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松田美由紀&原田美枝子、出会いから40年超 監督&主演として向き合い感じたお互いの魅力

  • 2026.1.11
(左から)原田美枝子、松田美由紀 クランクイン! 写真:高野広美 width=
(左から)原田美枝子、松田美由紀 クランクイン! 写真:高野広美

2020年より伊藤主税、阿部進之介、山田孝之らがプロデュースする短編映画制作プロジェクト『MIRRORLIAR FILMS』(ミラーライアーフィルムズ)。Season8までに57本の短編映画を劇場公開してきたこのプロジェクトで、松田美由紀が初の劇場公開作品の監督を務める。主演に迎えたのは、10代で出会い40年以上もの時を共にしてきた原田美枝子。2人が監督と俳優として向き合うのは今回が初めてだ。

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◆「昔から、貝のように固い、原石みたいな人を見るとワクワクする」(松田)

短編映画『カラノウツワ』は、パチンコ屋を舞台に、65歳の女性・文子(原田美枝子)と24歳の青年・土井(佐藤緋美)の邂逅と交流を描く。本作は岡山県倉敷市出身のMEGUMIがプロデューサーとして参加した「岡山フィルムプロジェクト」の一環として、備中エリアを中心に岡山県内で撮影された。取材日は松田の夫・松田優作の命日。「優作が祝福してくれている気がする」と語る2人に、長年の友情と初めての監督・俳優体験について聞いた。

――もともとお二人は10代の頃からの40年以上のお付き合いだと聞きました。実はこうしてお二人で撮影や取材をするのも、これが初めてだそうですね。

松田:『北の国から』での共演以来のお付き合いなんですが、『北の国から』では一緒のシーンはないんですよ。私は村の女の子で、美枝子は学校の先生だったから。それでも私は当時、「美枝子、好き!」(ハグの仕草で)みたいな感じで(笑)。

原田:その頃の美由紀は本当に可愛らしくて。

松田:(笑)。その頃、美枝子はもうトップ女優だった一方で、私なんかはまだ新人だったので、私にとっては憧れの人で。年は2~3歳しか離れてないけど、「こんなかっこいい女優さん、なかなか見ない」と、その生き方に憧れて。真の女優だなぁと思っていました。私が勝手に大好きだったんですよ(笑)。

――でも、その憧れのトップ女優にいきなり抱きつける距離感はすごいですよね(笑)。原田さんは当初、どう思いましたか。

原田:私は当時、すごく“内向”してたんです。一番心を閉ざしている時代で、それがしばらく続いていたとき、美由紀がこう(心の扉を)開けてくれて。こんな風に開けてくる人はあまりいない。美由紀に会っていなかったら、女優として今のルートじゃなかったなっていう感じはすごくしています。美由紀に会ったことや、美由紀が(松田)優作さんと一緒になったことなどに、今までいろいろ影響を受けています。

松田:でも、ずっと仲良しだったのに、今まで仕事はしたことがなかったんです。今回、脚本を書きながら絶対に原田さんに主演をやってもらいたいと思っていました。役名も最初は「美枝子」だったんですよ。美枝子に困ると言われて変えたんですけど(笑)。しかも、今日は実は優作の命日で。おめでたい、不思議なことが重なって優作が祝福してくれているなと思います。

原田:ずっとプライベートでは親しかったんですけど、美由紀は全くブレない人なので、それがすごいなと。

松田:私は昔から、貝のように固い、原石みたいな人を見るとワクワクするんです。「開けたい!」みたいな(笑)。優作もどっちかと言ったら固い原石みたいな人で、だからそういう人を見るともうワクワクして、好奇心がみなぎるわけなんです。

――そういう意味では、土井役の佐藤緋美さんにもやっぱり「原石」を感じられたんですか。

松田:緋美くんは逆に、すごく開いてるんです。開いてるけど、とどまらず、流れてるって感じで。美枝子が原石なら、緋美くんは流れてる砂金。流れてるからすぐには見つけられないけど、ピカッと光ってるところを探していくと、すごい輝きが見つかるみたいな。

◆短編の面白さは「描かなくていい」ところ(松田)


――その原石と砂金が出会ったことから、素敵なラブストーリーになるのかと思いきや、騙し合いもあり、ピュアな交流もある、二人の関係性は新鮮でした。物語のヒントとなったのは、松田監督のお子さんの友人のエピソードだそうですね。

松田:随分前の話になりますが、息子の友達の実話なんですね。ある年配の女性から「私はたくさんのお金を持っている」と言われて、お金をチラつかせられて、誘われてずっと付き合ってるんだけど、旅行に行った話や遊びに行った話、生命保険のことなどいろいろ話すだけで、一向にお金を差し出してくれないという話があって。それがすごく面白いなと思って、いつか物語にしたいと考えていたんです。『MIRRORLIAR FILMS』のお話は何年か前からいただいていたんですけど、これともう1本全く違う話を作っていたんですね。

原田:私が最初に読ませていただいた本は全く別の話で、一人芝居のような脚本でした。演じるのは難しいなと思いました。そこから1年くらい経って、今回の『カラノウツワ』の本が届き、これなら展開に広がりが出ると感じたんです。

