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赤いスニーカーを履いて出ていった女は何を手に入れようとしていたのか…迫り来る因果の恐怖

  • 2026.1.5
写真はイメージです。提供:アフロ

土曜の深夜に生配信サービス「TwitCasting」で放送されている怪談ネットラジオ「禍話(まがばなし)」。ハイクオリティな実話怪談は多くのリスナーの心を掴み、ドラマ化や書籍化も果たしています。

今回はそんな禍話から、とある男性がバイト時に遭遇した出来事と、それにまつわる不可解な謎をご紹介します――。


“赤いスニーカー”を履いているBさん

写真はイメージです。提供:アフロ

あの出来事から1週間が経った日。

Sさんはよく足を運んでいた大型商業施設のフードコートで、偶然にもあのとき靴を無くしてしまった元同僚のBさんと再会を果たしたのだそうです。

ラーメンのトレーを持ったままこちらを見つめていたBさんに気がついたSさんは、食べていた手を止めて声をかけました。

「超偶然じゃん! 座れよ!」

「あ、はい」

ふと、Bさんが薄汚れた赤いスニーカーを履いていたことに気がつきました。

『絶対あの女に取られたんですよ! 俺の赤いスニーカー!』

あの日、逃げ帰る途中で何度もそう言ってきたBさん。

正直、それがあの日彼が履いていたスニーカーかどうかはわかりません。ただ、やたら汚れていたことがどうしてもあの日のスニーカーなのでは、という疑念を呼び起こしました。そして、もしそうだとしたらこのスニーカーをどうやって見つけたんだろうか……そうも思いました。

どこか不自然さを感じ訪ねてみると……

「てか、あの日めっちゃ怖かったよなぁ~」

「……はい」

「他のメンバーと連絡取ったりしてんの?」

「別に……」

「そっか」

Bさんの返答は素っ気ないものばかりで、昔よりどこか陰気な雰囲気さえありました。結局、お互いにラーメンを食べ終わったところで自然と別れたそうです。

帰り道、Bさんの不自然な態度や薄汚れた赤いスニーカーのことがどうしても気になったSさんは、当時の仕事仲間の1人にBさんと会ったことをメッセージしました。

あの日の出来事と照らし合わせるように語り合ううちに、Bさんへの不穏な妄想はどんどんと広がり、ついに後日元同僚と2人でBさんのアパートを訪ねてみることになったのだそうです。

