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韓ドラに憧れた私が、ソウルの一流企業で働くまで。アモーレパシフィック初の日本人正社員に聞く、“韓国で働くということ”【ベスト記事2025】

  • 2026.1.5

2025年1年間で特に人気を集めたCREA WEBの記事を発表! あの映画やドラマのヒットの理由から、気の利いた手土産、そして、じっくり読みたい注目の人のインタビューまで。たっぷりお楽しみください。(初公開日 2025年11月4日 ※記事内の情報は当時のものです)


つい夜更かしして観てしまう韓国ドラマ。スタイリッシュなオフィスで働く主人公が、仲間とともに奮闘し、恋に仕事に全力を尽くす姿は、何度見ても胸がときめく王道ストーリーです。そしていまTikTokやInstagramといったSNSでは、そんな韓国ドラマの華やかさをそのまま反映した、大手韓国企業で働く日本人女性たちの動画が注目を集めています。

ドラマのセットのようなオフィスに美味しそうなランチ、カッコよくて可愛いファッションに身を包み、アフター5までしっかりと楽しむその姿は、まさに憧れ。でも、これってどこまでリアルなのだろう……?

そこで、実際に韓国に本社があるアモーレパシフィック社で働く女性にインタビュー。韓国の大手化粧品メーカー・アモーレパシフィックで、人気スキンケアブランド〈primera(プリメラ)〉のマーケティングを担当する八重樫瑞(やえがし・みずき)さんにお話を伺いました。


『美男<イケメン>ですね』から韓国エンタメにドハマり

アモーレパシフィックの韓国本社で働く八重樫瑞さん。

――大学までは普通に日本で暮らしていらっしゃったそうですが、韓国で働くことを意識されたきっかけは、何だったのでしょうか?

5年前に韓国に来たのですが、その時の目的は就職ではなく、大学院に進学するためでした。大学在学中に韓国に交換留学した経験があり、そのときから「もっと深く韓国で学びたいな」と思っていたんです。大学卒業後はいったん普通に日本で就職したのですが、その思いをどうしても捨てきれず、1年半で会社を辞めて、2025年に再び韓国へ。大学院では翻訳を専攻しました。

ただ、ちょうどコロナ禍とかぶってしまい、人脈を広げたり人と自由に会ったりするのが難しい時期で、大学院生活はかなり大変でした。正直、「卒業後は日本に帰って就職しようかな」と思っていたほどです。

でも、社会人経験が1年半しかなかった私にとって、日本で再就職するのは不安がありました。日本の基準で見ると、年齢の割にキャリアがほとんどないので……。一方で韓国は、男性の方は兵役の義務がありますし、資格の勉強や留学などで休学する人も多いので、20代後半になって初めて就職するというケースも珍しくありません。そのため、韓国の方が年齢によるハンディキャップをクリアしやすいのではないかと考えました。

――なるほど! 単純に韓国で働きたいというだけではなかったんですね

もちろん韓国で働いてみたいというのもありましたが、韓国で社会人経験を積むことは、自分のキャリアを考えても、プラスに働くんじゃないかと思ったんです。そこで、韓国での就職を意識するようになりました。

ソウル・龍山区に位置するアモーレパシフィック本社。写真はルーフガーデン。

――元々韓国に興味を持ったきっかけは何だったのですか?

中学生のときにフジテレビで数多く放送されていた韓流ドラマを観ていたのがきっかけです。『美男<イケメン>ですね』とか……。あの時代にドラマを観て、韓国のエンタメがすごく面白いと感じて、さらにアイドルもすごく好きで。そこで韓国語に興味を持って独学で勉強し始めて、大学に行ったら、もう絶対に韓国留学したい! ってその頃から思っていましたね。本当にミーハーだったんです(笑)。

――日本ではどのような会社に就職されていたんですか?

中堅の化学メーカーです。半導体製造用の産業ガスを扱っていまして、韓国向け営業のほか、ガス容器の戻りの通関といった輸出入担当の業務を行っていました。

――では韓国語はそこでもバチバチに使っていた?

それが、韓国に現地法人があったので、会社では韓国語を使う機会がまったくなくて(笑)。このままだと、韓国に関わりたくて仕事をしたのに、全然関係ないことしかできないかも……というところにも限界を感じて、やはり韓国で勉強をしようという気持ちになりました。

――実際に韓国で働くということを視野に入れられてからは、どんな準備をされましたか? 日本の就職活動とは違いがありましたか?

流れとしては日本と同じで、最初は求人サイトに登録する……という感じでした。ただ、外国人が働くにはビザの要件があるので、どんな職種でもOKというわけではありません。日本マーケティングや日本語を使う事業じゃないと就労ビザがおりないんです。なので、日本人や日本語に関する需要が、どういった業界にどのくらいあるのか、というのをまずはリサーチしました。

同時に、学内でどんな支援が受けられるかも、かなりリサーチしました。私が通っていた韓国外国語大学の大学院は留学生がかなり多かったので、外国人留学生向けの就職支援プログラムも充実していました。履歴書の添削や面接練習、求人情報の紹介などなど……。それらも活用して就職活動の準備を始めました。

待っていたのは1カ月間のインターン

アモーレパシフィック本社の1Fエントランス。

――就職活動を行う中で、印象的だったことはありますか?

