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シェムリアップでアンコールワットより優先すべき。19年旅する衝撃家族の世界で唯一のラーメン屋

  • 2026.1.8

誰しもがその名を知る世界遺産アンコールワットがある街、カンボジア・シェムリアップを旅しました。もちろん僕も、アンコールワットを見て感動しました。

ですが、実は遺跡に行ったのは、到着して3日目です。なぜなら、ラーメン好きの僕にとっては、アンコールワットよりも優先すべき場所があったからです。

それが世界を股にかけるラーメン屋「Kuni's ramen」です。

なんと僕は、シェムリアップ6日間の滞在中に4度も訪れたほどお気に入りのお店になりました。

ラーメンの味はもちろんのこと、店主の話を聞けば聞くほど「凄まじいこだわり」と「刺激的な経験」に惹かれて来店したくなるんです!

店主のクニさんは、ご家族とともに19年間世界を旅し続けており、通称「地球RPG家族」としてテレビなどのメディアにも多数出演されています。

お子さんも3姉妹おられて、全員生まれた大陸が違ったり、アフリカ大陸初の日本人ラーメン屋を経営されたり……、とここまででも気になりますよね(笑)。

そんなお気に入りのKuni's ramenを旅とラーメンを愛する僕が直撃インタビューしてきました!

4大陸を渡り歩いてきた唯一無二のラーメン屋さんを見ていきましょう。

旅がもたらしたアフリカ初のラーメン屋

── はじめに、ラーメン屋を始めたきっかけを教えてください。

クニさん: 実は、最初からラーメン屋を目指していたわけじゃないんですよ。もともとはオーストラリアで運送業をしたり、アメリカで引っ越し屋をしたり、メキシコで妻とミュージシャンをしたり……「旅をしながら未経験の仕事をやってみる」という生活を9年間続けていました。そんな旅の中で素敵なご縁があって、モロッコのエッサウィラという世界遺産の街で、ある有名なホステルを譲ってもらえることになったんです。「よし、ホステルやるぞ!」と意気込んだんですが……なんと政府から認可が下りなくて、いきなり頓挫しました(笑)。

── まさかのスタートですね(笑)。そこからどうやってラーメンへ?

クニさん: 「じゃあ何をやろっかなー」と街を観察していたら、2つのことに気づいたんです。1つは、カフェ文化。エッサウィラの飲食店の7割はカフェだったこと。もう1つは、現地の人たちが意外と麺を食べること。モロッコは元フランスの植民地だったからパンが主食なんだけど、商店でインスタント麺が売られていたんです。「パン以外もいけるなら、ラーメンも受け入れられるかも?」と思いました。この2つを掛け合わせて、「ジャズを流すカフェ&ラーメン屋」を始めたんです。今はラーメン屋を始めて10年経つけど、ラーメン屋で食べていくぞって覚悟で始めたわけじゃないんですよ。

── ということは、ラーメン作りの経験は……?

クニさん: ゼロです(即答)。経営もド素人。ラーメンなんて作ったこともない状態からのスタートでした。だから始めて2年くらいは、本当に地獄でしたね。

特に麺が難しいんですよ!モロッコに製麺所なんてないから、自分たちで小麦粉をブレンドして作るしかない。でも、小麦だけでも何十種類もあるし、米粉やセモリナ粉、水の配分……可能性が無限大すぎて、正解がわからないんです。現地の人は物珍しさで食べてくれるんですが、味を知っている日本人の観光客からは「マズすぎる」ってクレームの嵐で。返金したことも多々ありました(笑)。

── 返金レベルの失敗!そこからどうやって今の味に?

クニさん: 僕も半ば心が折れかけてたんですが、ここで妻のエツコが立ち上がったんです。実は妻の祖母や親戚がうどん屋さんで、小さい頃から麺作りを見ていたんですよね。そこから二人で、夜遅くまで毎日のようにノートをとって研究しました。「うどんの技術」と「現地の小麦」の融合です。といってもうどんとラーメンは別物なわけで、納得がいく自家製麺ができるまで、丸2年かかりました。研究の結果、最終的にいきついた麺は小麦ではなくセモリナ粉でしたね。その甲斐あって、終わり頃には観光客もたくさん来てくれるようになって、一杯1,650円、一日限定15食というスタイルでも完売するようになりました。

── 順風満帆に見えますが、そこからまた移動された理由は?

