海軍基地で起きた殺人事件の真相を探るため、若き弁護士が権力に立ち向かうさまを描く『ア・フュー・グッドメン』 [c]Columbiacourtesy Everett Collection
【写真を見る】米海軍基地で起きた殺人事件の真相を探るため、若き弁護士が権力に立ち向かうさまを描く『ア・フュー・グッドメン』 [c]Columbiacourtesy Everett Collection

ロブ・ライナー作品のなかでももっとも有名な、メグ・ライアンが『恋人たちの予感』で演じたシーンについてはこう語っていた。

「メグの演技のあと、『彼女と同じものを』と言っているのは、私の母のエステル・ライナーです。あのシーンを撮影する時、母に言いました。『かなりおもしろいシーンになると思うよ。メグ・ライアンが公共の場でフェイク・オーガズムを演じるのだから』と。最後に決めセリフがあって、おもしろいはずだけど、もしもうまくいかなかったらカットしなければならなくなるかも、と母に告げました。母は『大丈夫、気にしないわ。息子と一緒にいて、ホットドッグを食べて、楽しければいいわ』と言いました。そしてそれがもっともおもしろいセリフになりました。一番うれしいのは、その『彼女と同じものを』とオーダーするセリフが、史上最高の映画のセリフにランクインしていることです。クラーク・ゲーブルの『正直言って、俺には関係ない』(『風と共に去りぬ』)や、ハンフリー・ボガートの『ルイ、これが友情の始まりだな』(『カサブランカ』)に、エステル・ライナーのセリフが並んでいるのですから」

『恋人たちの予感』にはライナー監督の実母であるエステル・ライナーが出演し、名セリフを残した [c]Columbiacourtesy-Everett-Collection
『恋人たちの予感』にはライナー監督の実母であるエステル・ライナーが出演し、名セリフを残した [c]Columbiacourtesy-Everett-Collection

感動は時を超えて観客の心に残り続ける

たくさんの名作を遺したライナー監督は、自身の作品でもっとも気に入っているのは『スタンド・バイ・ミー』だと答えていた。

「なぜなら、初めて自分の個性を本当に反映した映画を作ったと感じていたからです。憂鬱さがあり、感情が現れ、ユーモアもある。音楽も私の青春時代のものを使っています。だから、『スタンド・バイ・ミー』は私の作風と合った、とても意味のある映画と言えるでしょう。最初の映画『スパイナル・タップ』は風刺のつもりでした。私の父(カール・ライナー)は若い頃、テレビ番組で風刺劇をやっていました。その影響を受けたものです。2作目は『シュア・シング』で、若者向けのロマンティック・コメディでした。父もいくつかロマンティック・コメディを監督していて、これは初めて父が考えもしなかったことをやった、私をより反映している作品といえます。もしも観客がこれを気に入ってくれたら、少なくとも私がやりたい種類の映画を作っていけるだろうと思いました。それはコメディとドラマを融合させた作品でした」

このインタビューで答えているように、まさにロブ・ライナー監督は独自の映画ジャンルを切り開いてきた。風刺を込めたモキュメンタリー、ホラー小説を成長ドラマとして描いた映画、男女の友情と恋愛を描いたラブコメ。そして、それらの作品に出会った時の感動は、時を超えて観客の心にも残り続ける。アメリカ映画の名匠のご冥福をお祈りいたします。

取材・文/平井伊都子

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