実はアモーレパシフィックの求人を見たときに、「私、絶対にここに行きたい!」と思ったので、ほかは応募しなかったんです。ですから、あくまでアモーレパシフィックでのケースをお話する形になってしまうのですが……、一次面接が終わったあとに1カ月間インターンとして働く必要があったのは驚きでした。

インターンシップを行ったあとに、役員の前で最終課題の発表を行って、ようやく採用という流れなんです。もちろん、インターン中はお給料も貰えます。私はかなり驚きましたが、韓国ではある程度の規模感がある企業だと、正社員登用する前にインターンとして雇用し、その人材の業界に対する知識や基本的に業務を行うスキルなどを見極めてから本採用という流れになっている場合が多いようです。

日本の新卒採用はかなりポテンシャル採用ですが、韓国は「アナタが入社したらすぐにどんな力になれるの?」という目線で採用活動している印象です。新卒でも、研修期間などは特になく、入社したらすぐに業務を開始する勢いですね。

就職試験に臨む八重樫さんを待ち受けていたのは、1カ月間のインターンシップだった。

――アモーレパシフィックという会社に魅力を感じた理由を教えてください!

実は大学院に在学していたとき、化粧品にすごくハマってしまい(笑)。毎日オリーブヤングに通っていたんです。毎日学校に行くたびに寄って、新製品のことや成分のことを調べていましたし、当時ちょうど韓国でパーソナルカラー診断が流行っていたので、自分に合うものを探していたらすごく楽しくて。

だから、アモーレパシフィックが日本人を採用するという求人を見て、すぐに応募しました。実は本社が日本人を採用するというのはとても珍しく、私が応募したときが初めて日本人の正社員を募集していたタイミングだったんです。

――そうだったんですね。

コロナ禍に入るまではアモーレパシフィックは中国市場に力を入れていて、中国人の採用が多かったようです。それがコロナ禍をきっかけに、日本でも韓国コスメが流行り出して。日本市場の重要性が増して、本社で初めて日本人の正社員を採用することになったのが、私が応募したタイミングでした。

今年も日本人の方が入社しましたし、今では社内でも日本がかなり大事な市場というポジショニングになっていますね。

――入社後はどんなお仕事を任されましたか?

最初はLANEIGEを担当し、半年後にprimeraのチームに異動しました。ちょうどprimeraの日本進出が決まったタイミングで、その準備から関わることになったんです。

日本と韓国の大きな違いは“報告文化”

入社1年目からブランドの日本進出を任されることに……。

――primeraの日本ローンチに向けて、大変だった思い出はありますか?

ローンチは本当に大変でした。アモーレパシフィックジャパンという日本法人もあるのですが、当時はprimera担当がいなかったので、全て私と入社10年目くらいの先輩の2名で準備するしかなくて。ローンチまでの期間は私とその先輩とで2週間ずつ日本出張に行ったり来たりを繰り返しました。

そもそも私は1年目でしたし、以前働いていた業界も化粧品業界ではなかったので、ローンチするまでに何が必要かというのがまったく分からず……。一緒に準備した先輩も日本でのローンチは初めてだったので、全部が手探りでした(苦笑)。今思えば、1年目がやる仕事ではないだろうという感じなのですが(笑)、日々いろんな“無力さ”みたいなことを感じて。体力的にもオーバーワークでしたが、精神的にもツラかったですね。ローンチできなかったらどうしよう、みたいな。

ですが、2024年1月にロフトで先行発売することが出来ました。今ではQoo10やAmazon、楽天といったECサイトに加え、ロフトやマツモトキヨシなど全国1000店舗以上で展開しています。

――1年目でブランドのローンチを担当し、そこから2年が経ち、今のお仕事はどんな感じですか?

今は日本向けのヴィジュアルマーチャンダイジングや什器などの監修を行っています。あとはコンテンツ系のマーケティングも行っており、オウンドメディアやSNSの広告、メタ広告などの運営に携わっています。ローンチの大変さを乗り越えて、今はブランドが自分の子どものような感覚です。

――日本の企業で働いていたときと、一番違うなと感じることはなんでしょうか?

一番驚いたのは“報告文化”です。

日本でいう“報連相”は「今日は外勤です」「クライアントからこんな話がありました」くらいの軽い連絡のことも多いと思いますが、韓国ではすべての施策を資料にまとめ、本当に細かく上司の判断を仰ぐ必要があります。

たとえば「11月のプロモーションはこの方向で進めたい。割引率はここまでに設定したい」と、細部まで報告して、必ず上司の承認を得てから動くんです。最初はこの報告文化がわからなくて、戸惑いました。

報告するための資料作成が、仕事全体の2割ぐらいを占めている感覚ですね(笑)。

八重樫瑞 Mizuki Yaegashi

アモーレパシフィック アクティブビューティーグローバルGTM TFでプリメラのマーケティング・営業戦略を担当。立教大学社会学部卒業後、2020年に韓国政府奨学生(GKS)として韓国外国語大学にて翻訳学修士課程卒業。2023年1月にアモーレパシフィックへ正社員として入社。

文=前田美保

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