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箱から顔を出した謎の家族写真…80年代に起きた“ダンボールの家”の怪に巻き込まれた学生達の運命

  • 2026.1.3
写真はイメージです。提供:アフロ

令和のホラー界隈で“共創型怪談”とでも言うべき新しい地平を切り拓いたのが、2016年から生配信サイト「TwitCasting」で放送中の怪談語りチャンネル「禍話(まがばなし)」です。“虚実の間(あわい)”を行き来するかのようなおぞましい怪談は今や数千話に達し、リスナーによるリライト記事もその人気に拍車をかけています。

そんな禍話から今回は、ダンボールにまつわる不気味な出来事が起きた一軒の家に関するお話をご紹介します――。


ただならぬ雰囲気に席を立つOさん

写真はイメージです。写真:moonmoon/イメージマート

思わず話を遮ってお手洗いに立ったOさん。

ただならぬ雰囲気に思考がまとまらず廊下を歩いていると、またあの和室の襖が開いているのが目に入りました。

部屋の四隅にあったダンボールの上にもう一段重ねられていたダンボール。

こっそりと和室に入ったOさんが一番手前のダンボールの中を覗き込むと、中には古新聞がパンパンに詰められていたそうです。

リビングに戻ると、ちょうど窓の外に車が停まっているのが見えました。

外から戻ったと思われる奥さんがトランクから何か出しているところで、彼女と目が合いました。

「ああ、会長さん! いらしていたんですね」

彼女の腕にはダンボールと新聞の山が抱えられていたそうです。

◆◆◆

翌日、事態を重く見たOさんがご近所さんと共に役所に状況を伝えたところ、数日後に一緒に家を訪ねてみることになりました。

ですが当日訪れてみると、車が置いたままになっていたばかりか、玄関扉も鍵がかかっておらず開いていたのです。

恐る恐る中に入ると家の中はゴミだらけ。さっきまで生活していたような雰囲気を残したままNさん一家はその姿を消していました。

アルバムの最後にあった異様な写真

何より一同を驚かせたのは、あの和室に広がっていた光景でした。

四隅に置かれたダンボールが、4段に積み重ねられていたのです。

ふと、Oさんが足元に落ちていた小さな写真アルバムに気がつきました。中を見てみると、ほとんどが子どもたちのものでしたが、最後のページで異様な写真が見つかりました。

それは、この和室を中央から撮影したと思われる2枚の写真。

1枚目は部屋の左側を撮ったもの、2枚目は右側を撮ったもので、それぞれ部屋の隅に積み上げられた4段のダンボールを写していました。

そのダンボールからご主人、奥さん、そして2人の娘さんが満面の笑みで顔を出していました。

「これ……大人が顔を出せる高さじゃないですよね……?」

「それよりさ、これ、誰が撮っているんだ……?」

写真はイメージです。提供:アフロ

「で、そのあと警察が来たらしいんだけど、結局一家は行方不明。バブルが弾けてその住宅地からも人が居なくなって、今や廃墟になっているってわけよ」

「こわぁ~……」

2000年代前半頃、大学生のKさんたちオカルト研究会4名は、丘陵地帯の新興住宅地を目指して夜に車を走らせていました。

名のある心霊スポットは行き尽くしていましたが、どういう経緯か“ダンボールの家”の話を耳にした彼らは、新たな期待に胸を踊らせていたのです。

「じゃあ、行ってみる? 例の和室」

ほどなく到着した住宅地は、話に聞いていた80年代当時のきらびやかな面影はほとんどなく、コンクリートの坂道の両側には手入れのされていない雑草が幾重にもはみ出していました。