松田:私は「どうせ俳優が監督やると、雰囲気しか撮れないでしょ」と言われたくなかった。ドラマをちゃんと作りたいなと思っていたので。

――もっと二人の背景や過去、その後を見たくなる一方で、短編だからこそ、セリフのない箇所にも情報量がみっちり詰まっていて、想像をかき立てられるところもありますね。

松田:短編の面白さはやっぱり「描かなくていい」ところだと思うんですよ。長編だったら、ストーリーがしっかりないと、1時間半とか2時間とか持たせないといけないけど、短編は言葉の間合いで語れるから。

――この女性・文子は、原田さんを投影して描かれたキャラクターなんですか。

松田:投影したわけではないんです。でも、原田美枝子さんが持っている深い深い陰の部分も、ピュアな部分も、文子を演じる上で適役だと思いました。それに、他の俳優さんを見ると、「演じる」匂いがする方が多いんですよね。それで私はすごく興ざめするんですけど、原田さんの場合は原田美枝子を捨てて、文子になってくれているのがすごく嬉しくて。撮影している時はもう原田美枝子さんはいなかったです。

原田:文子はなぞの女性なんですよね。銀行にお金がたくさんあるのかもしれないし、お金持ちの家で育って家が没落していって、その中で大人のうごめく姿を見てきて、「お金なんて」と思っているのかもしれない。あるいは、本当にただただずっとお金がなかったのかもしれない。わからないじゃないですか。そもそも文子が住んでいる家自体が嘘かもしれないし。

松田:生活感が全くないからね。

原田:これがもし本当だとしたら、すごく孤独だなと思うんですよ。でも、土井くんという男の子に会えたこと一点だけで、この後ずっと生きていけるかもしれない。

松田:短編だからこそ、色々な角度から見えるように工夫しているんです。猫がじゃれているところを文子が冷静に見ている顔とか。全然笑ってないんですよね。他に、キーワードとして、子どもとおばあちゃんが遊んでいる様子を2人でチラッと見るところもある。そうした虚実も含めて2人の世界があるというのを作ってみたんですね。

◆「監督が何をやろうとしてこちらが何をやればいいか。心が納得してないと体は動かない」(原田)


――原田さんにとって、監督としての松田さんはいかがでしたか。

原田:撮影は2日だったので、現場は本当に大変でした。ある意味無謀なんですよ。でも、だからこそ美由紀の感性でどんどん撮っていけたのかなとも思います。もちろん時間をかけた方が良いと思うところもあるし、別のバージョンが撮れるかもしれない。でも、出来上がりを観たら、すごく面白かったです。絵の作り方が上手いんですよね。絵のフレームとか画角とか、編集が上手いから。

松田:そこは短編の面白さもあるんですけど、時間が限られているから、いろいろ入れたい要素を全部切り落とさないと間に合わなかったんですよ。パチンコのシーンも午前中しか撮れなかったので、真っ暗にして撮って。それでも何か撮り忘れてるんじゃないかと思って、不安で死にそうでした(苦笑)。

原田:実際、撮影はかなりきつかったですね(笑)。

松田:でも、撮影が2日しかないということを理由に「撮れなかった」と言うのは嫌だったので、画角も全部その場で決めなきゃいけなくて、そうしたスキルは身についたし、勉強になりました。

――監督として、憧れの人でもあり、古くからの友人でもある原田さんを主演として迎えて、いかがでしたか。

松田:美枝子がピリッとする度に「ひぃ~っ」となりました(笑)。それで「説明してくれないの? それじゃ、分からないじゃないの」とか言われると……もう(笑)。それは言われてももちろんしょうがないんですが。

原田:分かりたいからね。監督が何をやろうとしていて、こちらは何をやればいいのかということが。分からなかったら、ただ動いてることになるから。空っぽのまま動くことはできませんから。心が納得してないと体は動かないんですよね。

松田:私も自分が俳優をやっているから、よく分かるんですよ、その気持ちが。でも、分かるからこそ、その3倍速で動かなきゃいけないのは本当に大変で……。ただ、美枝子が疑問に思ったことには100%応えなきゃいけないと思っているから、本当に時間と大女優の戦いでした(笑)。

――原田さんにとって、本作はこれまでのキャリアの中でどんな経験になりましたか。

原田:美由紀はずっと「可愛い」と言ってくれていたんですけど、この作品を観てくれた方もみんな「可愛い」って言ってくださるんですよ(笑)。

松田:この年代で、こんなにも可愛い美枝子を、私は撮りたかったんです。パチンコ屋で帽子を持って「うん」って言うときの顔なんて、めっちゃ可愛いでしょ? あの辺のシーン、大好きなんだよね。

原田:私もそこ、すごく好き(笑)。

松田:あの可愛さは、人生のいろんな道を通ってきて、今があるからで。60歳過ぎたら穏やかだとか、そういう観念で見るんじゃなくて、この年齢になってもこんな瞬間があるよっていうのを撮りたいし、見てもらいたい。私はカメラマンもやっているんですけど、もうツルツルの女優とか撮りたくないですよ。つまんないから。重ねてきた年月や経験の滲む人の美しさ・可愛さを撮る喜びっていうのがあるんです。今度は長編も撮ってみたいですね。時間はかかるけど(笑)。

原田:それもまた楽しみです(笑)。

(取材・文:田幸和歌子 写真:高野広美)

映画『MILLORLIAR FILMS Season8』「カラノウツワ」は、1月16日公開。

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