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ハン・ソヒ×チョン・ジョンソのガールズノワール『PROJECT Y』釜山国際映画祭を熱狂させたトークをプレイバック!

  • 2026.1.9

まもなく日本と韓国で劇場公開されるハン・ソヒとチョン・ジョンソのW主演による『PROJECT Y』(1月23日公開、韓国は1月21日)。2人が本格的に挑んだガールズクライムムービーであり、女性たちのケミストリーが痛快なシスターフッドものとしても見ごたえ十分な本作は、昨年開催された第30回釜山国際映画祭(以下BIFF)でのアジアプレミアでも、目の肥えた観客たちから熱い反応で迎えられていた。

【写真を見る】普段からの仲の良さがにじみ出るハン・ソヒ&チョン・ジョンソ

オープントークで明かされた役作りの数々

俳優たちのキャスティング秘話を明かすイ・ファン監督 撮影/Lee Junghee
俳優たちのキャスティング秘話を明かすイ・ファン監督 撮影/Lee Junghee

イ・ファン監督、ハン・ソヒ、チョン・ジョンソ、キム・ソンチョル、チョン・ヨンジュ、イ・ジェギュン、ユアが登壇したBIFFのオープントーク。監督はシナリオ執筆の段階から、ミソンとドギョンを圧倒的な説得力で演技してくれる俳優を考えたうえで、主演2人にオファーを出した。さらに「ハン・ソヒさんとチョン・ジョンソさんは一般大衆の皆さんにとってのアイコンなので、この作品のように底辺の現実を野性味あふれる姿で表現し、これまでにない衝撃を見せたかったんです」と、その意外性も狙ったキャスティングだったことを語った。キム・ソンチョルについては、イ・ジェギュンと彼に親交があったことがきっかけの一つだったことに加え「普段のキム・ソンチョルさんから想像できない一面を持つキャラだったからこそおもしろいと思いました」と話し、”ファンソ(牡牛)”を演じるにあたって、丸刈りという一種の象徴があるチョン・ヨンジュについては「キャラクターを女性として扱うならきちんと伝えないとと意を決してお会いすると快諾してくれた」と、安堵交じりに振り返った。

誰もが気になっていたであろう、『PROJECT Y』というタイトル。意味を尋ねられたイ・ファン監督は「実際、背景が夜の世界なので、『工事(夜の仕事をしている人が客から金銭を巻き上げることや貢がせること)』という意味合いも持たせているんですが、誰かに対して何かするという意味で『プロジェクト』とも書くそうです。『Y』は若い女性たちの話なので、ヤングユースとか、いろいろ含みのある抽象的な言葉として使いました。他にも『Why?』『え?私にどうしろっていうの?』とかの意味もあります」とし、観客それぞれの“Y”を考え、当てはめて欲しいとした。

ハン・ソヒは本作を「時代のなかを這うように生きる若者たちのストーリー」と紹介しつつ「ミソンはドギョンとは手段も方法も違うけれど、目的は一つ。その目的を成し遂げるために手段を選ばない姿が新鮮だった」とコメント。チョン・ジョンソは「同い年の友人である女性とダブル主演として作品を作るのは、韓国映画で簡単に実現できることではない。だからこそ、やらなければと思いました。キャラクターも、シナリオに書かれた時点でもうおもしろかったんですが、それをハン・ソヒさんと一緒に演技しながら作っていけたら、一層おもしろいケミストリーを見せられると考えました」と、普段から仲が良いハン・ソヒとのタッグだからこそ良いものが作れる予感がしたことを明かした。

【写真を見る】普段からの仲の良さがにじみ出るハン・ソヒ&チョン・ジョンソ 撮影/Lee Junghee
【写真を見る】普段からの仲の良さがにじみ出るハン・ソヒ&チョン・ジョンソ 撮影/Lee Junghee

「もしも『今年のヴィラン賞』があったなら受賞するはず!」とMCから太鼓判を押されたのは、ミソンとドギョンが立ち向かう悪役、ト社長を演じたキム・ソンチョル。「普通、ヴィランには『なぜそうなったのか』というバックグラウンドがありますが、ト社長にはありません。ただの絶対悪の根源です。そんな絶対悪としてミソンたちと対決する時、どれほど大きなエネルギーでぶつかっていくか悩み、監督にたくさん相談しました。『目で人を殺そう』とか(笑)。でもそれは私の役目ではないので、監督がこうしてほしいという意見を話しながら聞いたり、チョン・ヨンジュさんとも話したりと試行錯誤しながらやってみました」と、役作りの苦労を振り返った。