いくつかの家は明かりが灯っていたものの、ほとんどが空き家。坂を登りきった上にあった“ダンボールの家”にも当然人の気配はありません。

噂で聞いていた70年代風の家の外装も今や雨風にさらされて薄汚れており、玄関周りにも背の高い雑草が生い茂っていました。

写真はイメージです。写真:moonmoon/イメージマート

それらを手で払いのけながら恐る恐るドアノブに手をかけたKさん一行。

カチャリ。

鍵はかかっておらず、ドアはすんなりと開きました。

「あれ……なんか思ったよりも……」

中は綺麗でした。

何十年も前の空き家で、一家失踪当時はゴミが散乱していたと聞いていたので、この意外な光景にKさんたちは面食らってしまったそうです。

しばらく中を探索したものの、正直単なる空き家という印象で、心霊スポット特有の不気味な空気は感じられませんでした。

「じゃあ、行ってみる? 例の和室」

なんとか怖い雰囲気を盛り上げようと、Kさんは早々にメインイベントである和室の探索を提案しました。

「え、なんだよ。ないじゃん、ダンボール」

「マジかよ……てか、考えたら何十年もあるわけないか。事件当時に警察が持っていっちゃうよな、普通に考えて」

和室にめぼしいものは何もなく、ただ生気なく口を開けているかのようにガランとしていました。

姿を消したTさん

「まあ、ニッチなスポットってのも、こんなもんなんだろうなぁ」

「そうだな……しゃーなしだな! 帰ろうぜ! うまいもんでも食おう」

ため息交じりにすごすごと家を出ていくKさんたち。

車のところに戻ったとき、あることに気がついたそうです。

「あれ、Tは?」

今日が初参戦だった後輩のTさんの姿がないのです。

「おーい!」

少々大きな声で辺りを見回しながら声をかけたのですが見つからず、じわりと一同の心に不安がこみ上げてきました。

「まさか……」

何かに気がつき駆け出したKさんのあとを追うように、ハタと気づき駆け出す一同。

写真はイメージです。写真:moonmoon/イメージマート

薄暗い家の中。予想通りTさんはあの和室に入ったまま動いていなかったのです。

「おい、お前何してんだよ……帰る――」

「へー、そうなんですねー」

Tさんは、こちらに背を向けて部屋の隅に向かって1人で相槌を打っていました。

「なるほどぉー。身の丈に合わせて。はぁー」

Tさんはおもむろに歩き出すと、部屋の隅におでこをゴン……とくっつけたのです。

「なるほどねぇー、分かる気がしますよ、幸せの形はそれぞれですもんねぇー」

「おい、何してんだよ……お前大丈夫か!」

Kさんが意を決して彼の肩を掴んで振り向かせると、Tさんはイラついた顔をこちらに向けました。

「なに…やめてくださいよ! 今、お家の人と話してるでしょ! 見てわかんないんですか!? 色々な幸せの形があるんですよ!!」

「お、お家の人って……」

「だから身の丈に合わせて皆頑張っているんですよ!!」

Tさんが大量に抱えてきたもの

大声をあげたTさんを見かねた他のメンバーは、彼を四隅から引き剥がすように強引に外に連れ出しました。

「何すんですか!? やめてくださいよ!!」

無理やり車に連れ込んで急発進させてからも、Tさんは「答えてくれていたんですよ! 俺の身の丈に合った幸せについて! それなのになんですか本当!!」と意味不明なことを喚き散らしていたそうです。

下手に反論せず適当に相槌を打ち、彼を最寄りの駅で放るように降ろしたKさんたち。その日は誰とも言わず解散になりました。

◆◆◆

結局、週が明けてもTさんは大学に現れず、皆彼に何かがあったことは予感しつつも、誰もその事実に向き合うのが怖くて連絡を取れないでいました。しかし、数日後にKさんたちが食堂でお昼を食べていると、Tさんの知り合いの後輩がふらりと声をかけてきたのです。

「あ、先輩たち最近Tと遊んでないみたいですけど、なんかあったんですか?」

「Tのこと見かけたの!?」

写真はイメージです。提供:アフロ

詰め寄る一同に驚いた様子の後輩。彼が語ったところによると、先日大学の帰りに立ち寄ったコンビニの裏手で偶然Tさんを見かけたというのです。

『最近、連絡返さないじゃん。K先輩たちとも一緒にいないみたいだし、何してたの?』

『人にはそれぞれの幸せがあるからさ、身の丈に合わせなきゃいけないんだよ』

そう答えたTさんの腕には、大量のダンボールが抱えられていたそうです。

文=むくろ幽介

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