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【ゾッとする怖い話】「ここは、俺の部屋だ」初めての一人暮らしで起きた恐怖体験【ホラー小説】

  • 2026.1.4
引っ越し先
出典:stock.adobe.com

古いが駅も近い、初めての自分だけの城。 心躍らせて始めた一人暮らしは、コンセントの抜けたエアコンからの風に気がついてしまった日から、“それ”の正体に近づいてしまった。

引っ越し初日

念願の一人暮らしだった。

古いが家賃は安く、六畳の畳部屋に小さなキッチン、駅から徒歩十数分。
築四十年ということを除けば、悪くない条件のアパートだ。

ただ一つ気になるのは、壁についている年季の入ったエアコン。不動産屋も「古いがまだ使えます」と言っていたが、送風口の金属は錆び、リモコンも反応が鈍い。
夏はまだ遠いから、生活が落ち着いたら考えようと思い、荷解きを開始することにした。

初日。夜中に目が覚めたとき、部屋の空気がかすかに揺れていることに気づく。

「……風?」

エアコンの電源は入れていない。
それなのに、エアコンの吹き出し口から低い音とともに、ぬるい風のようなものが頬を撫でた。

壊れているのかと思ったが、コンセントは抜けている。

畳の下

数日経ってもその現象は止まなかった。

夜になると必ず風が吹き、部屋の空気は重く湿り気を帯びる。
まるで生き物の吐息が漂っているようで、眠りが浅くなる。

気味が悪くなり、夜中、エアコンの前に立って確かめてみた。
吹き出し口に耳を近づけると、冷風ではなく生ぬるい“息”が頬をなでる。鼻先に、どこか腐ったような匂いまで混じっていた。

だが、それだけではなかった。
畳の上に座ると、今度は足元から同じような風が吹いてくるのがわかったのだ。

「……下?」

畳をめくると、黒ずんだ板の隙間からも呼吸のような空気が漏れている。
覗き込んでも暗闇が広がるばかりで、底は見えない。まるで部屋そのものが息をしているかのようだ。

恐ろしくなって畳を戻し、怖い気分を拭うべくコンビニに向かうため部屋を出ようとしたが、ドアがびくともしない。
鍵は開いているはずなのに、何かに押さえつけられているようだった。

「やめてくれよ……」

心臓が早鐘を打つ。
息のような風は次第に強くなり、耳元で誰かが囁くような音が混じり始めた。

この部屋の“主”

エアコンの吹き出し口からは湿った風が吹き出し、畳の隙間からも“息”が噴き上がっている。
空気が渦を巻き、重く、粘つくような感覚が足首を撫でた。

「……誰か、いるのか?」

振り向いた先に、それはいた。

戻したはずの畳の隙間から、白く細い指が一本、また一本と伸びてきていた。
関節が逆に曲がり、這い上がるようにして畳の上へと出てくる。

次第に腕、肩、顔……、それは細すぎる上半身だった。
目は空洞のように真っ黒で、口だけが開いて“スゥ、スゥ”と音を立てている。

エアコンの風は、そいつの吐息だった。畳の下から吹き出す息も、すべてそいつの呼吸。

「ここは、俺の部屋だ……」

声が確かに聞こえた。その瞬間、足がすくみ、視界が暗くなった。

――目を覚ますと、朝になっていた。

ドアは開いており、昨夜の出来事は夢のようにも思えた。
だが畳の隙間は、なぜか一枚だけわずかに盛り上がっている。

耳を近づけると、かすかな“スゥ……”という呼吸音が、今も続いていた。

※この物語はフィクションです。
※記事に使用している画像はイメージです。

◆斎 透(さい とおる) noteにて短編小説を執筆中の、犬と暮らすアラサー女子です。 やるせない夜にそっと寄り添うような文章をお届けしています。 幼い頃から、オカルト好きな母と叔母の影響で、不思議な話に夢中に。 「誰でも一つは、背中がひんやりする話を持っている」をモットーに、 ゾッとするけど、どこか温度のある物語を綴っています。 美容やキラキラした話題に疲れた夜、よければ一編、覗いてみてくださいね。 ●note:https://note.com/sai_to_ru

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