クニさん: 大きな理由はコロナ禍なんですが、モロッコに4年近く住んで「そろそろ移動したいな」という旅人の血が騒ぎ出したのもあります(笑)。そこからジョージアで2店舗目、南米のパラグアイで3店舗目、そして今、4店舗目としてここカンボジアにいます。面白いことに、全ての場所が「旅中に出会った人からのお誘い」で始まっているんです。本当に感謝しかないですね。

長女はメキシコ、次女はモロッコ、三女はジョージア生まれ。「地球RPG家族」の規格外な旅路

── そもそも、奥様のエツコさんとはどこで出会われたんですか?

くにさん: 14年前にアメリカのニューヨークで出会いました。元々お互いに旅人で、出会ってすぐに意気投合して3ヵ月で婚約。結婚後も一緒に旅を続けています。さっき話したメキシコでミュージシャンをしてた時は、僕がギターで妻がピアノを弾いてたんですよ。そのメキシコで、長女のルリ(9歳)が生まれました。僕も出産に立ち会ったんですが、その時にメキシコの助産師さんが色々と教えてくれて。この経験が、次女リナ(6歳)と三女レナン(3歳)の出産のときに活きて、自宅自力出産(産婆さんなし、家族のみで行う自宅出産)したんですよ。

── 海外で自宅自力出産ですか?!怖かったんじゃないですか?

エツコさん: 怖かったよー(笑)。でも、モロッコでは産める病院が近くになかったから自宅自力出産するしかなかったんだよね。そして、出産する日が近づくにつれて、「怖がってたら上手くいくものもいかない」って思えてきて、怖さを消したね。「なるようになれって!」って。

クニさん: 長女のルリがへその緒を切ったり、胎盤をみんなで食べたりしたね(笑)。おかげさまで3人とも元気にスクスクと育ってくれているので嬉しいです。

── 胎盤を……!本当に「生きる力」が桁違いですね。学校などはどうされているんですか?

クニさん: 現地の学校に通っています。カンボジアでは学校の始まる時間を朝か夕方か選べるんですよ。だから、午前中は店の手伝いをしながら社会と関わって、お金の稼ぎ方だったり、海外起業を体で覚えてもらっていますね。そして、午後から学校の勉強という感じです。面白いことに、長女のルリは生まれてから9年間ずっと旅をしているから、6ヶ国語話せるんですよ。いま覚えているクメール語を入れると、7ヵ国語目ですね。

エツコさん: はじめて喋った言葉はアラビア語だったよね(笑)。

クニさん: ずーっと旅しながら子育てしている家族の例って他にないから、難しさもあるんだけど、立派に元気に育ってくれてるから嬉しいね。僕たち親としては「そろそろ日本で生活してもいいかなー」って思う部分もあるんだけど、次は子供たちが「旅したい!」って言うから。この前なんて、ルリが主体で行きたいところ決めて旅したからね(笑)。家族が増えて旅の難易度は上がってるけど、楽しみながらまだまだ旅していきますよ!

現地の食材のみで作る魂をこめたラーメン

後日、ラーメンの仕入れから仕込み、そして営業まで密着させていただきました。

── 普段はどこで仕入れされてるんですか?

クニさん: 地元の市場で、肉や野菜、調味料などすべて仕入れています。麺についてはプノンペンに製麺所があって、そこから最高の麺を入れてもらっていますね。

── クニさんってめっちゃ挨拶されますね。

クニさん: 挨拶は大事ですからね。現地の言葉で完璧なコミュニケーションとまではいかなくても、挨拶はできますから。ご近所さんからしたら、突然言語の分からない外国人の家族が引っ越してきたわけじゃないですか。笑顔で挨拶してくれたら、「この人は悪い人ではなさそうだな」って思うじゃない。そうやっていい関係をお店の人や近所の人と築けたら気持ちいいよね。でも、カンボジアの人は優しくて、僕らが来て1週間くらいでお金貸してくれたりするんだよ。ビックリだよね(笑)。