記憶に残るヴィランを演じきったキム・ソンチョル 撮影/Lee Junghee
記憶に残るヴィランを演じきったキム・ソンチョル 撮影/Lee Junghee

キム・ソンチョルも頼りにしたチョン・ヨンジュは、“ファンソ(牡牛)”というキャラクター名もさることながらビジュアルも視線を奪う。頭をそり上げたことはもちろんだが、それ以上にも入念な役作りが必要だったことを明かした。曰く「シナリオを読むと、ファンソは性別を感じさせないところがあったんです。過去になにがあったか、ト社長との馴れ初めもないし、男か女かというのも重要ではありませんでした。ただ今日だけ生きる人で、なにかに対する怒りも、その目的もないんだと思います」と、深い人物の掘り下げによるキャラクターの完成度だったことが観客に伝えられた。またファンソのファイトスタイルを表現するため、なんと“肩で人を殺す”ことをイメージ。上半身を中心にした身体づくりに取り組んだそうだ。

劇中では「牡牛」という名で恐れられるキャラの彼女も笑顔はキュート 撮影/Lee Junghee
劇中では「牡牛」という名で恐れられるキャラの彼女も笑顔はキュート 撮影/Lee Junghee

ミソンとドギョンの計画を邪魔する小悪党ソックを演じたイ・ジェギュンは、彼女たちの行方を左右するある種の重要なキャラでもある。イ・ファン監督とは旧知の仲というイ・ジェギュンは「今回8年ぶりに撮影を共にして感激した瞬間が多かったですし、最終日は監督の目頭が赤くなっていました」と秘話を教えてくれた。自身が演じたソック役については、一言で言えば「クソバエ」とコメント。「こっちにくっついたり、あっちにくっついたりして最後まで生き残るようなキャラクターです。考えていることが単純な人物として演じました」と、現実的な人物として解釈し演技したことを明かした。

ソック役のイ・ジェギュンとハギョン役のユア(OH MY GIRL) 撮影/Lee Junghee
ソック役のイ・ジェギュンとハギョン役のユア(OH MY GIRL) 撮影/Lee Junghee

6人組ガールズグループ「OH MY GIRL」のユアは、ト社長の若い妻ハギョン役でスクリーンデビューとなった。アイドルとして活躍してきたユアのこれまでのイメージを脱却するようなキャラクターだが、本人は「初めてシナリオを読んだ時、OH MY GIRLでの私を覚えている方々に新鮮な裏切り感を与えることができそうだと思いました」と、意欲を持って臨んだことを語った。

[PAGE]「なぜ若者をテーマに映画を撮るのか?」という質問へのイ・ファン監督の答えは[/PAGE]

喜びと緊張交じりの上映後GV

続いて行われた、BIFF初上映後のGV。トロント国際映画祭での観客の反応ももちろん得がたいものだったが、やはり自国の映画ファンの反応が気になるところなのか、イ・ファン監督をはじめ口々に緊張を口にしながらも和やかなムードで挨拶がスタートした。ハン・ソヒは「女性ジャンルものでこんなにパワフルで生き生きとした作品が少ないし、私に役としてやって来たのが嬉しい」と改めて出演の喜びを語った。

韓国の観客の反応に興味津々なハン・ソヒ 撮影/Lee Junghee
韓国の観客の反応に興味津々なハン・ソヒ 撮影/Lee Junghee

3階席までギッシリの観客に驚いた様子を見せたキム・ソンチョルは「映画って本当に不思議だなって、今日改めて感じました」と、撮影を共にした俳優陣やスタッフ、監督への感謝の言葉を口にした。そして「僕にはト社長みたく悪魔の心があまりないんです。全く無いと思ってください!でもイ・ファン監督が、本当“地獄で生まれた人”みたいにディレクションしてくださいました」と、素顔の自分とは違う役を演じきったことについて満足感を見せた。

ヴィラン役をこなしたことでさらに俳優として飛躍したキム・ソンチョル 撮影/Lee Junghee
ヴィラン役をこなしたことでさらに俳優として飛躍したキム・ソンチョル 撮影/Lee Junghee

