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B級過激スプラッター・ホラーが豪華キャストでよみがえった!『悪魔の毒々モンスター』リブート版をレビュー

  • 2026.1.3

A24やNEONが生まれる30年以上前、1974年にニューヨークで設立されたインディペンデント・スタジオ、トロマ・エンターテインメント。数々の過激でポップなB級ホラー映画を世に送り出し、あのジェームズ・ガンも薫陶を受けた、同社創立者のロイド・カウフマン(名門イェール大学卒)がマイケル・ハーツと共同でメガホンを取った代表作が『悪魔の毒々モンスター』(84)だ。

【写真を見る】1980年代、B級ホラー界に旋風を巻き起こした『悪魔の毒々モンスター』リブート版が公開

【写真を見る】1980年代、B級ホラー界に旋風を巻き起こした『悪魔の毒々モンスター』リブート版が公開 [c]Troma Films/Courtesy Everett Collection.
【写真を見る】1980年代、B級ホラー界に旋風を巻き起こした『悪魔の毒々モンスター』リブート版が公開 [c]Troma Films/Courtesy Everett Collection.

ニュージャージー州の架空の街、トロマヴィルを舞台に、日々極悪な客からハラスメントを受けていたひ弱で臆病な清掃員、メルヴィンが工場廃液を浴びたことで超人的なパワーを手に入れ、悪党どもを一掃するという痛快ダークスーパーヒーロー・スプラッター・ホラー。3本の続編が製作され(2作目の舞台は東京だ)、マーベルからコミックも出版され、TVアニメシリーズも製作され、さらにニューヨークのオフ・ブロードウェイでミュージカル版が上映されるなど、カルト的な人気を呼んだフランチャイズである。

2010年4月に初めてリメイク版の製作が発表されて以来、主演にアーノルド・シュワルツェネッガーの名が挙がったり、一時はギレルモ・デル・トロがプロデュースをするという話も出るなど長年の紆余曲折を経て、リブート版『The Toxic Avenger(原題)』が、ついに昨年8月に北米で劇場公開された。

本国公開時のポスター [c]Cineverse Entertainment / Courtesy Everett Collection
本国公開時のポスター [c]Cineverse Entertainment / Courtesy Everett Collection

プロデューサーにはもちろんロイド・カウフマンが名を連ね、メガホンを取ったのはメイコン・ブレア。秀逸なブラックコメディにしてクライムスリラー『この世に私の居場所なんてない』(17)で監督デビューを果たし、俳優としても盟友ジェレミー・ソルニエ監督の傑作リベンジスリラー『ブルー・リベンジ』(13)で主演を務め、『フロリダ・プロジェクト 真夏の魔法』(17)や『オッペンハイマー』(23)などに出演したマルチな才能を持った人物だ(本作にもカメオ出演)。キャストも、ピーター・ディンクレイジ、ジェイコブ・トレンブレイ、ジュリア・デイヴィス、イライジャ・ウッド、ケヴィン・ベーコンと、オリジナルに比べ100倍豪華な驚きの布陣となった(ジーザス・リザードのヴォーカル、デヴィッド・ヨウの出演もロックファンにはうれしい)。

腐敗した製薬会社、DGHで清掃員として働くウィンストン(ディンクレイジ)は、義理の息子ウェイド(トレンブレイ)と共に苦しい生活を送っていた。ある日、ウィンストンは脳疾患を患っていることがわかり、DGHの悪徳社員ボブ(ベーコン)に助けを求めるが、逆に会社から締め出されてしまう。怒り心頭のウィンストンは会社に押し入り大金を盗み出すが、DGHが雇ったギャングに銃で頭部を撃たれ、有毒な廃液の中に沈められる。ミュータントとしてよみがえったウィンストンの復讐が始まる!

いじめられっ子の青年が醜い“毒々モンスター”へと変貌してしまうさまを描く [c]Cineverse Entertainment / Courtesy Everett Collection
いじめられっ子の青年が醜い“毒々モンスター”へと変貌してしまうさまを描く [c]Cineverse Entertainment / Courtesy Everett Collection

オリジナルの上映時間が82分だったのに対し、このリブート版は103分と単純に尺が21分も長くなっているため、基本的なストーリーは同じだが、キャラクター名など要所でオリジナルへのオマージュを捧げつつ多くの点で改変がなされている。まず父と子の親子の絆というドラマが全編を貫いており、だからこそ、この演技派揃いの贅沢なキャスティングだったのかと合点がいく。そして本作の毒々モンスター(劇中ではモンスター・ヒーローと呼ばれる)のビジュアルも、オリジナルにあった「チープな分なんだかグロテスクで気持ち悪い」というルックスではなく、やや人間性も感じられる坊主の怒れる怪人というイメージだ。しかも背がかなり低いため、どこか可愛らしいという不思議なバランス(『ノートルダムの鐘』(96)のカジモドを彷彿)。それよりも、イライジャ・ウッド演じるボブの弟フリッツのルックス(特に髪型)がインパクトが強いが、これはバットマンの宿敵の一人でDCコミックのキャラクター、ペンギンにインスパイアされたものと思われる(同様に兄のボブはレックス・ルーサーがモデルか)。

主人公ウィンストンを演じたピーター・ディンクレイジ [c]Cineverse Entertainment / Courtesy Everett Collection
主人公ウィンストンを演じたピーター・ディンクレイジ [c]Cineverse Entertainment / Courtesy Everett Collection

クライマックスのライヴ会場のシーンなど、悪党どもを血祭りにあげる破壊力溢れるウルトラゴアなシーンはコミカルでありつつパワフルで、ここもオリジナルへオマージュを捧げつつ、よりインパクトの強い血みどろな残酷描写が披露される。オリジナルにあったエロは控えめだが、グロテスクでそれを十分に補っているといえよう。メイコン・ブレアはホラー監督ではないが本当に大丈夫なのか…?という疑念を打ち消す痛快かつエクストリームなリブートに仕上がっている。オリジナルのファンを失望させることはないだろうし、オリジナルを知らないジャンル映画ファンも楽しめるはず。日本公開は2026年の予定だ。

日本では2026年に公開予定 [c]Cineverse Entertainment / Courtesy Everett Collection
日本では2026年に公開予定 [c]Cineverse Entertainment / Courtesy Everett Collection

蛇足ながら、トロマ社の最新作は『チキン・オブ・ザ・デッド 悪魔の毒々バリューセット』(08)の続編、『Poultrygeist 2: Dawn of the Chicken Dead(原題)』。フライドチキンのチェーン店で呪われたチキンバーガーを食べ突如ゾンビになった人々と過激な店員の死闘を描いたホラーコメディの続編である。タイトルとポスタービジュアルを見る限り、『ゾンビ』(78)のパロディのようだ。2026年にアメリカで公開予定となっている。

文/小林真里

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