── 1週間で借金?!それはビックリですね!それだけ信頼されている証拠だと思います。

クニさん: そうだと嬉しいな(笑)。でも、そうやって現地の人や土地をリスペクトしてるから、ラーメンにも思いを込めたいんだよね。だから、僕のラーメンのこだわりは、「現地で手に入る食材のみで作る」こと。やっぱり国によって水も違えば、肉の味も野菜の香りも全然違う。だから国を変えるたびに、レシピを全部1から作り直さないといけない。大変なんだけど……これが楽しいんだよね。

── 全部1から!具体的にどうやって味を決めるんですか?

クニさん: とりあえず、市場にある全部の肉の種類と部位を買って、ひたすら試していくんですよ。豚・牛・鶏の全部の部位をね。豚の頭を数十個買ってスープ作ったりとか(笑)。例えば、ジョージアではお肉自体の旨味がすごかったから、あえて野菜を減らして肉を前面に出した。ここカンボジアでは、豚の「拳骨(げんこつ)」がいい味を出すから、それをベースにした豚骨家系ラーメンにしたり。ひたすら自分の舌を信じて、妻にも味見してもらいながら、お客様に提供できるラーメンができるって感じですね。カンボジアでは、到着して3日目にラーメンが完成したんで、その日の夜にオープンしたんですよ。そしたら30名くらい来てくださって、すぐに完売しました(笑)。

── たった3日で?!モロッコでは2年かかったのに、凄まじい進化ですね。

クニさん: あはは、確かに(笑)。もちろん「完成」と言っても正解はないから、今も醤油の種類を変えてみたり改良を重ねています。ただ、ド素人から独学でやってきた分、独自のノウハウが確立されてきたんだと思います。実は海外にある日本食レストランのラーメン・コンサルもしていて、それも含めるとラーメン作りは5ヵ国目。これまでの旅の経験すべてが、この一杯に活きてますね。ありがたいことに、カンボジアに来てからすでにいくつかオファーもいただいてるので、新しく多拠点展開も挑戦できたらって考えてます。

── 常に新しい形に挑戦し続ける。その原動力はどこから来るのでしょうか?

クニさん:僕ら家族は「地球RPG家族」って名乗ってるんですけど、まさに人生をRPGゲーム感覚で生きているんですよ。新しい拠点に移動し、新たなクエストを見つけて、家族で挑戦してクリアする。この生き方が楽しいから、旅もラーメン作りも続けているんだと思います。

── 人生が冒険ということですね。素敵なお話をありがとうございました!

クニさん: こちらこそ、ありがとうございました!

【編集後記】旅とラーメン好きには至高の体験

僕も実際にラーメンをいただきました。

正直、日本で食べるラーメンと遜色ない……いや、それ以上の衝撃でした。

海外で食べるラーメンは、どうしても「どこか違うな」だったり、美味しくても値段が高いということが多いのですが、Kuni's ramenは違いました。

何より驚きなのは、この味がすべてカンボジアの現地の食材だけで作られているということ。

ラーメンができるまでの背景、食材への執念、仕入れから仕込みまでの一連の流れを教えてもらってからスープを啜ると、また違った美味しさが込み上げてきました。

それは、「優秀なガイドさんの解説を聞きながら観光地を巡ると、理解度と感動がグッと増す感覚」に近いかもしれません。

プロのラーメン作りを間近で見られたのも、ラーメン好きとしてたまらない経験でした。

19年間旅を続ける家族が経営している、4大陸を股にかける世界で唯一のラーメン屋「Kuni's ramen」。

僕がアンコールワットよりも優先した理由が少しでも伝われば嬉しいです。

カンボジアのシェムリアップへ行く際は、このアツい一杯を体験しに行ってみてください。

最後にインタビューを受けて下さったクニさん、エツコさん、そして、ルリさん、リナさん、レナンさん。本当にありがとうございました!

 

All photos by Takanori Muneishi

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