ひときわ歓声を浴びたファンソ役のチョン・ヨンジュは、開口一番「私はあんな怖い人間じゃないです!捕まえて食べたりしませんよ(笑)」とユーモアを加えて会場を笑わせた。良いストーリーと自分にとって新境地とも言えるキャラクターを演じられたこともあり楽しく観ていたそうだが、やはり今日は特別感慨深かったようで「映画を見る間ずっと吸い込まれる感じがした」と、込み上げる思いを口にした。

〝牡牛〟役でファンが急増した予感がするチョン・ヨンジュ 撮影/Lee Junghee
〝牡牛〟役でファンが急増した予感がするチョン・ヨンジュ 撮影/Lee Junghee

イ・ジェギュンは「ソックは人生の目標がはっきりした人間。金のことだけを考えて生きている人間なので、演じているときに恥じ入る気持ちにならなかったと言ったら嘘になる。ソックはなぜこういうことを考えて生きているんだろうと悩みながら演じました」と、役作りに対する悩みも口にした。そして「若い俳優たちが一緒にシナジーを出せる作品は多くないんです」と、本作に関心を寄せてもらえるように力を込めた。ハギョン役のユアも、「初めて一緒にした映画作業だった。観客の方々が見る間ずっと映画に没頭して集中して見てくださる姿を見るととても感謝した」と胸がいっぱいの気持ちを語った。

「金だけを目当てに生きる」俗物キャラ・ソックを演じきったイ・ジェギュン 撮影/Lee Junghee
「金だけを目当てに生きる」俗物キャラ・ソックを演じきったイ・ジェギュン 撮影/Lee Junghee

そしてたったいま見終わったばかりの観客と、ネタバレありのQ&Aがスタートした。誰もが韓国で新たに生まれた、主として女性キャラで構成された犯罪ジャンルものに興味津々な様子だった。魅力的なポイントについてハン・ソヒは韓国映画に珍しいパワフルな女性2人が主人公であることを再び強調し、さらに「ラストから先、2人の旅路にも期待してほしい」と答えた。チョン・ジョンソは「クラブのドライバーという職業に女性がいないことは理解していまして、でも私は何かを真似て役作りをするスタイルではないので、むしろ良かったと思います。一夜にして人生が変わるような大金を得ようと目論む人間をよく演じられたんじゃないでしょうか」と、ドギョンの完成度に自信をのぞかせた。

映画を観たばかりの会場からは熱気あふれる質問が相次いだ 撮影/Lee Junghee
映画を観たばかりの会場からは熱気あふれる質問が相次いだ 撮影/Lee Junghee

男性主人公が多かったノワール映画を女性で撮り上げた監督と俳優たちの思い

さらにイ・ファン監督は「こういうノワール映画、犯罪ものの作品をやるのは、これまで男性主人公が多かったですよね。本作はまた、家族の歴史の映画でもあると思います」と、ノワールにとどまらない本作の多様な見方を示した。『パク・ファヨン(原題:박화영)』『大人たちにはわからない(原題:어른들은 몰라요)』とイ・ファン監督のフィルモグラフィーを知る観客から、なぜ若者をテーマに映画を撮り続けているのか質問が及んだ監督は、その原動力を語った。「私はまず人間に対して興味関心があって、なかでも10代、20代の成長というテーマに興味が強いんです。ミソンとドギョンは10代ではなく20代ではあるんですが、10代のような2人が20代として成長していく映画でもあります。あらゆる場面で困難や試練に直面していて、その中で絶えず選択を繰り返している。そうしたことを通して成長する彼女たちの姿を描きたいんです」。

若い世代を主人公に映画を撮り続けてきたイ・ファン監督 撮影/Lee Junghee
若い世代を主人公に映画を撮り続けてきたイ・ファン監督 撮影/Lee Junghee

オープントークでもイ・ファン監督は、「『PROJECT Y』はノワールだがファンキーな映画。私の前作よりも力が抜けているので、開始とともに車が走るような気持ちで楽しんでもらいたい」とも話していたが、GVでの俳優陣は、女性2人による映画だからといって何か“特別な映画”だとして捉えるのではなく、むしろこれまで男性たちが表現してきたノワールと同じように観てほしいという思いを語っていた。それはハン・ソヒやチョン・ジョンソが言及したように未だパワフルなジャンル的ガールズムービーが少ない韓国映画界へのささやかなカウンターパンチのように感じる。公開が待ち遠しいばかりだ。

取材・文/荒井 南

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