写真はイメージです。写真:GYRO_PHOTOGRAPHY/イメージマート

ピーンポーン。

ピーンポーン。

周囲の景色が灰色に染まり始めた冬の夕方。SさんたちはBさんのアパートで、寒さに身を縮めながら部屋の呼び鈴を押し続けていました。

「出ないな」

「さっき見たときは窓の電気が点いていたよな。風呂か?」

「そこの風呂場の小窓真っ暗だからそれはないでしょ。せっかく来たし、ちょい待ってみるか」

結局、2人は15分ほどアパートの外廊下でBさんの帰りを待ったそうですが、一向に戻ってくる気配はありませんでした。

「……いるじゃん。何やってんだよ、あいつ……」

「……帰る?」

「そうだな……」

Sさんたちが踵を返してエレベーターホールに戻ろうとしたそのときでした。

写真はイメージです。写真:PantherMedia/イメージマート

ゴトッ。
ゴンッ。

背後のBさんの部屋の中から、何か重い物が落ちるような物音が響いたのです。

「……いるじゃん。何やってんだよ、あいつ……」

呼び鈴を鳴らしたのに無視を決め込まれたと思ったSさんは、若干の苛立ちを覚えながら、背をかがめてドアポストを覗きました。

「おーい、B~。Sだけど~?」

細長いドアポストから見える僅かな視界。部屋の明かりはやはり点いたままでした。

廊下の真ん中に薄汚れた一足の“赤いスニーカー”がポツリと置いてありました。

「うっ」思わず顔をドアポストから離したSさん。

「え、なに?」

隣で騒ぐ元同僚を無視して再びドアポストを覗き込みました。

そこで初めて部屋の中に空のペットボトルが何本も転がっているのに気がつきました。

割と几帳面な性格をしていたBさんがこんな風にゴミを放置しておくとは考えられず、Sさんは不審に思ったそうです。

実に十数本はあるかというペットボトル。

くだらない妄想が現実味を帯びてくる

よく見ると、それはコンビニ等で売っているメジャーブランドではなく、地方に行った時などに見かける格安ブランドのようでした。

あの不可思議な出来事が起こった日に、家の前で見かけた古びた自動販売機。

運び出しを始める前に、Bさんが『安いからせっかくだし追加でお茶買っときますわ』と自腹を切って皆の分を買ってくれた、あの格安ブランドのお茶。

写真はイメージです。提供:アフロ

確証はありませんでしたが、その光景がはっきりとブラッシュバックしてきたのです。

カシャン。

力なく指を離すとドアポストの蓋は小さく音を立てて閉まりました。

「何、なんかあったの!?」

「……誰もいないよ。もう、帰ろうぜ」

「え? お、おい!」

なんとなく、これ以上その場に居たくなかったのだそうです。

いえ、正確に言うならあの日、赤いスニーカーを履いて慌てて外に出ていったあの女が、お茶を持ってBさんの家に戻ってきたのではないか、そんな自分のくだらない妄想が現実味を帯びてくることに、Sさんは耐えられなかったのです。

気まずそうに口を開いたOB

「……やば、めっちゃ怖いじゃないですか!」

大学OBのSさんが語ったこの恐ろしい話に、集まったメンバーは大盛り上がり。怪談収集が趣味のFさんも内心ガッツポーズをしたそうです。以来、この話はFさんの鉄板ネタとなりました。

◆◆◆

それから数カ月後。

Fさんはサークルの合同飲み会に足を運んだ折に、隣になった別サークルのOBにこの話を披露したことがありました。

ですが、終盤になるにつれてそのOBの表情が曇っていくのです。そしてFさんが語り終えると、彼は気まずそうに口を開きました。

「あのさぁ……その話、実は知っているんだよねぇ。というのも、その家に実際に行ったOって奴と知り合いでさ……」

写真はイメージです。写真:GYRO_PHOTOGRAPHY/イメージマート

突然の展開にむしろその場は盛り上がり、Fさんは興奮気味に詳細をねだりました。しかし、彼から聞かされたのは予想外の内容だったのです。

「家財道具を運び出すバイトって言っていたじゃん。でも、実際は、ゴミ屋敷みたいになっちゃっていた家に1人で暮らしていたSの親戚の女性が、救急搬送された後に亡くなっちゃったことがあって、その人が病院にいる間にSが仲間集めて空き巣をやったらしいんだわ。俺も最初は違う話かなって思ったけど、だいぶ似ているし……」

あの日、Sさんたちは金目の物を探して1階奥の部屋に忍び込みました。

そして、あらかた探し終わり、『次は2階だな』と移動しようとしたとき、あの“すとん”という襖が開く音がしたというのです。

「あのお茶が転がっていた部屋の中にいたんだろうな」

「そこからは話してくれた内容と同じなんだけど、『人が来ているじゃないのぉ』って、あの女が言った箇所あるだろ? あれ、実際には『しょうちゃん来ているじゃないのぉ』って言っていたらしいんだよな」

「……しょうちゃんって」

「Sのことだよ。親戚はそう呼ぶんだってさ。それに、玄関からなくなっていたのもBじゃなくて、彼のスニーカーだって俺は聞いたんだよなぁ」

その後のBさんのアパートでの体験談も、様子がおかしくなったSさんを心配したOさんが訪ねた際の体験談で、そもそもBさんなどという人はSさんの仲間には居なかったそうです。

「だからあのときSは、あのお茶が転がっていた部屋の中にいたんだろうな、って」

写真はイメージです。提供:アフロ

「結局、あの日以来Sさんには会えず、行方もわかってないです。……こんな嘘つかれちゃったら怖いじゃないですか。だから、かぁなっきさん。僕、このお話を最後に怪談集めるのをやめたんですよ」

Fさんはそう話を締めくくったそうです。

文=むくろ幽介

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